Compete in a Different World第5話


あの陛下との会談から数日後。ヴィルトディンがエスヴェテレスに

宣戦布告を出されて、ヴィルトディンでも緊急会議が開かれる事に。

「皆、集まったな。ではこれから軍事の会議を始める」

ヴィルトディン王国の王城にある騎士団の会議室において、エルガー、

クラデル、それからそれぞれの副官のジェディスとロイティン、そして

配下の小隊長達が一同に集まっていた。

「隣国のエスヴェテレスが数日前に宣戦布告を出して来たと言うのは

陛下からの通達で皆知っていると思うが、近々こちらに攻め込んで来る

のは間違い無いだろう。そこで、我等はこのクーイトリック山脈で

エスヴェテレスの帝国軍を迎え撃つつもりだ」


エルガーは自分の後ろの壁に貼られている、王国と帝国の位置を

示している地図に対してバシッと手を叩きつける。

「この山脈は皆も知っている通り、こちらのリーバックス渓谷や

こちらのワールトダルの森に繋がっている。その辺りに逃げ込まれたら

入り組んでいるから追撃は難しくなってしまうだろう。だからこの山脈で

一気にエスヴェテレスを叩き、短期決着を狙おうと思う」


そして、そのエルガーに続いて今度はクラデルが次の作戦を話し始める。

「しかしだ。敵さん達も無策で来るとは思えないから、いざと言う時の為に

幾つかの事態を想定しておく事が重要だろう。

そこで、陛下とも話し合ってこう言った作戦を考えたんだ」

そしてクラデルが話し始めた作戦内容で、ヴィルトディン王国軍は

戦争におもむく事になった。


会議を終えたエルガーは、クラデルと共にもう1度自分達の君主であるリルザ・アイヴィジュの元へと向かった。

「そうか、作戦は纏まったんだな」

「はっ。急ぎ、全軍出撃の手筈を整えております」

「承知した。しかし……何故我がヴィルトディンと交易もそこそこ盛んなエスヴェテレスが

こんな暴挙に出たんだか……」

全く理解不能だ、と言わんばかりに若き国王陛下は溜め息を吐いた。そんなリルザを見て

傍らに控えていた宰相のジェリバーがゆっくりと口を開く。

「でも、エスヴェテレスの皇帝は好戦的だと言う情報もありますから。だからこそ領土を拡大する為に

まずは隣国である我が国に目星をつけたのでしょうなぁ」

「あの皇帝なら納得出来る理由だが、だからと言ってこちらとしてもはいそうですかと領土を

渡す訳には行かない。この国は私の国だ。私はこのヴィルトディンを滅ぼさせるつもり等毛頭無いのでな。

こちらに攻め込んで来るなら、しかるべき対応でこちらも迎えさせて貰うとしよう」


今の所こちらとしては領土を広げるつもりは無い。しかし攻め込んでくる敵が居るとなれば話は別になる。

そう言わんばかりのリルザは続けて将軍2人に対して穏やかな口調でこう言った。

「とりあえず、今は体力を温存しておけ。それから武器や防具の手入れも怠るな。戦争があるなら

万に一つも考えたくは無いが……余の方も身体を動かす事になるかも知れぬ」

遠回しに自分も戦場に立つ事になるかもしれないと言うリルザだったが、2人の将軍はそれを

否定する様な口調でやや被せ気味に反論。

「ご心配は無用です。必ずや、私達が王都にエスヴェテレスを入れさせません」

「そうですよ。俺達にお任せ下さい。陛下のお手を煩わせる様な事にはいたしませんよ」

それを聞いてリルザはふっと口元を緩ませる。

「それを聞いて安心した。御前達の働き振りを余も信頼しているのでな。頼むぞ……双璧の将軍」

「「はっ!!」」

ヴィルトディン王国の双璧の将軍は、完璧に揃った返事を主君にするのであった。


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