Crisis of Empire第13話


あらかた調べてみて回ったが、どうやら証拠になりそうな物は見つかりそうに無い。

「もう結構見て回ったろう? どうだ、何か見つかったか?」

「いいや……ん?」

そう言えばまだ調べていないドアが1つあったな、とルザロは気がついて銀髪の

男にそのドアを指差しながら声をかける。

「あっちの部屋には何があるんだ?」

「ああ、あそこはワインや食材の貯蔵庫だが」


しかし、ルザロはその貯蔵庫になっている部屋こそが最も怪しいと感じている。

何故なら自分が居る場所はその貯蔵庫に繋がっているドアの少し手前で、

その貯蔵庫のドアを守る番人の様にスーッと銀髪の男が立ち塞がったからである。

明らかに何かを隠したがっているのがその行動でバレバレだ。

「他に調べていない所は無さそうだな」

「ああ、部屋はもうこれで終わりだ。用が済んだのならさっさと帰ってくれないか。

あんた等騎士団が居るとお客も落ち着いて酒が呑めないだろうし」

銀髪の男は凄くめんどくさそうな態度をルザロにかもし出し、それに対してルザロは

分かったと言い残してくるりと男に背を向ける。


……だが、その動作に一瞬背後の男の気が緩んだのを気配で察知した

ルザロは素早く身を翻して男の横をすり抜ける。

「なっ!?」

そのままの勢いで貯蔵庫へ繋がるドアを一気に開けて中へと飛び込むと、

確かにそこにはワイン樽が壁に横倒しで積み重ねられており、食材も貯蔵されて

いる涼しい場所だったが違和感を覚えたルザロはそのまま奥へと小走りで突き進む。

「……!!」

その奥には何と大きな紙に描かれている、自分達騎士団にとっては見覚えのある図面。

しかしこれは一般人には絶対に流出しない様に徹底されている筈の、門外不出の

城の内部の図面でもあった。


「ふっ!!」

そんな光景に唖然としているルザロの後ろから物凄い殺気が膨れ上がって来たので、

咄嗟にほぼ勘だけで横っ飛びをしてルザロは床を転がって受け身を取る。

そうして視線を低い位置から斜め上へと向けてみると、そこには攻撃を外してしまったが

それでもロングとショートの双剣を構え直しつつ体勢を立て直している銀髪の男の姿があった。

「ここを知ってしまったからには、死んで貰うしか無いな」

「貴様、やはり!!」

「死ねぇ!!」


ルザロは腰からロングソードを引き抜いてその銀髪の男に応戦を開始する。

それと同時に貯蔵庫の外からも騒ぐ声が聞こえて来た。恐らく自分が貯蔵庫に

入り込んだのを知られたこの男の仲間が騎士団員達と戦っているのだろうとルザロは

思考しながら銀髪の男と戦う。

男はこの貯蔵庫と言う狭い空間においても巧みに双剣を振り回してルザロの攻撃を弾き、

ガードし、反撃して来るかなりのテクニックの持ち主だ。

対してルザロは、実はこう言った狭い空間においての戦いに関しては余り経験が無い。

騎士団員達も確かに部屋の中での戦闘を想定した訓練をしない訳では無いのだが、

ほとんどが野外の戦闘訓練の為に余りこう言った狭い空間で戦う事も無いのだった。


(今度から訓練メニューに室内戦を大幅に増やすとしよう)

そう考えながらも、今まで培って来た戦場での経験を活かしてルザロは銀髪の男を

どうやって仕留めるかを考える。

だがそんなルザロの元に新たなる乱入者がやって来るのであった。

「おい、俺に代われ!!」

「……良し、任せる!!」

(何っ!?)


何処からか聞こえて来た声に反応したルザロが見た物は、逃げ出す銀髪の男と

その銀髪の男の代わりに自分の相手をする事になった黒髪の男の姿だった。

黒髪の男は手に両手斧を持っているが、カノレルの使う片手斧より長くて大きいものの

一般的な両手斧からすると少し小さめだ。

しかしその小さ目という利点を存分に活かして、貯蔵庫の中で結構なハイスピード

バトルを繰り広げる。この男もなかなか強そうだ。

……が、ルザロはそんな男の攻撃パターンを冷静に見極めて反撃に出る。


(一見すると強そうだが、貴様の動きは実はめちゃくちゃのその場任せだ。

その様な戦法が俺達騎士団に通用すると思うな!)

心の中でそう黒髪の男を叱責し、ルザロはその男のめちゃくちゃな動きを

余裕はほとんど無いがそれでも何とかかわして行く。

(……そこだっ!!)

そうしてめちゃくちゃな動きをする黒髪の男の足を一気に足払いで払い飛ばし、そこから上手く

体勢を立て直して起き上がって来た男の身体を薙ぎ払いで切り裂いてこのバトルは幕を下ろした。


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