Compete in a Different World第3話


ヴィルトディン王国と海を挟み、ヘルヴァナール世界で1番大きい領土を持つ

アーエリヴァ帝国の西の隣国として存在しているエスヴェテレス帝国。

元々は海を渡って来たヴィルトディンからの移民によって建国された帝国である。

そんな経緯を持つ帝国を治めているのは、好戦的な性格のディレーディ・ジリスフォンだ。

この皇帝、隙があれば周辺諸国への侵略を試みており建国してから数ヶ月で急に

台頭して来た帝国としても有名だ。皇帝としては初代であるのでこれからの発展が

見込まれているが、領土の拡大を目指すのは隣国にとっては驚異的な存在になりそうだ。


そして、それの餌食になりそうなのがエスヴェテレス帝国と海を挟んで

隣接しているヴィルトディン王国である。逆方向の隣国であるアーエリヴァ帝国と

エスヴェテレス帝国を比べてしまうと、その大きさには数倍の違いがあるのでまだまだ

侵略するには時間が掛かりそうなのだ。

そこで、まずはヴィルトディンを侵略して領土を拡大してから、それを

切っ掛けとしていずれはこの世界を制覇するのが今後のエスヴェテレスの目的である。


「で、その後に今度はファルス、そしてヴィーンラディと続けて行こうと思ってな」

エスヴェテレスの帝都にあるエスヴェテレス城の皇帝の執務室で、ディレーディが

宰相のヴァンイストに向かって沿う計画を企てている事を密かに発表した。

「え、ええ、それは良いとしても……侵攻の計画はいつ頃から開始なされる予定ですかな?」

そのヴァンイストの疑問にディレーディはこう返した。

「それなんだがなぁ。この前、ヴィルトディンに偵察に出掛けた事があっただろう」

「はい」


その後に、ディレーディはこんな話を持ち出して来た。

「それで、そこの渓谷に遺跡があったのを思い出してな。調べて見た所そこには

伝説のドラゴンが眠っているとの噂がある。それを奪い取るのと並行して進めて

行こうと思うから、まだ計画を練る。決行は早くてもそうだな……1週間後だな」

それを聞いて、侵攻する為の軍の準備と侵攻作戦をヴァンイストは

頭の中で幾つかシミュレーションし始めた。

「ふうむ……でしたら、私の方でも騎士団にこの事を伝えましょう。

その上で、私達も作戦を練り始める事にしましょうか」

「ああ、それで良い。我も戦場に出るかもしれないから、それを考えた上で

作戦を一緒に練ろうと思う。執務が終わったらで良いから団長と総隊長達を

この我の執務室に呼んで来てくれないか」

「わかりました」


執務室を出たヴァンイストは、皇帝の言葉を思い返してはぁっと息を吐く。

(全く、陛下の好戦的な性格には困った物だな。だがああなった時の陛下は

幾ら止めても無駄だろう。それに国を挙げてヴィルトディンを征服しに

向かうのであれば、皇帝が出て行かないと言う訳にも行かないだろうし

その方向で騎士団長達に対して通達を出す様にしよう)

皇帝のディレーディ自身が戦場へ向かうと言う事は、それだけ重要な

戦いになると言う事だ。大陸の制覇の第一歩でもある為に、絶対に

失敗する訳には行かないと言うのはヴァンイストも良くわかっている事。

(そうなれば、しっかりと作戦を練らなければ行けないな)

先程のシミュレーションの内容を思い出しながら、ぶつぶつと呟きつつまずは

自分の執務室へと向かうヴァンイストであった。


エスヴェテレス帝国は軍事に力を入れている為、

隣国ヴィルトディン王国と比べてみると軍事力に勝る国である。

ただその反面資源には乏しいので、ヴィルトディンや

反対側の隣国であるアーエリヴァから農産物や海産物を仕入れている。

そして橋を繋げて隣国で交易をしているヴィルトディンに、軍を率いて

攻め込もうと言う皇帝からの通達が騎士団になされた。

ヴィルトディンと違いこの帝国には騎士団は帝国全土の治安の

維持から魔物の討伐迄の全てをこなす帝国騎士団1つだけだ。

軍事力としては25万人と言う圧倒的な人数が存在している。そして

更に驚きなのは、その団長と副団長がまだまだ若い男であると言う事であった。


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