第1部第18話
近くのランプで首都高を下り、そのまま下道で停車。すると遠くから2JZのエンジン音が。
まさかとは思うが…。
(やっぱりか)
さっきのピンクのスープラがやってきて、ポルシェの後ろで停車した。
そのスープラの中からは女が降りてくる。
「あなたは?」
「百瀬 和美(ももせ かずみ)よ。よろしく。さすが十三鬼将を倒しただけのことはあるわね」
そういって一息置いて、また話し始める和美。
しかしその内容は…。
「でも、十三鬼将は本当子供のお遊びよ。所詮首都高なんて、一般的なサーキットのレースに出るためには、何の役にも立たないでしょ。
ただでさえ公道を改造してサーキットにしたとはいえ、ベースは公道だからね」
その言葉に京介は反論。
「え、ええ…でも、子供のお遊びってのはちょっと言い過ぎじゃ…」
「だって本当のことでしょ? レベル低いやつばっかり。あなたや私みたいにレベル高いやつもいるけどね。…実際、十三鬼将も子供の集まりだったし」
まるで自分が1番みたいな和美の言い方に、京介はキレた。
ぐっと右手で拳を作り呟く。
「ふざけるな…」
「え、何?」
怒りに打ち震える京介の声は、あまりにも小さすぎて和美の耳には届かなかった。
そして間髪いれずに京介は、壁に穴が空くほどの強さで拳を打ちつけた。
「俺の前から今すぐ消えろっ! クソアマが!」
後ろにあったコンクリートの壁を軋ませた拳が、今にも自分に振り上げられそうなのを見て、
さすがの和美も京介の尋常でないその怒りに気がついたようだ。
京介が顔を上げたときにはスープラとともに和美の姿は消えていて、静まり返った路肩にはハァハァと息をする京介だけが残された。
(クソ…ふざけやがって…あのアマ!)
3日後。和美への怒りはまだ収まらず、ポルシェの中でイライラしながら京介は横羽線へ。
すると後ろから誰かがパッシングしてきた。
それは見たことの無い、白いFD。
(あ? …ちっ、気晴らしにこいつぶっちぎってやるか)
京介はハザードをつけて応対し、アクセル全開。
だがFDは何と、京介のテールをつついてきた!
(くぁ…加速重視のセッティングか。FDはスープラよりも軽いからな)
アクセルを踏み込んで引き離しにかかる。
だがこのFD、いっこうに離れない。それどころかむしろ食いついてくる。
(くそ…離れないな!)
パワーも結構あるみたいだ。京介はたまらずぐっとアクセルを踏み込み、しっかりハンドルを握る。
くっ、くっ、とアクセルワークを駆使し、アザーカーをきっちりと避けていく。
何回かスラロームを繰り返し、バックミラーを見てみる…が?
(マジかよ? まだ食いついて…ってまさかこいつ…!?)
直感的に京介は感じた。
このFDこそ、十二覇聖のリーダーだろう…と。
だがそんなことを思っていると、突然目の前に右コーナーが迫ってきた。
あろう事か京介はFDに気を取られて、ブレーキングが遅れた。
(しまった!)
慌ててブレーキングするが、それがアンダーを引き起こしてしまう。仕方ないのでサイドを引いて、ポルシェをスピンさせた。
FDはその横をあっさり走り抜け、夜の闇へ消えていった。
(負けた…)