Crisis of Empire第15話
「これは……!!」
そのメモに目を通したカノレルの顔が引きつる。そのメモの内容は
これからの奴等の計画を記したメモであった。
「帝都の周辺の村を順番に回り、そこで遺跡に関する情報を集める……?
さっきの連中はドラゴンの事を知っていたって事になるんですかね?」
「恐らくはそうだろうな……。良し、だったら奴等が行きそうな村や町を
大体リストアップしてみよう。話はそれからだ」
しかしそこで不気味な笑い声が足元から聞こえて来た。
「ふふ……ふはは……もう手遅れだぜ……」
「貴様!?」
何と黒髪の男が意識を取り戻し、虫の息となって騎士団員達に衝撃の事実を伝える。
「何が手遅れなんだ、はっきり言いやがれ!!」
「まさか、何かまだ企んでいるつもりじゃあ!?」
ラシェンもリアンも男に詰め寄るが、男は首を横に振って悲しそうな目をして続ける。
「自分……あいつ等に見捨てられちまったな……だからもう話してやる……。あいつ等は
そっちには行かねぇよ、それは囮だぜ……」
「囮?」
カノレルが不思議そうに尋ねると、男はふっと息を吐いた。
「ああ……御前達が動く事は予想出来ていた……リアン団長の部下でもあった自分が情報を
流し……御前達の行動の情報をキャッチしていた。だからそのメモもお前達が見つけると
踏んでいたが……自分はあいつ等と一緒に遺跡へと向かう手筈だった……。けど、自分がルザロ
将軍と戦っててあの銀髪野郎がもう1度来てくれる筈だったのに……あいつに逃げられたな……」
「そんな事はどうでも良い、あいつ等は遺跡へ向かったんだな!?」
ルザロが問い掛けるが、すでに男の意識は止血をしていても大きく切り裂かれていたので
出血多量で無くなりつつある。
そんな男は最後の力を振り絞り、4人の騎士団員と総警備隊長に最後の情報を伝えた。
「いいや……あいつ等、は2人が遺跡……で、1人がカルソンを殺しに行った」
「カルソン様を!? 何故だ!?」
「あの手紙……の内容を実行する為に邪魔……な奴を消す……為、さ。自分達が
国より先に遺跡の封印を解いて、それでドラゴンの力を、手に、入れ……」
そこまで言って、男は力なく事切れて息を引き取った。
「……くそっ!!」
シャラードが足で床を蹴りつけるが、この男の言う事が本当だったとしたらまずい。
「行こう、カルソン様が危ない!!」
「はい!!」
しかし一同が城へと向かって帝都を駆け抜けていると、丁度ルザロの視界の端に
見覚えのある男の姿が映った。細い路地を挟んでその向こう側の通りに見えた
その一瞬のその姿を見逃さなかったのである。
「……!!」
「どうしたルザロ?」
「あいつだ、あの銀髪の男を見つけた!! 俺に襲い掛かって来たあの店の奴だ!」
「何!?」
まさかの発言に部下達とシャラードの表情も驚きの物になる。
「追うか!?」
「勿論だ! すまないが俺とシャラードであいつを尾行する。御前達は城へ急げ!!」
残りの3人を城へと向かわせ、ルザロとシャラードは方向転換をして銀髪の男が歩いていた通りへと駆け出す。
「奴は?」
「……居た! あれだ!」
通りに出て人込みで割りとごった返す中、その銀髪の男の後ろ姿を発見して尾行を開始する。
見失わない様にするのは勿論だが同時に気が付かれない様に、そして一定の距離を保つ事。
これが尾行をする上で大切な事だ。
ルザロはその男が向かう先を絶対に突き止めると意気込んでその基本を守る。
(ここまで来て、絶対に逃がす訳には行かない!!)
あの男の言っている事が正しければ、銀髪の男が向かう先には遺跡がある筈だ。
その遺跡の謎を解く鍵が見つかったのだろうか? と言う疑問が当然湧き上がって来るが、
それ以上にシャラードには気になる事があった。
「なぁ、そう言えばさ」
「ん?」
「あの死んじまった奴、今俺達が追っているあいつとカルソン様を狙っている奴の他に
もう1人仲間がいるって言って無かったか?」
「そうだな。しかし今俺達が追いかけているのは1人。多分何処かで合流でもするんじゃ無いのか?」
「そうかもな」
とにかく今は目の前に見えているあの銀髪の男の姿を絶対に見失わない様にする。
ただそれだけに集中して、ルザロとシャラードは帝都の道を歩いて男を追いかけつつ城門へと向かうのであった。