第5部第20話(エピローグ)
やるだけの全てのバトルを終え、C1グランプリの舞台から去った瑠璃。
もう瑠璃は、サーキットをこのS2000で走ることは無いだろう。そう思うと少しだけ
寂しいような気もしたが、バトルバトルの連続にはもう飽きた。
あとはこのS2000をどう処分するかだ。それを相談しに、瑠璃は京介の元へ向かう。
「そうか、引退するのか…。まぁ、俺は止めはしないさ。君が自分で決めたことならそうすればいい。
で…このS2000をどうにかしたいのか?」
「はい。それで普通の車を買って、それで過ごそうと思ってます」
「うーん…あ、そうだ。確か…」
そういうと京介は立ち上がり、店の裏口から外へと出て行った。…と思えばすぐに戻ってきた。
「ちょっとこっち来てみろよ」
言われるがまま裏口から外に出ると、そこには1台の赤い車が。
「これは…?」
「ああ、デモカー用に中古で買ったこの車だったんだがな、結局整備だけして中身は手付かずだ。もしよかったらこれに乗るか?」
その言葉に瑠璃は目を見開いた。
「ええ!? でもこれを私が乗るとなると、デモカーは…」
「だからその代わりに、俺が名義変更をして、このS2000をここのデモカーにするんだよ。これならS2000も処分できて
新しい車もタダで手に入る。どうだ? 悪くない条件だと思うぜ」
それならいいかもしれない。
瑠璃はポケットからS2000の鍵がついたキーホルダーを取り出し、S2000の鍵だけを取って京介に渡した。
「後は…よろしくお願いします」
「任せておけ。大事に扱うさ。名義変更は俺がやっておくから心配するな」
途中からS2000のチューンをしてくれて、さらに新しい車まで用意してくれた京介。
瑠璃は自分でも知らず知らずのうちに、京介に不思議な感情を抱いていた。
「京介さん…」
「何だ?」
瑠璃はそんな京介の一瞬の隙を突き、京介の頬にキスをした。
「今までどうもありがとうございました。これで心置きなく引退できます。では失礼します!」
「え…いやあの…ちょ…」
京介が引き止める前に、瑠璃は京介からもらった車、BB6プレリュードのスペックSに乗り込み、去っていったのだった。
(キス…されちまった…)
その後、プレリュードでサーキットへ行くようにはなったが、バトルはしなくなった瑠璃。
今までとは違う形で、車と付き合っていく。
そう決めて今日も、瑠璃の1日の生活が始まる。
第5部 完