Crisis of Empire第18話


「うぐぁ!!」

カルソンは男に当て身を食らい、そこから男が手に持っている2本の槍の内の片方がカルソンの

身体に突き刺さる。

「カルソン様!!」

ラシェンが二刀流を活かして男に飛びかかって行き、つばぜり合いに入った所で素早くリアンが

カルソンを男から遠ざける為に引っ張って執務室の隅へ。

「カルソン様、しっかりなさって下さい!」

「う、ああ、リアン……団、長?」

「止血します!」


どうやらギリギリで急所を外させる為に身体を捻った事が功を奏した様で、槍での一突きは脇腹に

入って致命傷にはなっていない様だった。

「一体何があったのです!?」

「と、突然あの男がここに入って来まして……襲い掛かって来たんです」

カルソンの視線の先にはラシェンと立ち回りを繰り広げる、騎士団員の格好をしている白髪の

中肉中背の男の姿があった。

「分かりました。私達に後はお任せ下さい!」

「すみません……止血が終わったら後は私1人で平気です。あの男の事は任せましたよ」

「かしこまりました、カルソン様」

そのまま自分のマントを破いて止血を素早く終えたリアンはカルソンを執務室の外へと逃がして

カノレルに後を任せ、自分はもう1度大剣を構えてラシェンに加勢に向かう。


槍を2本巧みに操り、リーチの長さを利用して上手く白髪の男は騎士団長の2人を

相手に立ち回りを見せる。

だけど騎士団長の2人も当然負ける訳に行かないし、騎士団長の立場を貰っている

だけあってそうそう簡単にやられはしない。

2人と言う人数差を利用して挟み込み、1つに的を絞らせない様にして戦力を

分散させる手を取って男をかく乱する。

それでも槍使いの男もなかなかの使い手だ。


でもこのまま打ち合いを続けていても決着はなかなか付かないだろうと言う事で、

リアンは一種の賭けに出る。それは大剣を捨てて素手の状態で男の懐に飛び込み、

大剣使いとしてのパワーを活かして男の片腕を取って動きを封じる事だった。

「なっ!?」

滑らかな動きをしていた白髪の男の動きががくんと止められて男がうろたえたのが

大きな隙となり、そこに全力でもう一方から飛び込んで来たラシェンの剣の柄を持つ拳が

男の顔面にクリーンヒットした。

「ぐごっ!!」


硬い物を握った状態でのパンチは通常のパンチよりも威力が増す為にそのショックも大きく、

殴られる寸前にリアンが男の腕を解放した為に成す術無く男は窓を突き破って飛んでいった。

「ぬおああああーーーーっ!!」

絶叫が城の中庭に響き渡り、城の最上階から窓を突き破って男は下に見える噴水の

真ん中にダイブし、背中から若干噴水を叩き割ってその衝撃で絶命してしまうのであった。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「お、終わった……」

リアンもラシェンも何とか戦いが終わった事で安堵するが、そうも言っていられない事をすぐに思い出した。

「って、終わってねぇ終わってねぇ!!」

「そ、そうですよ!! ルザロ将軍とシャラード将軍の元へと援軍を送る手筈を整えましょう!!」


そう、まだこの戦いは終わっていない。リアンとラシェンの戦いはこれで終わっても、

まだ戦っている人間が今も居る筈だ。

でもこちらでも多数の負傷者が今自分達が窓から突き落とした男によって

やられてしまった様なのでそちらの治療や男の死体の後始末もどうにかしなければ

ならないしティハーンやカルソンの安否確認も必要になって来る。

だから自分達がここを離れる訳には行かず、代わりにミアフィンとテトティスをルザロと

シャラードの元へと向かわせる事にリアンとラシェンは決めて行動するのであった。


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