第0.5部第15話(エピローグ)
「話って…何だ?」
令次に呼び出された岸と連は、首都高の入り口へとやってきていた。
「俺…あのS30Zに負けたのは悔しいですけど、1日落ち込んだら逆にスッキリしたんです。それで…俺、チームを作ろうと思うんです」
「「チーム?」」
連と岸の声がハモった。
「はい。首都高で有名な走り屋を集めて、1つの大きなチームで活動できたら良いなって。それでお2人を誘った訳なんですけど…どうでしょう?」
「チームか…」
このまま走り続けるのも悪く無いかもな、と思った岸は、令次の誘いに乗った。
「わかった。だったら僕も何人かに声をかけてみるよ。連も入るだろ?」
しかし、連は首を横に振った。
「…いや、俺は引退する」
「「引退!?」」
今度は令次と岸の声がハモった。
「な、何でだよ連…連はもう走らないのかよ!?」
「そうですよ…連さんには是非入って頂こうと思ったのに…」
だが、それでも連の意思は変わらない。
「俺は…もう令次に教えることは全て教えたつもりだし、首都高サーキットじゃなくて今度は…富士スピードウェイとか、筑波サーキットとか、
そっちにもう1度戻って、腕を磨いてみたいんだ」
「そんな…」
岸が寂しそうな声を出すが、令次は納得したように頷いた。
「そうですか…それが連さんの考えなら、俺は止めません」
「令次まで…」
「ですが…もし…また、首都高サーキットに戻ってくるときがあれば…俺達はいつまでも待っています」
その令次の言葉に、岸もあきらめたようだ。
「そっか…でもまぁ、連と一緒に走ったこの数ヶ月間は楽しかったよ」
「そうか?」
「ああ。寂しくなったり、首都高が恋しくなったりしたら、いつでも戻って来いよ。……僕、待ってるからさ。NSXと一緒によ」
「…すまないな、2人とも…俺のわがまま、聞いてくれて」
こうしてまた、1つの新たなチームが首都高サーキットに誕生することになるのであった。
その後、首都高でメンバーを募った際、穂村浩夜、ハイレベルミドルボス、ハイレベルゾーンボス、
湾岸線、横羽線のミドルボスとゾーンボス、ビッグボスの奴らはチームには参加しなかった。
浩夜は「チームは幅を利かせている様で、何だかそう言う考えをする令次には、ほとほと幻滅したよ」と、令次に反発して首都高を降りて行った。
本業のロックバンドに打ち込みたいのもあるそうだ。
ビッグボスの連と孝司はそれぞれ引退するのと、腕を磨きにサーキットに行く言う事で理由はもう決まっている。
他のハイレベルボス達もそれぞれ何かしらの理由があるようで、全員首都高を降りて行った。
令次のチームの方は高崎和人、稲本 明、栗山祐二、遠藤 真由美が、他の排気量クラスのボスにも声をかけてくれた。
そして最終的に集まったメンバーは、令次と岸を入れて14人となった。
そしてこの後、この14人の集団は令次をリーダーとし、その令次を抜いた人数の13人でこう名づけられることになる。
「サーティンデビルズ」と。
そしてそのリーダーである令次は、こう呼ばれるようになった。
「迅帝」と。
第0.5部 完