第1部第16話


今日はもう疲れたので、倉庫に戻るため近くのランプで降りる京介。

と、帰り道。路肩に停車している3台のマシンを発見。

それはよく見ると、先ほどバトルした3台のマシンではないか。京介はその後ろに停まる。

「あ、あのう…」

「んあ? 何だいあんた…ああ、さっきのポルシェの?」

水色と茶髪のロングヘアーの男が話しかけてきた。続いて他の2人も顔を見せる。


しかし…1人不思議ちゃんがいる。

某ロボットアニメの、あの大佐の格好をしているではないか。それに何故か頭は紫。

そこは金だろ…と京介は思いつつ、とりあえず何があったのか訪ねてみることに。

「何か…あったんですか?」

「ああ、僕のソアラが…エンジンブローしたんだよ」

どことなく気の弱そうな童顔の男。この男はさっきのソアラのドライバーらしい。


「あーあ。とりあえずハールの家まで、俺のコスモで引っ張って行かなきゃなー」

さっきの白い車はコスモというらしい。そのコスモのドライバーはロングヘアーの男。

残る不思議ちゃんは紛れもなく。R34のドライバーだろう。



まずはソアラの男が口を開く。

「ああ、僕はハール・ドレンジー。よろしく」

「どうも。俺…何か悪い事したみたいですね」

「いや、ブローは僕の責任だ。これを機に新しい車にでも買い換えるよ。中古のエンジンに載せ替えてこのソアラを売って、その金でね」

「そうか…ところでこの車、見たこと無い車だな?」


その京介の質問に対して、ロングヘアーの男が口を開く。

「ああ、マイナー車だからな。これはマツダのユーノスコスモ。あまり知られてないけど、一応3ローターのエンジンを載せているんだ」

「3ローター…どおりで速かったわけだ」

「あ、紹介が遅れたな。俺は橋本 信宏(はしもと のぶひろ)。元プロのレーシングドライバーを振り切るとは、恐れ入った」

「プロですと?」

「ああ、この人は僕が憧れている人なんだ。現役時代からずっとね」


しかしそのハールの言葉に、信宏は首を横に振る。

「何を言ってるんだよ。君のほうがもう実力があるんだから、素直に…」

「いえ、僕にとってあなたは永遠の先輩です」

(永遠の先輩…か)

そこまで慕っていると言うことは、よほど憧れているんだろうな、と京介は感じていた。



「おい…俺は無視?」

不思議ちゃんが口挟んできやがった。京介はダルそうに口を開く。

「あんた…それは酷いぞ」

「HAHAHA! 何をバカなことを!」

(もう末期だな…)

どうしようもない、と思いながら、とりあえず自己紹介。

「宝条京介だ。あんたらは一体?」


京介が自己紹介すると、3人の目が変わった。

「…君が…僕ら十二覇聖に挑んできている宝条って人?」

「どおりで速い訳だ。俺のコスモは加速重視だったからいけると思ったんだが、甘かったか」

「君が京介って言うのか。俺は白井 永治(しらい えいじ)。ハールは嘆きのプルート、信宏は無冠の帝王、俺は紅の悪魔だ」

やはり、十二覇聖だったらしい。


「ところで…後倒してない十二覇聖は…4人ですかね?」

指を折りながら京介が数えてみる。

「そうだな。後の4人の内1人は横羽線を走っていれば、その内出てくると思うぞ」

「わかった、ありがとう。敵の前でこんなこと言うのも何だけど、俺、負けないからな」

「ああ、俺等も応援してる」


「それじゃ、僕らはこれで…」

3台のマシンは闇の中に消えていった。京介もポルシェに戻り、今日はもう倉庫に戻ることにした。




3日後。横羽のチームとバトルしまくって名をあげていく京介。そんな京介に残る十二覇聖が襲いかかってきた。

まずは白いZ32フェアレディZ。タービンの音が凄い。

(さあ…かかってこい!)

ハザードを点けて加速。

グッとアクセルを踏み込み、250キロを突破。しかしZ32も離れない。空力が良いことを武器に食らいついてくる。

(さすがに食らいついてくるな。あまり長引かせるときつそうだ)

バックミラーでちらりとZ32を見て、横羽線を上り方面に駆け抜けて行く。


そして昭和島ジャンクションまでもうすぐ、といったところで京介はスパートをかけていく。

今まで以上に他の参加者の横を、キレのあるハンドリングとブレーキングですり抜け始めた。

Z32も食らい付いて来るが、じりじりと引き離されてしまう。

そして昭和島ジャンクションに向かうころには、すでにZ32はミラーの彼方へ消えていた。



(はあ、何とか振り切ったか)

一息ついて昭和島ジャンクションへ。ここから湾岸を上って帰る…つもりだった。


だが後ろから追いかけて来た1台の車が。それは赤いランエボ5。

(…あ? 十二覇聖の奴か?)

ランエボはパッシングしてきたので、京介は応じてアクセル全開。


湾岸上りを駆け抜け、バックミラーを覗いてみた。

そのランエボは、遥か遠くに霞んでいた。




近くのランプで降り、ジュースを買って休憩タイム。そんな京介のポルシェの後ろに、2台のマシンが停車した。

1台はさっきのランエボ。もう1台はその前にバトルした、白のZ32。


Z32から降りてきたのはやたらガタイの良い外人。

ランエボのドライバーは、赤とオレンジの髪が印象的な男。

「速いなぁ…勝てそうな相手だと思ってパッシングしたんだが、あっさり振り切られるとはな」

ランエボの男はがっかりした様子で、京介に話しかけてきた。

「あ、俺奥寺。奥寺 功太(おくでら こうた)。よろしくな」


続けてZ32の男も京介に話しかけてくる。

グレイル・カルスだ。他の走り屋から話は聞いた。確かに強いな?」

「そうか。これで十二覇聖は…後2人か」


しかし、それを聞いた奥寺はぶんぶん手を横に振った。

「いやいや、俺は違うよ! 俺はただの、ここの走り屋のはしくれだ!」

「あ、そうなの?」



そんな2人を横目で見つつ、グレイルが次の十二覇聖の情報を京介に伝える。

「次の奴は、あの迅帝の師匠だな。車はR32GTーR。紫だから目立つぞ」

「そうか。ありがとう。それじゃな」

「ああ、じゃあな」

「グッバイ!」


いい情報を京介は手に入れた。

残る十二覇聖は、後3人――――――。


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