Crisis of Empire第16話


その一方でリアン、カノレル、ラシェンの3人はフールベリア城へと向かっていた。

(何か嫌な予感がする。何だ……この不安感は!?)

ラシェンが胸騒ぎを覚えつつ大急ぎで城下町を駆け抜けていると、

目の前に段々とフールベリア城が見えて来ている。

「何だか胸騒ぎがしますね。急ぎましょう!」

「ああ、俺もそうだ!」

「私もです!」

どうやら考えている事は3人とも一緒だったらしく、更に走るスピードを上げて人込みを

上手くすり抜けながらフールベリア城の中へと入って行くのであった。


そうしてフールベリア城へと戻って来た3人だったが、特段今の状況で

普段と変わった所は無さそうである。

「……あら? リアン団長にラシェン団長、それにカノレル副長も。随分と早かったですね?」

そんな3人を出迎えたのは警備隊の副総隊長として活動しているテトティスだった。

「て、テトティス! 何か変わった事は無かったか!?」

「えっ……?」

血相を変えてそう聞いて来るラシェンに若干引き気味になりつつも、テトティスは特に

変わった事は無かった旨を伝えた。


「そうか、なら良いんだが……」

「あ、あの3人とも顔色が悪いですけどどうかなさったんですか……? それとルザロ将軍に

シャラード隊長は? 御一緒にお出かけになられた筈じゃあ……」

2人の将軍が一緒に居ない事を疑問に思ったテトティスに、今度はカノレルが今までの状況を

なるべく手短に話して行くと段々と彼女の顔が変わって行く。

「まずい……!」

「え?」

顔色が段々青ざめて行くテトティスに3人はきょとんとした顔になる。

そしてこの後、驚愕の事実が彼女の口から語られる事に!


「カルソン様が危ない! 急ぎましょう!!」

「えっ、おいおい!?」

「どうしたんですか!?」

ラシェンとカノレルはテトティスが急に走り出したのを見て声をかけるが、

彼女は一目散に何処かへと走り出し始めた。


テトティス・リースレアはファルス帝国警備隊の総隊長を女だてらに務めている

31歳の女警備隊員である。長物である槍を振るうシャラードとは対照的で、戦場では

2本の短剣と魔法を使う魔法剣士として活動している。ファルス帝国軍の中では珍しい魔導師の1人で

あるが、何故彼女が魔法を使う事が出来るのかと言うのにはきちんとした理由がある。それは以前、

バーレンで魔法を習っていたからだ。帝国警備隊に入隊したのはかれこれもう15年前になり、

そしてその入隊する2年前の14歳の時からバーレン皇国に留学して魔法を習い始め、

1歳年上であるバーレンのアイリーナと魔法学校で出会いそこからライバル関係が始まったのであった。

それから同じくバーレンへ魔法の研究をしに来ていたシュアのメリラとも同時期にライバル同士となる。


実の所、元々彼女は警備隊に入る気は当初無かったのだがある時

実家の雑貨屋で仕入れの手伝いをしていた時に警備隊の人間が買い物に来た。

その後で仕入れの為に材料を集めに出かけたのだが運悪くスリに遭ってしまう。

だがそのスリを素早く追いかけて捕まえ、財布を取り返してくれた複数人の警備隊員の

姿を見て感動した彼女は、初めてその時に警備隊に入る決心をしたのであった。

自分も警備隊員になる事で、困っている人を助ける事が出来ると心からそう思った

彼女は両親の反対を半ば押し切る形で町の武術道場に10歳から通い詰めた。

そして4年後にバーレンに魔法を習う為に留学し、2年後の入隊に繋がったのである。


見るからに重装備のシャラードとは逆に、胸当てや肩当ても軽い物を選んで動き易い様にと

軽装で戦場へと赴く。戦場においては短剣をメインに使う魔法剣士は余り居ないので結構

珍しがられるらしい。熱くなり易い総隊長のブレーキ役の1人と言っても過言では無い、

影の功労者として帝国警備隊を引っ張って行く存在であると同時に現在は若手の指導役と

しても指導に当たっている姿を時々鍛錬場で見かける事が出来る。ちなみに彼女はワインが

好物なのだが、最近呑みすぎてしまい禁酒中。どちらかと言えば無口で冷静な性格であるが、

言うべき所はハッキリ言うタイプ。


しかしそんな彼女はいつもの冷静な性格を発揮する事が出来ていないばかりか、

その表情に明らかに焦りの色が大きく出ていた。

「ど、どうしたんですか一体!?」

隣を走りながら着いて来るリアンに尋ねられ、これまた走りながらテトティスは答える。

「さっき、見慣れない騎士団員がカルソン様に伝言があると言って居場所を尋ねて来たんですよ!

騎士団の制服だったから執務室に居らっしゃるって言ってそのまま行かせちゃったんですけど、

もしかしたらその騎士団員が……!!」

「い、何時の話だ!?」

「つい10分位前……!」

「やばい、急ぐぞっ!!」

4人は更にスピードを上げて、そのままカルソンが仕事をしている筈の執務室へと向かう。

だがその途中で目を覆いたくなる様な光景が繰り広げられているのであった!!


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