第4部第6話
そして弁護士とのバトルから数日後。今度は第2いろは坂へ赴くことになる。
弁護士を倒してもらった100万で、R33のチューンを決行。サスとブレーキをチューンし、マフラーを変え、コンピューターもいじる。
エンジン本体まではさすがに金が足りなかったらしいが、これだけでも340馬力は出ている。
これでこの第2いろは坂、上りでも何とかやっていけるくらいにはなった。
それでもまだまだチューンが足りないらしく、時々ミスをして負けてしまうこともあった。
もともと同じ車を存分に乗り回していただけあり、勘はすぐに戻ってきたのだが、あの頃のチューン内容になるには
まだまだ時間がかかりそうである。
そんな矢先。晴れた火曜日に、第1いろは坂を下って帰ろうとすると、
パーキングに見慣れない赤のアルファロメオ156と、灰色のベンツ190E…しかもエボリューションモデルが停まっている事に気がついた。
いろは坂は外車が多いのかな…と思いつつ、気になったのでR33を停め、そのドライバーに近づいていく。
2台とも女が運転していた。
「すいませーん!」
するとその呼びかけに気がついた女2人、こっちに向かって歩いてくる。
「あ…なんでしょうか?」
「いやあ…外車とは珍しいですね。お2人も走り屋ですか?」
「そうなのさー! 今ドリフトの練習中なのさー!」
156の女はどうやら、沖縄の方言で話しかけてきているようだ。
「FFでドリフト…珍しいですねぇ」
「そうなのさー。よく珍しいといわれるけど…あ! 良かったらバトルしない?」
という訳で、まずは156の大村 涼子(おおむら りょうこ)とバトルすることに。
カウントは190Eの女、中里 吉良(なかざと きら)が入れる。
今回は吉良、涼子共に下りのSPバトル。涼子は頂上から中盤の休憩所までがバトル区間だ。
「行きますよ。3,2,1、GO!」
FF相手にスタートダッシュでは負けられないので先行…出来ない!?
何と、R33と互角のスタートダッシュを見せる156。鼻面こそ友也のR33が前に出ているが、ほぼ横並びだ。
しかし第1コーナーへの突っ込みは友也が取った。ブレーキングで先に引いた涼子は後追いを選択。
緩いコーナーに向けて180キロ近いスピードから一気に減速し、ジムカーナのスラロームの要領でリズムよく駆け抜ける2台。
(速いねー…あのR33)
やや涼子が遅れつつ、1つ目のヘアピンに進入。ここで思いっきりサイドブレーキを引き、サイドターンで
抜けようとした涼子だったが、引く量が足りずにアンダーステアを出してふらついてしまう。
そこを友也はきっちり引き離し、涼子のSPゲージを減らしていく。
(でも、まだ負けるわけにはいかないさぁ!)
アクセルを踏み込み再びR33に接近するが、大柄なR33のボディが邪魔をして、涼子はなかなか抜くことが出来ない。
それでもSPゲージを減らしつつ、必死に食いついてくる涼子。
だがそれが最後まで逆転することは無く、結局は休憩所へたどり着く前に
全て涼子のSPを減らしきった友也が勝利した。
「負けちゃったのさ〜。でも、いいバトルが出来てうれしかったさー」
にっと笑顔を見せる涼子に対し、友也も思わず笑顔になる。
そしてお次は吉良とのバトル。今度は最初のヘアピンを抜けた所から、最後の連続ヘアピン区間の手前までで勝負。
「行くさー…。3,2,1、GOなのさ!」
最初はやはり4WDのダッシュを生かして友也が先行。しかし、吉良のドラテクは友也に負けず劣らず豪快である。
かなり手前から流していくサイドブレーキドリフトを繰り出し、友也のお株を奪うような良いドリフトを見せる吉良。本当に女なのかと疑ってしまうほどだ。
(すげぇ豪快…! 俺も負けてられないぜ!)
ベンツでそれをやられて闘争心に火がついた友也も、4WDの迫力満点ドリフトで攻める。
そのままドリフトバトルを繰り返してゴールまで近づいてきたが、これはあくまでも勝負。
友也は走りを切り替えて立ち上がり重視の走り方に変更。
アクセルオンのタイミングを早くし、吉良を引き離す。
(走りが…変わった?)
ヘアピンを立ち上がって、4WDの加速でベンツを引き離す友也。
(速い! 離される! R33は4WDだから、立ち上がりでついて行けないわ!)
そのままパワーでベンツを引き離し、吉良のSPゲージを一気に減らして勝負を決めた友也だった。
女2人とのバトルから数日後、ついに第2いろは坂のボスからメールが届いた。
ただ、どうにも見下した感じのメール。しょぼくれたマシンがどうのこうのと言っていたので、適当に返信して会いに行ってみることに。
奴のマシンは確かに凄かった。空の190Eエボリューションをさらにチューンアップし、
レースに出るために造られた、190Eエボリューション2。こんな車を持っているとは一体…?
「君が最近ここで暴れているGT−Rのドライバーか。こんなしょぼくれたマシンでよくここまでやってこれたな?」
「まーな。でも、あんたの190Eよりは速いと思うけど?」
「へーえ…そこまで言うなら見せてもらおう。俺は佐藤透(さとうとおる)だ」
「林友也だ。バトル形式は?」
「俺が先行の、先行後追い形式。この車についてこられるか?」
これで完全にぶちきれた友也。絶対に勝つと心に誓う。
そして、先行後追いでバトルがスタート。最初から前に出ようとする友也だが、なにぶん相手の190Eもボディがでかい。
おまけにコーナリング速度が結構速い。勝っているところといえば立ち上がり加速とストレートスピードの伸び。
という訳で、そこにポイントを絞ることに。
最初の中速コーナーの連続区間から、中盤の連続ヘアピン区間は何とか
引き離されないように必死にこらえる友也。
透の腕は流石第2いろは坂最速といわれるだけあり、そつの無いドライビング。
グリップと慣性ドリフトを使い分け、スーッと滑っていく不思議な挙動でダウンヒルを駆け抜ける。
それでも、立ち上がりとヘアピンの間の加速を生かしてそれに食いついていく友也。
ブレーキとタイヤはぎりぎり大丈夫そうだ。
さて、下りも終盤。次の右ヘアピンを抜け、緩い左を曲がった後には長いストレートが。
緩やかなコーナーも混じっているがほぼストレートと言ってもいいだろう。
その緩い左で、190Eよりアウト側からワイドにコーナリングする友也。いわゆる立ち上がり重視のラインだ。
そうすることによりコーナリングスピードを稼ぐことが出来、ストレートのスピードも伸びる。
(さぁ…勝負だ! 国産最強GT−Rをしょぼくれたマシンなどといったこと、思いっきり後悔しろ!)
立ち上がりのトラクションとストレートスピードの伸びで、190Eの右横に並びかける。
(何…!?)
まさかこの高級車に並んでこられるとは思っていなかった透は、ぐらついてしまい若干スピードを落としてしまう。
そのままサイドバイサイドで狭くなったストレートを駆け下り、勝負はその先の左ヘアピンへ。
透はイン側、友也はアウト側。イン側の透が有利かと思われたが、今回は違った。
(くそ…コーナーがきつい!曲がれない!!)
進入ラインがきつくなり、透は友也より早めにブレーキ。
引いた透を尻目に、友也はブレーキングからしっかりアウトインアウトでヘアピンを曲がり、
その後の立ち上がりで50mの差をつけて勝利したのであった。