Compete in a Different World第15話
クーイトリック山脈の中で奮戦していたエルガーは、ロングソードを振るって
向かって来るエスヴェテレスの兵士達を次々に斬り捨てて行く。
彼の剣はとにかくトリッキーなのが特徴で、良く言えば独特な戦い方、
悪く言えばいやらしい戦い方をする物だ。
「ふっ!」
相手のわき腹を突いたり、足を突いて動けなくなった所で
斬り捨てたりと言う戦法で数多くの敵を倒すエルガー。
ただ、戦場では武術の型等に構っては居られない。
自分もヴィルトディン王国騎士団で剣術の指南を受けて来た以上、
ヴィルトディン流の格式ばった剣術になっていった。
だが、それだけでは駄目だと感じて旅人時代に自己流で
習得した剣術と組み合わせて自己流のテクニックを編み出し
相手の隙を突いて反撃に移る戦法が得意と言われる様にもなった。
それを利用して、戦場ではこうして相手の隙を突き勝ちを拾って来たエルガー。
しかしそんなエルガーの元に、同じくロングソードを構えて走って来る人物が。
「はぁっ!」
「なっ!?」
咄嗟にそのロングソードを受け止め、バックステップで距離を取るエルガー。
そのロングソードを振るって来たのは、茶髪の隣国の騎士団長である
堅物と噂のザドールだった。当然エルガーは見覚えがある。
「ヴィルトディン王国王宮騎士団長のエルガーだな」
「そうだ。同じく騎士団長のザドールか」
「ああ。そなたの噂は聞いている。勝負だ!」
そう言って斬りかかって来るザドールに応戦するエルガー。ザドールの剣はエルガーと
同じくテクニックタイプであるが、どちらかと言えば格式ばった物になっている。それでも
その剣術にはスピードとパワーを兼ね備えているので、油断が出来ない。
(やり難い相手だな!)
ザドールはエルガーの剣術をそう評価するが、それはエルガーにとっても同じ事であった。
(時間は掛けられない。さっさと終わらせるぞ!)
右手でエルガーはロングソードを横薙ぎに振って、それをザドールは屈んで避ける。
だが次の瞬間、ザドールの側頭部に思いっ切り衝撃がやって来た。それはエルガーの左足。
剣を右に振り抜き、その勢いを利用して左足でエルガーはハイキック。
それにより一瞬意識が飛びそうになるザドールだったが何とかそれを維持。
しかしそれによって出来た隙は大きく、次にエルガーの前蹴りがザドールの腹に入る。
「ごえっ!」
前屈みになったザドールはエルガーの次の蹴りにも対応できなかった。
屈めば頭が前に出て来るので、そこを狙って上に蹴り抜くハイキック。
そのキックは顔面に直撃し、余りの衝撃にザドールは昏倒。
エルガーはそれを見て素早くザドールを荒縄で拘束し、将軍同士のバトルはこうして幕を下ろした。
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