Crisis of Empire第11話


「私が……」

その呟きを残したまま二の句が告げないカルソンから「失礼します」と

メモを受け取ったリアンがそのメモを読んでみる。

「何々……我々は皇帝の暗殺を成功させた。これ以上伝説のドラゴンの謎に

触れるなら宰相のカルソンを始めとして皇帝以外もどんどん殺す。それが嫌なら

さっさとドラゴンに関する調査を止める事をお勧めする」


そのメモの内容に、それを聞いていた全員にどよめきが広まる。

「それってもしかして脅迫状って奴か?」

「で、でも陛下は暗殺されて無いでしょ……」

「恐らく暗殺が成功した時にそのメモを残す手筈だったんだろう」

「逆に殺されたのは自分自身だったってオチか」

ラシェン、テトティス、ティハーン、カノレルのそんな声が聞こえて来たが、

ここで新たな展開が白髪の男の死体を未だに漁っていたシャラードから

始まる事になる。


「……ん、何だこりゃ?」

白髪の男の懐の更に奥に手を突っ込んでみると、そこにはもう1つポケットが

あった事に気がつく。そしてそこからまた新たに1枚のメモ……では無く何やら

カードらしき物が出て来た。

「何ですか、それ?」

ティハーンがそのカードを見て首を傾げるが、同じくそのカードを目にしたラシェンが

あっと声を上げた。


「それ、もしかしたら俺の知ってる場所の会員証かもしれません」

「何?」

ルザロがまさかのラシェンの発言に反応を示し、とりあえずそのカードは

シャラードからラシェンに手渡される。

「……やっぱりそうだ。このカード、前に城下の知り合いに見せて貰った事がありますよ。

確か大通りから少し外れた所にある高級クラブのカードです。会員制で、相当な

金持ちしか入る事が出来ない秘密の場所があるって噂になってるのも聞いた事があります」

「何でそんな物をこの男は持ってるんだ……」

ルザロはこの白髪の男の死体に呆れを隠す事が出来なかった。

暗殺するならそんな物要らないだろ、と思いながらも今の所は手掛かりがどうにもこれしか

無さそうなのでそのクラブへと向かう事にする。


そこへ向かうメンバーはカードの事を1番最初に解明したラシェン、それからルザロにシャラード、

それと貴族枠のメンバーでリアンとカノレルも一緒に着いて行く事にする。

その途中で知った事は、リアンとカノレルがその高級クラブの場所を知っていると言う事であった。

「私達カナリス家は色々な貴族同士での付き合いもありましたからね。カードや会員制の

存在までは知りませんでしたが、そう言った場所があると言うのは聞いた事がありましたよ」

「我がエードレイ家と付き合いのある貴族に、多分そのクラブと思われる場所に連れて

行って貰った事はあります。ただ会員ではなくて付き合いで行っただけですから余り深くは

私も知りませんよ」


そんな2人の過去の話、特に実際に連れて行って貰った事のあるカノレルの話にルザロは

当たり前の疑問を口に出した。

「そのクラブにはどれ位前に行ったんだ? そしてどんな場所だった?」

「覚えているだけで……そうですね、2年前位でしょうか。記憶があやふやだから細かい所までは

覚えていませんけど、高級クラブなだけあって落ち着いた格式高い店であった気がします」

そんな2人の説明を受け、行った経験のあるのカノレルがそのクラブの場所を

思い出しながら案内された道の先には確かに格式高そうなクラブが1つ存在していた。

「入り口の両端にドアマンが立っている。これはこの格好じゃきついかな?」


当たり前だが自分達の今の格好は騎士団の黒い制服姿、しかもシャラードに

至っては傷だらけの甲冑を着込んでいるのでどう考えても高級クラブに入ると言う

格好には見えない。

「如何する……一旦出直して着替えた方が良いかな?」

「うーん、俺もそうした方が良いと思いますけども」

シャラードとラシェンがこのままクラブに入って良いのかどうかを足踏みしていたが、

そんな2人に対して横から口を挟んで来たのはこう言ったクラブ等に1番縁の

無さそうな人生を歩んで来た精鋭騎士団団長のルザロだった。


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