第4部第7話


徹を倒し、第1と第2いろは坂はこれで制覇した。スラッシャーを倒した賞金は

2人の総額で400万円手に入るとあり、それは全部R33のチューニングへ回す事に。


まずは自分で出来ないボディへのフルスポット増し、ボディの軽量化。

さらにエンジン内部もチューンし、タービンも大きいものへ。

足回りもブレーキを大型のものへ変更。ミッションも6速ミッションへ載せ替え。

サスもレース用の物に変更。これで総額388万円也。工賃も含めて何とかぎりぎりで収まったらしい。


500馬力にまでパワーアップした。当然、腕もそれなりのものを要求するわけだが、

前にこれ以上のフルチューンR33を乗り回していただけあり、何だか物足りない様子の友也。

(無理にブーストアップするとエンジンが壊れる可能性があるし…今はこれでいいか。

山道だし、そこまでパワーは使わないし。代わりにギア比を加速力重視に仕上げておこう)

せいぜい山道でのトップスピードは、出ても240キロくらい。しかもそんなところなどめったにない。




取りあえず神奈川に帰るまでにまだ2週間はある。そういえば、第2にはラヴァーズはいないのであろうか?

そう思い、取りあえず仕事が引けた後に毎日いろは坂へ繰り出す友也。すると、雨の土曜日に

第1と第2にそれぞれ新しいラヴァーズを1人ずつ発見。

取りあえず第2から先に会ってみることにした。



その女は雨だというのに外でストレッチをしたりして、とにかく落ち着きがない。

「どうもこんばんは。珍しいね、雨の日に走り込みって」

「こんばんはですー。見かけない方ですねー。どこから来たんですかー?」

「神奈川のほうからね…。良かったら、バトルをお願いしてもいいかな?」

「おおー。私の地元も神奈川県なんです。バトルならいいですよー。SPバトルでいきましょー。私は城山 渚(しろやま なぎさ)です。よろしくー」

「林友也だ。お手柔らかに」

バトル区間は頂上から少しだけ下りたところから、連続ヘアピン区間の終盤まで。ダウンヒルバトルだ。

渚の車は赤いEF8のCR−X。


取りあえず最初は様子を見るということで先行させてみる。

軽い車はコーナーが速いが、果たして…?


(うわ…危ないなあれ…)

何だか蛇行気味な運転をする渚。先行させたのは間違いだと思ってももう遅い。

この危なっかしいCR−Xをどこで追い抜くか?


それは…。

(…今だ!)

突っ込みすぎてアンダーを出したCR−Xをあっさりとパスし、そのまま大差をつけて終了させた。

あんな走り方をする奴に友也が出会ったのは、今までにも何度かあったらしい。



続いては第1いろは坂の方へ。こっちではGTウィングをつけた赤いK11マーチに乗った女が1人。

「…こんばんは」

「どうもこんばんは。俺、神奈川から来た林友也って言うんだけれども、良かったら俺とバトルしてほしいなぁ…なんて」

「バトルですか? いいですよ。じゃあ…先行後追いでこっちが先行でいいですか?」

「ああ、かまわないさ」

「分かりました。あ、私は氷上 里央(ひかみ りお)って言います」

バトル区間は、中盤の連続ヘアピン区間の終わりくらいから、麓までのダウンヒルバトル。


マーチ先行R33後追いでスタート。

最初はまぁ…楽勝だろう、と考えていたら甘かった。

マーチは小回りが利きやすく、こういった超低速ステージの下りでは車の差も関係ない。

ヘアピンをまるでネズミのごとくすばやく駆け抜ける。雨なのに腕もいい。


(おいおい…速いぞ!?)

必死にサイドターンで追いかける友也だが、コーナーごとに差をつけられるという異常な展開。

ひょっとすると弁護士より速いかもしれない。

そこで一旦気を落ち着かせ、勝負のポイントを最後のストレートに絞る。

橋を3回渡れば長いストレートなので、そこで横に並ぶ!

ヘアピン区間は我慢の走りが続き、最後のトンネルから500馬力を生かして一気にマーチに接近。



(えっ…!?)

