Crisis of Empire第19話

Crisis of Empire第19話


ルザロとシャラードは城門に向かう途中でこんな会話を交わしていた。

「そう言えば遺跡って何処で見つかったんだっけ?」

「確か……リロートーク地方だった筈だ。あの地方で大きな白い巨塔が突然

ある日姿を現したって有名になっていたからな」

そう言うとルザロは突然足を止めた。

「……ルザロ? どうした?」

急に立ち止まった自分の相棒に疑問を抱かざるを得ないシャラードだったが、

次の瞬間ルザロが言い出した言葉にシャラードは言葉を失う。


「やっぱり、追うのは止めだ」

「は!? お前何言ってんだよ今更、ここまで来て!!」

まさかの発言にルザロに詰め寄るシャラードだが、ルザロにはしっかりとした考えがあった。

「慌てるな。俺はきちんとした考えがある。とりあえず計画を立てる為に城へ戻るぞ」

「お、おいおい!?」

踵を返して城へと歩き出すルザロに、シャラードは何が何だか訳が分からないまま

その後ろ姿に着いて行く事しか出来なかった。


銀髪の男はそのまま自分の馬を預けていた帝都近くの村に取りに行き、そこから馬を走らせて

リロートーク地方に向かう。リロートーク地方はアーエリヴァ方面に位置している地方の1つであり、

アーエリヴァとの物資の輸出入が盛んな地方として知られている、

そのリロートーク地方に向かう為にはこのファルス帝国を中央で二分している山脈を越えて

行かなければならないか、少し遠回りして山脈を迂回して行かなければならないので結構不便だ。

だが、男はあえて山脈を迂回するルートを取った。何故ならその山脈を突っ切る様にして

ヘルヴァナール鉄道の線路が敷かれており、そのままアーエリヴァまで行く事も可能だからだ。


なので馬を駅に乗り捨ててそこからアーエリヴァ行きの列車に乗り込み3時間。すっかり日も暮れて

夜の闇に包まれかけているリロートークの駅において途中下車。そこから少し歩いて行けばようやく

その塔が見えて来るのであった。

塔に辿り着いた彼は、すでに塔の前で待っていたもう1人の男……シャラードを狙撃したあの

弓使いの紫頭の男に手を挙げてアピールする。

「遅かったな、アディナス」

アディナスと呼ばれた銀髪の男は苦笑を浮かべて首を横に振る。

「あー、まぁな。でもこれでも俺っちは急いだ方だぜ、イヴァール。騎士団の奴等に危うく後を

つけられそうになっちまってねぇ?」


飄々とした口調でそう報告するアディナスに、イヴァールと呼ばれた弓使いは驚きの表情になる。

「何だと? 大丈夫なのか!?」

「ああ、あいつ等はしっかり振り切ったから。それよりも封印の方はどうなんだ?」

だがそのアディナスの問い掛けに、イヴァールの表情が芳しくない物で答える。

「全然駄目そうか」

「ああ。入り口のドアは色々魔法をぶつけてみたりしたんだけどな。それから物理攻撃で

壊そうともしてみたんだがやっぱり駄目みたいだ。どうやらこのドアは強大な魔力で封印されて

しまっているみたいなんだ。だから物理攻撃も魔法も全く効果が無いみたいだぞ」

「あーあ、ここまで来てこれか。全く……俺っち達がセヴィストを襲撃して大騒ぎになれば、それだけ

この遺跡の調査が進まなくなるからその間にって思ったけど、まずいな……」


「やはりそう言う理由だったか」

そんな話をしていると、突然アディナスの後ろから聞き覚えの無い声が響いて来た。

「なっ、あんた等は……何で!?」

振り返ったアディナスの視線の先には、何とあの時帝都で振り切った筈のルザロと

シャラードが武器を構えて臨戦態勢になっているのであった。

「貴様が俺達の尾行に気がついていたのは知っていた。だから俺達は一旦城へと戻る

振りをして、すぐに貴様を追いかけてきたんだ。貴様の仲間から話も聞いた。遺跡は

ここの事だから、きっとここへと向かうと踏んだ俺達はギリギリで列車に乗り込む事が出来た。

そうして来てみれば、やはりもう1人仲間が居た様だな。さぁ、城へと来て貰うぞ」

「まぁ当然拒否権なんてねーんだがな。テメー等は重罪人だからよ!!」

「く、くっそ〜〜!!」

勝ち誇った様に宣言するシャラードを前に、アディナスはルザロに向かいイヴァールが

シャラードに向かって行った。


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