Crisis of Empire第6話


「とにかく、今陛下は厳重な見張りをつけて安静にして頂いております。この暗殺未遂事件の

担当はお任せしますよ。私も出来る限りの協力はします。まずはその逃げた狙撃者の情報収集と、

何故あの木の上にその狙撃者が入る事が出来たのかと言う事を調べて下さい」

「「はっ!」」

カルソンの指示に2人は完璧に揃った返事をして、そのままカルソンの執務室を出て行く。

「良し、会議室にリアンとラシェンと副官達も集めてくれ。事は一刻を争う」

「分かった」

左翼騎士団の団長と副官、それから右翼騎士団の団長と副官、そして自分達の

副官も会議室に集める様にルザロはシャラードに指示を出し、自分は会議室へと

一足先に向かって会議のセッティングをし始める事にした。

(この俺の失態……何としてでも取り返し、犯人を捕まえなけえればな)

会議のセッティングをしながら、帝国精鋭騎士団団長は深く心に誓うのであった。



そうしてシャラードと一緒にやって来た6人が会議室に集合する。

「良し、集まったな。それではこれからセヴィスト陛下暗殺未遂

事件についての対策と捜査方法についての会議を始める」

会議室に集まったメンバーを見渡し、司会進行役でありこの

捜査本部のリーダーも勤める事になったルザロが残りのメンバーを見渡した。

「事件発生は今日のバルコニーでの演説終了後だ。セヴィスト陛下が

背中を矢で射られて重傷。犯人は残念ながら俺が取り逃がしてしまった」


そこで一旦言葉を切り、ルザロは再び続ける。

「容疑者は分かっている所で今は1人。背格好は痩せ身の性別不明の人間だったが

頭全体を黒い布で覆っていたので容姿については不明。黒ずくめの格好だったが

変装であると言う可能性も大いに考えられる。カルソン様からはその男の身元の

特定と、警備状況を見直して不審人物が居なかったかどうか、そしてその狙撃者は

中庭の木の上に潜んでいたので、その狙撃者が木に登る所を見た人間が居ないかどうかを

各自でまずは聞き込みに当たって欲しい」


そのルザロの命令に対してまず口を開いたのは茶髪の左翼騎士団団長のリアンだった。

「1つ質問があります」

「どうした?」

「その男は魔導師なのでしょうか? 城壁を破壊して逃げたと聞いておりますが」

その問いにルザロは首を横に振る。

「それについてはまだ不明確だ。俺も徹底的に調べてみる」

「そうですか……」


ファルス帝国騎士団左翼騎士団長のリアン・カナリスは帝国の貴族に生まれ育った。

しかし、帝国の貴族は平民を見下す傾向がどうしても強く、

カナリス家でもそれは例外では無かったのである。

それ故にリアンは私生活においては貴族同士での付き合いしか持っておらず、

例外として帝国騎士団入団当初からの付き合いがあるラシェン以外の

平民とはなるべく付き合わない様にして来たのだ。


そんなリアンも騎士団の1つを纏める存在だけあって戦場での腕は確かであり、

バーレン皇国との戦争や平騎士だった時代に魔物の討伐等で

幾つもの功績を挙げて来た甲斐があって、こうして騎士団長の1人になったのである。

武器としては大剣を振り回してそのパワーで圧倒するスタイルであり、見た目では

細身ではあるが着やせするタイプで結構服の下はがっしりと筋肉質で、しっかりと

力の使い方を熟知して大剣を振り回すだけの筋肉がついている。

また、魔術より武術の方が発達しているファルス帝国において、最近は魔術にも

興味が出て来たらしく、シュアの魔導士部隊の隊長であるアーロスに今は興味を

持っており、何時か魔術の事をしっかりと勉強してみたいと思っているらしい。


自分自身は魔力が低い方なので大した魔術が使えなさそうだが、それ以上に

魔術に対する探究心の方が大きいのでそこは余り気にしていないと言う。

普段であれば自分は鍛錬もしているが、その多くの仕事は部下の采配や

書類仕事なので余り戦場に彼は出向かない。小さな紛争であれば、帝国が誇る

その強大な軍事力で何とかなってしまうからである。ただ、32歳のリアンはこんな

タイプなのだが基本的に同世代のラシェンを筆頭にした他の騎士団長達は

前線へと出て行くタイプなので、若干浮いた存在になってしまっているのは否めない。


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