第4部第11話
女2人とのバトルを終え、引き続き六甲のライバルを倒していく。そうして何日かした後の日曜日。見慣れない車が停まっていた。
(何だあの車…?)
形からすると、トヨタのMR−Sにすごく似てる気が…でもライトが全然違う…。
しかもその隣にいる女は、ぬいぐるみをもふもふしている。
取りあえず気になったので、友也は女に車の名前を聞いてみることにしてみる。
「あの、すいませーん…」
「なんでしょ〜?」
「この車何ていうんですか? 見慣れない車ですけど…」
「これはですね〜、トヨタのMR−Sですよ〜。限定車のVM180です〜」
ああ、そういえばそんな車が売りに出されてたっけ、と思い出した。
何かザガートという所が造った、限定モデルのMR−Sだ。
「すごいですね…。ちょっと興味が出てきたんですけど、俺と走ってくれませんか?」
「バトルってことですか〜? いいですよ〜。受けますよ〜。SPバトルでいきましょ〜。私は綾織 綾香(あやおり あやか)っていいます〜」
「林友也です。お互いがんばりましょう」
バトル区間は上の方にあるヘアピン手前のコーナーから、橋の直線手前のヘアピン手前まで。
「3,2,1,GO!」
最初は友也が先行。しかし綾香も狭いコースを利用してしっかりついてくる。
軽い車重にミッドシップレイアウトはこの狭いコースでは大きな武器になる。
(速いねぇ〜。これは負けちゃうかもねぇ)
勝てないと思いこんでいる綾香だが、それでも最後まで食いついていく事に。
早めのブレーキングから立ち上がり重視でコーナリング。しかしそれでも圧倒的に立ち上がりはR33の方が速い。
2連続ヘアピンで一気に差をつめる綾香だが、その後は抜けずじまいで友也の勝利となった。
綾香とのバトル後、友也が社宅に戻ってパソコンを開くとBBSに書き込みが。表六甲のスラッシャーからだ。
ラリーで鍛えているので、峠でもテクニックを評価して欲しいとのこと。
雪なのでスパイクタイヤに履き替え六甲へ。そこには白いランエボ8が停まっている。
そのドライバーは友也に気が付くと声をかけてきた。
「あなたですか? この目で評価してくれるというR33の人は…」
「あー…はい。評価しに来ました。あなたが…」
「そうです。俺が宮本 稔(みやもと みのる)です。今日は生憎のコンディションだけど、こればっかりは仕方ないですからねぇ。早速バトルと行きましょう」
先行後追いで宮本が先行。上りのフルコース。
「3,2,1,GO!」
最初はエボ8が少しだけ引き離すが、低速コーナーなのですぐにまたぴったりテールに張り付く。
ラリーで鍛えていただけあり、リズミカルにコーナーを駆け抜ける宮本。
宮本のアクセルワークを真似して、必死で食いつく友也。
(上手い…! テンポが良いな)
そのまま低速コーナーを抜け、橋の直線で友也は早めにブレーキ。手前から雪を利用しテールを滑らせ、
V字ターンを利用して立ち上がりでも宮本を煽る。
(コーナーは同じくらいだけど、物凄く立ち上がりが速い! ストレートのスピードも違う! 一体何馬力出ているんだよあのGT−Rは?)
宮本のエボ8は大体480馬力。友也のR33は550馬力だ。
そしてそのままオーバーテイクポイントへ行くが、何と抜けない。スペースを開けないのだ。
さて困った。後抜けるポイントはというと…。
(少し強引だが、あそこで仕掛けられれば…!)
エボ8のテールをジッと見つめつつ、ドリフトは封印して狭い六甲を駆け上がる。
左のきついヘアピンを抜け、少し加速して右中速コーナーを曲がり、また右を曲がって最後の左ヘアピンへ。
ここで友也はアウトから思いっきり進入していく。
(外から…!)
ミラーでそれを見た宮本は、自分もアウト側にエボ8を寄せて、ブロックしつつコーナリングしようとした。
しかしそれは友也のフェイントだった。
1速まで落とし、低速から一気に加速して開いたインに飛び込む友也。
(そこだぁ! 終わりだ宮本!)
そこで完全にサイドバイサイドになり、緩い右→左→左のS字コーナーを抜けて、最後の直線でパワーを生かして前に出ることに成功!
少しだけリードしたまま、友也が先にゴールした。