Crisis of Empire第20話(最終話)


シャラードは矢を放つ弓使いのイヴァールの矢を、この視界が悪い中で何とか

槍を使って弾く。ほとんど槍をぶん回して弾きまくっているが、イヴァールも

弓の両端に刃がついている品を使っているので油断が出来ない。

イヴァールはとにかく攻めに攻めるタイプの様で、弓の他にキックも駆使して

シャラードをなかなか強烈なキックでぶっ飛ばす。

「ぐほっ!!」

吹っ飛ばされたシャラードは目の前に迫る弓を見て素早く身体を横にずらして

回避し、それにより隙の出来たイヴァールに前蹴り。

「ぐっ!」


「おらああああっ!!」

槍を繰り出しつつイヴァールに向かうシャラードだが、それでもイヴァールも

負けじと回避しながら弓の両端の刃で迎え撃つ。そして今度は前蹴りで腹をど突かれ、

続けてイヴァールの強烈なミドルキックを食らったシャラードは怯みつつも何とか踏ん張る。

「はあっ!」

イヴァールが更に向かって来ようとしたので、この状況ではまずいとシャラードは槍の他に

武器として携帯している腰のロングソードを引き抜いて投げつけた。


「おっと!」

イヴァールは寸での所でロングソードを避けつつ再び弓を振るおうとしたが、間髪入れずに

シャラードがイヴァールの腹にミドルキック。更に怯んだ所に全力で体重の乗った重い右の

回し蹴りをイヴァールに入れる。

「ぐおあっ!!」

甲冑をつけている為に鉄の塊で思いっ切り殴られたのと同じ位の衝撃でイヴァールは

横へと吹っ飛んで行き、塔の壁に側頭部を強打。

「う……あ……」

どうやらそのまま打ち所が悪かった様で、力無く地面に膝をついて倒れ込んで絶命した。


一方のルザロはアディナスの繰り出す片手剣と短剣の二刀流に苦戦していた。なかなかの

使い手である様で、ロングソード1本のルザロに比べて手数が多く出来る。

左手に持っている短剣が盾の役割も果たしているので、それで攻撃を受け流してすぐに

反撃にも使う事が出来る。

だがルザロも帝国騎士団将軍として、今までの経験を武器に熾烈なバトルを繰り広げる。

(ラシェンやミアフィンとの手合わせをしては居るが、少し勝手が違うか!?)

ロングソードと短剣と言う組み合わせの二刀流は余り経験した事が無いが、その2人との

手合わせの応用をすれば良いと言う結論に達する。


だがアディナスはルザロのロングソードを左のキックで上手く弾き飛ばし、そのまま左手の

短剣を突き出して来た。

「うっ!?」

まずい、やられる……と思ったルザロだったが、その短剣が自分に届く事は無かった。

何故なら今の声はルザロの声では無く、背後から一直線に投げられたシャラードの槍が

背中から心臓を貫通して息絶えたアディナスの声だったからであった。


「大丈夫か!?」

「す、すまない、助かった……」

もしロングソードの方が突き出されていたら間違いなく自分は殺されていただろう、とルザロは

思わず身を震わせながらも自分のロングソードを拾って鞘に戻し、同じく槍を引き抜かれて

うつ伏せに倒れ込んで血を流しているアディナスに一言呟いた。

「陛下を襲った罪は、死で償って貰うぞ」

もうその声が届く事は無いが、そのセリフがこの襲撃事件の終わりを意味しているのだと言う事を

シャラードにも感じさせる一言だった。


そうして後からやって来たミアフィンとテトティスに手伝って貰い、2人の死体を駅を警備している

警備隊員と騎士団員に帝都へと運ぶ事に。

そのまま帝都へと帰還した2人は、セヴィストの意識がはっきりして来たと言う事をカルソンから

伝えられてほっと胸を撫で下ろした。

結局遺跡となっている塔の封印は未だに帝国でも解けていないが、何時か封印が解かれるであろうと

言う結論に達すると同時に、外の守りは強くても内部から1度襲撃されてしまうと脆い物だと言う事を

今回の事件で発覚した警備体制の曖昧さやそれぞれの意識の迂闊さ、それから油断で思い知ったのである。

何事も油断と慢心は大敵と知ったファルス帝国では、この後で24時間体勢での帝国内部のセキュリティの

強化が進められて行く事になるのであった。



Crisis of Empire 


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