Crisis of Empire第14話


「駄目です、逃げられました……」

「まぁ良い、この男の身柄だけはこちらの手にあるのだからな」

何とあの銀髪の男は、騎士団がクラブの店員と争っている所で

隙を見て上手く逃げおおせてしまったらしいとリアンから報告を受けた。

そもそもどうやらこのクラブの店員達があの銀髪の男、そしてこの死体に

なってしまった黒髪の男の仲間だったらしく、ルザロがこの貯蔵庫に

入ってしまったのを見つけた黒髪の男が武器を振り回して一気に周りの

店員を扇動し、その結果として騎士団と大乱闘になったらしい。


「つまり最初から、このクラブの店員達はこの貯蔵庫の中のこの地図を

知っていたって事なんですかね?」

「ううむ……ますます訳が分からん。するってぇと少しは人数が居そうだが」

疑問を呈するカノレルと頭を抱えるシャラードだったが、騎士団に応援は

要請してありクラブの店員も結局のところ刃向かって来た者全員が逮捕されて

連行されて行った。ちなみに気絶してまだ息があるこの男の身柄は後で回収されるらしい。

「……あれっ?」

その時、リアンが男の身柄を見てある事に気がついた。

「どうした、リアン?」

疑問の声を上げたリアンにラシェンが気がつくが、この後衝撃的な事実が

リアンの口から語られる事になる。


「この男、城の中で見かけた事があります。と言っても何回かですがね……。

結構最近も見かけた事ありますから記憶に残っているのかもしれません。

この男は確かウチの騎士団の人間です。名前は……何だったかな……?」

「騎士団の人間か。となれば少々厄介そうだ」

リアンがこの男の事を思い出している隣でシャラードがポツリと呟きつつ続ける。

「騎士団の人間が絡んでいると厄介だ。余り考えたくは無いが城の中にも

内通者が居ると言う事になりそうだし、下手に情報を流さない様にしよう。

ひとまずカルソン様や副官達にだけは伝えるとするか」

「ああ、その方が良いな」


ルザロもシャラードの意見に同意し、自分の予想を打ち立てる。

「この見取り図は俺達騎士団の人間、それから城の中で働いている奴にしか手に

入らない筈の物だ。しかしそれも今のリアンが言ってくれた事で解決した。この男が

騎士団の人間だったと言うのなら、見取り図を使って陛下を襲撃する手筈を綿密に

立てられたと言う事になるな」

それに今度はカノレルが同意しながら続ける。

「ええ。しかも襲撃だけでは無くて騎士団の人間だったら城の警備体制を把握

する事も出来ますし、今回の時みたいな催事の場合においてもどう言った形で

警備を配置するかと言う情報はある程度騎士団の人間に出回ります。だからこそ

その警備を事前に情報をこうして外部に流す事でかいくぐる事も可能になる筈です」


こう言う状況になり、改めて普段からセキュリティの面で油断していた事に

ここに居る騎士団の面々は気が付かされていた。

そんな心境の中、今度はリアンが手を挙げた。

「これは私の推測でしかありませんが……恐らく……恐らくですけど、今回の

警備体制の事を考えて見ると当日にあそこの木の上に上ったとは考え難いです。

私がもしこの見取り図を事前に見せられていたとして、あの襲撃者の立場で考えると

したら……前日の夜からあの木の上に上って待ち伏せするでしょうね」


そのリアンの推測に他の騎士団員達も納得した表情になる。

「確かに、それだったら当日にあの厳重な警備体制を抜けて来る必要が無くなるな」

「ただでさえ夜は集中力が低下して気も緩みやすい状況。眠さとの勝負でもあるからな」

「人間の習性を上手く利用したって事か」

「だがまだ推測にしか過ぎないのは確かだ。他に何か無いかもう1度探してみるぞ」

ルザロの提案で再びクラブ内の捜索が開始される。

するとこの後、新たにとんでもない物が発見される事になってしまうのであった!


それを見つけたのはラシェンだった。

「……ん? これは……」

「何か見つかったか?」

「ええ、どうやら何かのメモみたいなのですが」

ラシェンがあの見取り図が置いてあったテーブルのすぐ傍の壁からはがしてきた1枚のメモ。

そこには恐るべき計画が記載されていた!!


Crisis of Empire第15話へ

HPGサイドへ戻る