あまりの接近の早さに驚いた里央、慌ててしまい3個目の橋の上でアンダーステアを出してしまう。

そこを友也は見逃さず、少しばかりマーチにバンパーを接触させつつ横並びに。

そしてそのままパワーを生かし、最後に何とか抜いてゴールしたのであった。





そんなバトルがあった翌日の日曜日。今日は仕事が休みな為カテゴリーレースに精を出す。

ヘアピン区間の連続でポイントを稼ぎやすいいろは坂。

4WDでのドリフトも大分慣れてきたので、ちまちまとポイントを稼いで小金をかき集める。

そしてそれは生活費に回す事にした。



夜になり、再びいろは坂へと行ってみる友也。昨日とはうって変わって良く晴れている。

そんな友也が第2いろは坂のPAに入ると、3人のラヴァーズを発見した。

銀のZ33フェアレディZ、青の涙目GDBインプレッサ、そして峠には珍しいアウディTTクーペ。色は白だ。


まずは銀のZ33から行ってみることに。

「ん…何だあんたは?」

「俺、林友也って言うんだけれども。女の走り屋って珍しいからバトルしてほしいと思ってな」

「私と? いいけど…。先行後追いで、こっちが先行でいいかな?」

「ああ。ダウンヒルか?」

「そう。私は新橋 天音(しんばし あまね)。よろしく」

バトル区間は、友也が透の190Eを抜いた、2つ前のストレートの中盤あたりから麓まで。

女だてらにZ33を扱うということで興味はあるが、バトル区間が短いため

すぐに決着をつけなければならないのが惜しいところである。



最初からZ33のテールにぴったりと張り付き、バンパーとバンパーがぶつかるくらいのテールトゥーノーズで右中速コーナーから左ヘアピンへ。

アウトインアウトでコーナリングする天音のZ33だが、友也はアウトインインでコーナリング。

晴れた日に3連続バトルとなるので、早めに決着をつけて置きたいからだ。


(え? そんな…)

あまりにもあっさり追い抜かされ、そのまま50mの差をつけられて敗北したのであった。

もっと距離があればじっくり腕を見たかった、という友也だが、残念だ。



お次は青のGDBインプレッサ。

ドライバーはなにやらヘッドホンで、音楽を聞きながら歌を口ずさんでいる。


「あ、あのすいません!」

「はっ…はい?」

「音楽聞いてる途中申し訳ないんだけれども、バトル…してくれないかなって思って」

「いいですよ。やりましょやりましょ。あ…失礼ですがお名前は?」

「林です。車はあのGT−R」

「林さんですね。私は水城 瀬奈(みずき せな)って言います」

「瀬奈…か。F1ドライバーと同じで、いい名前ですね」

「どうもありがとうございます。じゃあ…先行後追いで、こっちが後から追います」


バトル区間は天音とスタートしたところから、中盤の連続ヘアピンを抜けたところまでの上りでバトル。

相手はラリーにも出てるインプレッサということで、気が抜けなさそう。

なので先行で一気に突き放し、さっさと逃げ切ることに。



「3,2,1、GO!」

上りのバトルがスタート。加速力重視にしているだけあり、インプレッサにも

負けないスタートダッシュを見せるR33。

ストレートを全開で駆け抜け、早めのブレーキングからターンイン。



しかしインプレッサは遅れることなくしっかりついて来る。それに何だか加速が変にいいような…?

その秘密はというと。

(やっぱりトランクに1000枚以上CD積んでいるだけあって、トラクションのかかりがいい!)


瀬奈は音楽が好きで、CDショップでバイトをしている。それ以外にも休みの日にはライヴ通いに明け暮れている19歳だ。

今のところはインプレッサのポテンシャルで、何とかついてこれているといった感じではある。




(振り切れると思ったが…そうでもないらしいな! 焦るな…振り切ろうと思うから焦るんだ。このまま行けば俺の勝ちだろ?)

きっちりアンダーを殺して、いつもの豪快な走りは封印して走る。

立ち上がりでしっかりとアクセルを踏み込み、ヘアピンとヘアピンの間のストレートで差をじりじりと広げる。


(速い! こっちも負けてられない!)

瀬奈は大音量で、速いテンポのトランス系の曲を聴きペースを上げる。突っ込みのスピードを上げ、

少しでも立ち上がりで遅れた分を取り戻そうと必死だ。


しかしそれでも500馬力あるGT−Rとの差が縮まるわけではなく、

最後は35mの差をつけて何とか友也が逃げ切って勝利。




最後は白のアウディTTクーペとバトル。

「すいません! 俺とバトルしてほしいんですけど…」

「え、あ、はい。かまいませんよ」

「ありがとうございます。俺、林友也って言います」

国村 樹笹(くにむら きささ)です。それじゃSPバトルで、頂上から行きましょう」

バトル区間は頂上から連続ヘアピン区間の終盤までの、ダウンヒルバトルだ。



最初のスタートダッシュでは友也が先行。しかし樹笹のTTも4WDなのでぴったり食いついてくる。

それよりも心配なのがタイヤとブレーキだ。これで3戦目ともあり、どっちとももう終わりかけている。

雨であればタイヤの心配は無かったが、今日はあいにく晴れ。

それでもこれで最後まで使い切るつもりで、最初から猛プッシュをかける友也。


それにくらいつこうとする樹笹ではあるが、下りでもじりじりと引き離されていく。SPメーターもどんどん減っていく。

(私は今日、疲れてる…けど、そんなの言い訳にしかならない!)

夜のお仕事を生業としている樹笹、疲れているが猛スパートをかけて再びR33に接近。


が…。

(あ、アンダー…!)

R33にくらいつこうとするあまりにアンダーステアを出してしまい、

一気に友也に引き離されて勝負ありとなった。


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