Crisis of Empire第1話


このヘルヴァナールの世界中でも1,2を争う程の軍事力と経済力を持っている

国として名高いファルス帝国は、その軍の機動力と戦闘力の高さ故に「武人国家」と

呼ばれている帝国だ。現皇帝のセヴィストが治めている国であり、配下の騎士団だけ

では無くセヴィスト自身もまた卓越した武術の使い手でもある。

そんな武人で構成されている騎士団が国の守護をしている事もあり、この世界の中でも

屈指の大国として知られている。だが、そんなセヴィスト率いるファルス帝国に暗雲が

立ち込めようとしている事を、今の時点では誰も知る由が無かった。


「陛下、そろそろお時間です」

「ああ」

皇帝の執務室において執務をこなし、とある準備を進めていた彼は勿論この部屋の

主であるファルス帝国皇帝、セヴィスト・ティリバー。先王の落馬事故死を切っ掛けに、

20歳の時に皇帝の座についた彼はまだまだ若いながらもそれ迄帝王学等を

習っていたおかげで何度も失敗を繰り返しながらも何とか皇帝としてファルス帝国の

発展と維持に尽力して来た。それから16年経った36歳の今では執務も政務もしっかり

こなす事が出来るし、皇帝の風格もなかなか板について来たと周りから言われる様になった。


バーレンとシュアと違う所を何か作りたいと思っていたが、バーレンでは

魔術と武術がバランス良く混在していたし、シュアでは魔術を利用する事に

長けていた事もありそのポイントで圧倒的に差をつけられていた。

だとすれば自国は軍事力と武術に力を入れるべきだと考え、町や村が多く

存在していると言う事にも目を付けて、定期的に魔物や盗賊等の駆除をしておけば

国の治安も良いままだと考えていたからだ。

なので軍事力に力を入れた政策に取り組み始めたセヴィストは、バーレンとの戦争が

あった時にもその圧倒的な軍事力を使ってその面において戦争に勝利し、今は一応

休戦協定を結んでいるものの実際にはファルスの圧倒的な勝利で終わっている。


更にはファルス帝国の中に伝説のドラゴンが居ると言う噂をまだ子供の

頃に聞きつけ、自分が皇帝になったらそれをもっと詳しく調査したいと思っていた事も

あって、実際にバーレンとの戦争が終わった後に調査隊を組んで調査させていた。

だがドラゴンの調査に関して言えば、棲み処自体は見つける事が出来たものの

実際にその姿を見た事は無かったので、何としてもこの機会にドラゴンの事を

もっと調査するべきだとセヴィストは意気込んでいる。また宰相のカルソンは

彼の従兄弟に当たり、親戚同士で意思疎通もし易い事から彼がサポート

してくれる事でセヴィストも大助かりだと言っているらしい。


そのセヴィストはこれから王宮のバルコニーにおいて、もしかするとこの先の時代に

おいてこの世界の生態系の一部に大きな変化をもたらすのでは無いかと言う事を

自国民達に話す為に出て行く準備をしていた。

(いや、生態系だけでは無くもしかしたら我が国の立場がこの世界でトップになる

可能性があるな。だからこそ大々的にアピールだ!!)

頭の中でそう言う事を考えてほくそ笑むセヴィストだったが、顔にはなるべく出さずに

口元を少し緩ませる以外はポーカーフェイスを心掛けてキリッと引き締まった表情を

作る事に今は専念していた。

が、儀礼用に仕立てられた赤いマントを羽織り、皇帝の威厳たっぷりにバルコニーへと向かう

彼はこの後に起こる悲劇等予想もしていなかったのであった。


王宮のバルコニーに出て来た自国の皇帝陛下を見る為に、この日の為にわざわざ地方の町から

やって来た民衆も居る様な大々的なイベントが開催される。

バルコニーからは広い中庭が見下ろせるようになっており、勿論そのバルコニーだけでは無く

中庭までも厳戒態勢の警備が敷かれていた。民衆は持ち物チェックが厳重に王城の入り口で

事前にされており、武器の類は護身用のナイフでさえも一切持ち込めない様に徹底されていた。

そして、このバルコニーの警備責任者として活動する2人の軍人もまた、この悲劇に見舞われる

事になるのであった……。


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