Compete in a Different World第11話


「うわあああっ!!」

「そ、総員退避!」

「駄目です、後ろも塞がれました!!」

クーイトリック山脈で落石が発生し、その山道を進軍していた

エスヴェテレス帝国軍は身動きが取れない状況になってしまった。

それと言うのも、この落石はヴィルトディン王国とエスヴェテレス帝国との

戦争が始まった事を意味する物である。


ヴィルトディン王国が考えた作戦の内容は、帝国の連中が

王国に入るには橋を渡ってこのクーイトリック山脈を超えて来なければならない。

しかしこのクーイトリック山脈は切り立ったガケが存在しているポイントがあり、その

上からエスヴェテレス帝国軍が下を通る時に兵力を駆使して

大きな岩を落とす作戦に打って出たのだ。


そしてそれは成功し、混乱している状況下の中でヴィルトディン王国軍と

エスヴェテレス帝国軍がクーイトリック山脈でぶつかり合う事になったのである。

「ガケの上から敵襲だ! 迎え撃て!」

ユクスがそう周囲に向かって大声で叫び、クーイトリック山脈の戦いが

この瞬間スタートしたのであった。



だが、エスヴェテレス側も何もしないと言う訳では無かった。

事前にエスヴェテレス側も戦術を練っていたのだ。

「ふっ、ヴィルトディンの奴等め……我が帝国の力を思い知らせてやる」

そう呟くディレーディは、ヴィルトディンのシミュレーションでは

あり得ないルートを通ってヴィルトディンに潜入して馬を走らせていた。

その後ろにはヴァンイスト、ウェザート、シュヴィス、そして大勢の兵士達が続いている。


彼等は宣戦布告をした直後、それがヴィルトディンに届く前にもうさっさと出発し、

帝国の南の方にあるジュエリス山脈に造ったトンネルを通った、その先の船着き場から

大量の船を出航させていたのだ。そこに乗っているのは勿論、ディレーディを始めとした

大量のエスヴェテレス帝国軍である。

クーイトリック山脈を越える部隊にはザドールとユクスを配置させ、人数も

多めに配置する。それで進軍を目立たせる事によってヴィルトディン王国軍を

山脈におとりの役目で引き寄せて、その隙に警備が手薄になった王都を

ディレーディを始めとした精鋭部隊で制圧して、一気に侵略しようと言うのが

エスヴェテレスの作戦であった。


「さぁ、王都まで行くぞ!」

なるべく王都に近い所に船を停泊させ、そこから帝国軍は一緒に乗せて来た

馬で一気に王都迄駆け抜ける。

王都までは平原の為に、馬で駆け抜けるには時間がかからないのが功を奏した。

こうしてエスヴェテレスはヴィルトディンの王都に奇襲をかけたのである。


そうして、王都に奇襲をかけたディレーディ率いるエスヴェテレス帝国軍であったが

その最初の戦いでふと疑問を感じる事に。

(……王都はここまで警備が厚い物なのか?)

王都入口には多数の王国騎士団の騎士達が集結しており、まるで

帝国軍の到着を待っているかの様であった。

だがそれでも時間はかかった物の、何とか防衛ラインの騎士達を

撃破して王都に突入する事に成功した帝国軍。


「よーし、このまま王城まで攻め込むぞ!」

そのディレーディの声に、後ろから兵士達の気合いの入った声が上がる。

そうしてヴィルトディンの王都に住む一般市民までもを巻き込んで

進軍するエスヴェテレス帝国軍だったが、王城の前にある広場まで来た時にその

目論見はガラガラと音を立てて崩れ去ってしまう事を実感させられる事になるのであった。


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