Compete in a Different World第4話


ヴァンイストは執務をキリの良い所迄終えた後、ディレーディに

言われた通り騎士団長と副騎士団長を呼びに行く事にする。

と言ってもその2人は別々に行動する事が多い為に、まずは配下の兵達に

それぞれの居場所を教えて貰って来て貰う事になった。

その結果執務室にはディレーディとヴァンイスト、それから呼び出された

団長と副団長の計4人が集まる事になった。


「御呼びでしょうか、陛下」

茶髪の騎士団長であるザドール・サイヴェルが、一緒にやって来た騎士団

副団長のユクス・ウォルトークと一緒に、右手を胸に当ててそう口を開く。

「うむ、実はな……」

ディレーディはヴァンイストにも話したのと同じ様に、隣国ヴィルトディンに

戦争を仕掛けようと思っている事を話す。


「突然のお話ですね……」

話を聞き終えたユクスは、思わずそんな言葉が口から出てしまった。

「ああ。だから、計画を一緒に練ってもらえないかと思って呼び出した訳だ」

ユクスの呟いた通り突然の話であったが、一方の普段は堅物で通っている

ザドールが意外な事を次の瞬間言い出した。

「我が国の軍事力をヴィルトディンを始めとした他の国に見せ付ける

良い機会です。やりましょう」


その一言に、ディレーディを始めとしてその場のザドール以外の

メンバーの表情と執務室の空気が変わる。

「そうだな。ならば我がエスヴェテレスはヴィルトディンに対して

宣戦布告だ。そして作戦を練り始めるぞ。それから軍の準備だ!」

「「はっ!」」

皇帝のその決断に、団長と副団長は揃って完璧に返事をした。


こうして、ヴィルトディン王国とエスヴェテレス帝国は戦争へと

突入する事になった。勿論、宣戦布告をされたままで当然ヴィルトディンの

方も黙っていると言う訳には行かないであろう。だからこそ、こちらとしても

作戦を練ってヴィルトディンに攻め込まなければならないのだ。

皇帝の執務室を出て、ザドールは他の3人に向かってこれからの準備を

どうするかと言う第一声を発した。

「部隊の編成や、どうやって王国を攻め落とすかもこれから皇帝と一緒に

決めなければならないな」

ザドールのその言葉に、ユクスも頷きを返した。



そして今回の為に大金を積んで雇った傭兵であるウェザート・ラナリオールと、

シュヴィス・グノウェイナーの2人は鍛練場へとやって来た。戦争に向けて

自己鍛錬を行なう為であるのだが、そこには先客が2人居るでは無いか。

「おっ、ウェザートにシュヴィスじゃないか!」

声を掛けて来たのは2人の内の紫の髪の男である。

彼はブラヴァール・ジャンスサートと言う男であり、2人と同じく傭兵家業で稼いでおり

顔見知りの存在でもあった。屈強な剣士であり、大剣を武器にそのきゃしゃな

外見からは想像も出来ない程のパワーと体力を誇る。その秘密は何時

仕事が入っても良い様に普段から戦闘用の装備で歩き回っている為なのだ。


「鍛錬しに来たのか?」

「ああ!」

そう声を掛けて来たのはもう1人の男で、同じ傭兵である赤髪の

ロラバート・オスウェイン。隠密行動専門の暗殺者で、手にしたナイフと

素早い動きで相手に気付かれない内に切り裂く。主に密偵として

帝国に雇われる事が多く、潜入や調査等の任務を請け負う事が

多い口数の少ない寡黙な男だ。この4人の傭兵は戦争の為に

エスヴェテレス帝国に雇われたのである。

「戦争か……」

「それはまた急な話だな」

ロラバートは考え込む素振りを見せ、ブラヴァールは若干呆れ気味だ。


「好戦的な陛下の事ですからね。それに隣国への侵攻は

度々話が出ていましたから無理も無いでしょう」

シュヴィスがそう言うと、ロラバートとブラヴァールの2人は納得した様に頷く。

「それは一理あるな。……良し、なら俺達も特訓開始だ」

「そうだな。じゃあ手加減無しで」

「勿論だよ。ただし僕達は手加減しないからそのつもりで」

ウェザートも笑みを見せ、他の3人も自分の武器を構える。

その鍛練は4時間余りもの間続くのであった。


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