Compete in a Different World第16話


「何だ、これは……」

ヴィルトディン王国の王都にある王城前の広場で、ディレーディは

まさかの光景に目を見開いていた。

それもその筈、王城の前には先程の王都以上の警備態勢が

敷かれていたからである。

王都前の防衛ラインを突破された時の為に、ヴィルトディン王国軍は

こうして予防線を張って置いたのだがそれが功を奏したのだ。


だが何故こうして予防線を張る事が出来たのかと言うと、それには

あの傭兵コンビであるロサヴェンとティラストの活躍があったからであった。

エスヴェテレスがただクーイトリック山脈を進軍して来る訳は無いと考えた

ロサヴェンは、傭兵としての旅で集めておいたエスヴェテレスの地図や

資料をティラストと一緒に読み漁っていた。


するとその資料の中に、アーエリヴァの方から伸びているジュエリス山脈が

エスヴェテレスとヴィルトディンを繋ぐ橋の前に覆いかぶさる様に

位置している事を気にしていた帝国では、その向こう側に海が広がっているので

南に向かって山脈に小さなトンネルを造り、その先に船着場を建設していた事が発覚。

もしかしたら、これを使って来るのではと思いリルザに王都の警備を

強化する様にティラストが進言したのだ。そしてその読みは当たったが、

予想外にも向こうの到着が速く王都前の警備を突破されてしまったので、

最終防衛ラインになるこの王城前の広場で決着を着ける事になりそうだ。


「くそっ……全軍、全力で攻撃せよ!」

ディレーディが剣を振りかざし、王城前の広場での戦いが始まった。

騎士団長達は山の方へと出払ってしまったので、実質傭兵のロサヴェンと

ティラスト、そして宰相のジェリバーと国王のリルザも強制的に参加する事に

なった。何せ兵力がそうしないと足りなくなりそうだからである。


王城前の広場は団体戦となり、何処に誰が居てどうやって

戦っているのかが目まぐるしく変化するややこしい状況になっている。

その中で傭兵として雇われたティラストは、2本の剣を持って向かって

来る双剣士のブラヴァールと勝負に入っていた。

「まさか私達の襲撃を見越して、王都に伏兵が居るとはね」

「陛下が一筋縄でこのヴィルトディンを落とさせると思いましたか?」


それだけを話してすぐにバトルが始まる。

魔法剣士なのは変わらないが、ティラストはロングソードを使用するのに

対してブラヴァールはロングソードにプラスして大剣の2本の剣を使用する。

その点では国王のリルザと何ら変わりは無いが、リルザはロングソードが

2本なのに対してブラヴァールは片手で大剣を使用出来るのだ。

きゃしゃな外見に見えて、実は力が相当あるブラヴァールのその外見に

騙されてやられてしまう敵も多い。


多くの点で似ている両者は、それだけ実力も拮抗する。単純にテクニックでは

ティラストに軍配が上がるが、パワーではブラヴァールに軍配が上がる。

お互いに一長一短とも言えるこの勝負だが、負ける訳に行かないのはどちらも同じだ。

「すらっ!」

「はっ!」

ブラヴァールの右の剣をティラストはロングソードでガードするが、左の剣が

今度は襲いかかって来るのでバックステップでそれを回避。


だがブラヴァールの追撃はとどまる所を知らない。

なので剣で攻撃を弾き、左手に魔力を集中させて風の弾を出し、

ティラストはブラヴァールに向かってそのウィンドボールをぶつける。

「ぐっ!」

若干怯んだブラヴァールに、上から振りかぶる様にロングソードを

叩き付けるティラストだがしっかりガードされてしまう。


しかし、そこで咄嗟のティラストの足払いが入りブラヴァールは

地面に背中から倒れてしまう。

「ぐお!?」

大きな隙が出来た所に全身全霊で飛びかかって押さえつけた

ティラストは、懐から荒縄を取り出してブラヴァールを素早く縛り上げる。

「ぐぐっ! くそっ!」

ブラヴァールはこれで戦う事が出来なくなり、広場の隅にティラストによって

戦いが終わる迄放置される事になってしまったのであった。


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