第5部第3話
鈴鹿東、筑波、首都高サーキットへと毎週遠征を繰り返し、1ヶ月が過ぎた頃。
ランクCのマスターがいよいよ登場した。
コースは首都高サーキットでSPバトル。その情報を聞きつけ、瑠璃は首都高へ向かった。
(雨か…)
雨でターボ車は走りにくい。相手がどんな車で来るのかがわからない以上、油断は出来ない。
ピットに入り車を停めると、隣には黄色いS2000の姿が…。しかもドライバーは女。
「こんにちは」
「こ、こんにちは…」
「あなたが最近噂になってるっていう、紫の180SXの人ですよね? 私は飯田 恵(いいだ めぐみ)。フィールド1ランクCのマスターです。よろしく」
その言葉に瑠璃は納得。この通称「ユウウツな天使」がランクCのマスターである。
「S2000…ですか」
「ええ。普段はS15に乗ってて秘書をしているんですけど、最近はここでレーシングドライバーとして活動しています。
元気レーシングプロジェクトのS2000…追いついてこれるかしら?」
「…負けるつもりはありません。私は…」
「いい心構えね。貴方の実力、見極めさせてもらいます」
そう言って恵は隣のピットへ戻っていった。
マスターとのSPバトルはピットから2台一直線に並んで出てから、5秒後にスタートする。
ピットレーンに並ぶS2000と180SX。車内には街道でおなじみのSPゲージが取り付けられている。
ピット出口にあるシグナルがブルーに変わり、2台はコースへ。
180SXが加速してS2000の左横に並び、バトルがスタートした。
始まって最初にすぐ右コーナーが来るので、アウト側の瑠璃は一旦引いて後追いから。
S2000とのパワー差はそんなに無いようである。
SPバトルなのでなるべく引き離されないように、どこで前に出るかを考えて走ることが大切だ。
S2000のテールに食いつき、連続シケインを曲がる瑠璃。S2000はコーナーが結構速い。
が、立ち上がりのスピードは若干こっちが勝っているように思える。
コーナーでの勝負は捨てて、プレッシャーをかけて揺さぶりつつ直線で勝負だ。
(首都高がバトルコースになるなんて、ラッキーね…。ハイスピードコース!)
S2000の前にはFCがふらつきながら走っている。そのFCにつかまってスピードが落ちたS2000を一気に横からパス。
連続シケインの後に来る右コーナーを抜ければ、アクセル全開のまましばらく加速できる高速セクションに入る。
そこで一気に180SXのパワーを活かして突き放し、ぶっちぎりで勝負を終わらせた瑠璃だった。
恵と瑠璃がピットに戻ってきて、再び対面。
「実力を見極めてたとはいえ、私に勝ったのは事実。お見事といっておきます」
「あ…ありがとうございました」
「これからもがんばってくださいね」
がっちりと2人は握手をして別れ、これでBランクへの挑戦権が手に入った瑠璃であった。
今度は岡山のサーキットや、大阪環状サーキットまで行かなければならない機会が出来た。
しかし金銭面的なこともあり、そう何回も行っていられない。
行けるとすればその2つ以外の、鈴鹿西コース…ここなら三重県なので、何とか行けそうである。
高速代とか時間の都合も考慮すると、ここでもギリギリっぽいが。
ともかく、フィールド2はその3コースになる。
と言ってもまずはフィールド1の筑波、鈴鹿東、首都高サーキット外回りからランクBをつぶしていくしかなさそうだ。
今度はフィールド1と2のランクBのボス2人を倒さなければ、ランクAのライセンスはもらえない。
フィールド1ランクCのボス「ユウウツな天使」は倒したし、フィールド2ランクCにもボスはいるらしいが、そっちは倒さなくても良いとのことだ。
ランクBのライセンスが発行されてから、鈴鹿西、東、首都高外回り、筑波で開催されるレースにだけ毎週参加し始める瑠璃。
ランクBに上がったことで、C1GP委員会から援助金として何と100万円が送られてきた。
恵を倒すということは、それだけの価値があったのである。
その金で180SXをさらにチューニング。剛性をアップさせ、エンジンをいじり、足回りもブレーキを大きいものに変えるなど
安全面での配慮も欠かさない。サーキットで走る以上、何が起きてもおかしくはないからである。