第0.5部第10話


浩と健太郎とのバトルから数日後。ついに新環状線の、ハイレベルミドルボスに遭遇した令次。

新環状左回りで、紫のY34セドリックがリーダーのチームを倒し、銀座線に合流。

するとバックミラーに別の青いセドリックが近づいて来て、パッシングされた。


ハザードを消しバトルスタート。セドリックは後ろにピッタリ張り付いたまま離れない。

ボディの大きさも相まって、少し令次は息苦しさを感じていた。

(何だか圧迫感を感じるな)

とりあえず張り付かれたままなのは嫌なので、アクセルを踏み込んで引き離しにかかる。

しかし、後ろのセドリックは強引に抜きにかかってきた!

(あ、危ない!)


しっかりブロックして、お得意の銀座線の橋げた区間で左へ入ると見せかけて右へと入り、

左の通路でセドリックをアザーカーに詰まらせて、その間に思いっきり引き離してSPを削り取り、勝利した。



更にその数日後。今度は新環状線右回りで180SXのチームリーダーを倒すと、後ろからまた180SXがパッシングしてきた。

どうも何だか、同じ車と立て続けにバトルする展開だな、と、令次はR34の中で苦笑いをもらす。


しかし、その180SXは加速力が凄かった。派手なエアロに真っ赤なボディと、見てくれだけだと思ったが、やはりハイレベルゾーンボスとだけあって中身も凄い。

最初の加速でR34を抜きにかかろうとする180SXだが、令次もお得意のブロック戦法で前に出そうとはしない。

だが軽い180SXに対しては、コーナリングで負けてしまいそうだ。ならどうするか?

(軽さから来るコーナリングが、武器にならなければ良い…!)

そう考えた令次は、新環状線右回りへと戻らず、13号地方面へ。

後ろの180SXも追走してきたが、やはり2リッターシングルターボと2.6リッターツインターボでは、最高速の伸びが違う。

180SXのセッティングは新環状線向きのセットアップのためか、300キロを越えた時点でスピードが伸びなくなってきた。


令次はR34のギアをしっかり6速まで使い、180SXを1度も前に出さずにじりじりと引き離して勝利。

勝てば官軍、だ。



13号地のジャンクションで横羽線へと行き、環状線方面へと走って首都高サーキットを下りる。

すると、そこには1台の車が停車していた。

よく見るとそれは、この前バトルした青のY34セドリックだった。

そのセドリックの横には、なにやら本を片手に持っていたが、手が滑って本をR34の前に落としてしまう。

「おわっ!?」

それを見た令次は急ブレーキ。何とかギリギリ本を踏み潰さずに済んだようだ。


セドリックのドライバーも慌てて本を拾い、令次のR34に声をかけてきた。

「す、すみません、大丈夫ですか?」

「…え?」

よく見ると、何とその男は外人だった。結構流暢な日本語で話しかけてくる。

「だ、大丈夫でしたけど…ミドルボスの方ですか?」


すると、外人の顔が変わった。

「え? あ、はいそうです。俺、ハクロ・ディールって言います、よろしく。…あなたは…」

どうやら本当にミドルボスだったらしい。そして令次のR34にも気がついたようだ。

「R34の人ですね? よろしくおねがいします」

「よろしく。宝坂令次です」

「令次さんですか。日本は良い所ですね。けどニュージーランドも良い所なので、ぜひ来てくださいね!」


とりあえずここに停まっていては邪魔なので、R34をセドリックの前へと停車させる令次。

だがその時、遠くから今度は別のエンジン音が聞こえてきた。


そして目の前に現れたのは、さっきの180SXだった。

その180SXは2人の後ろに停まり、中からは赤髪の男が降りてきた。

「悪い悪い、ディール、お待たせ…って、あれ? あんたさっきの…?」

「あ…ゾーンボスの180SXの方ですか?」

令次の方も目をぱちくりさせている。


そんな2人を見て、ディールが口を開いた。

「この人は知り合いで…えーと、確か…ヨウスケ?」

「そう。俺は橘 陽介(たちばな ようすけ)。あんたは?」

「宝坂令次です」

「令次か、よろしく。…でも、湾岸線じゃ勝負になんねーよ!」


若干切れ気味の陽介だが、ディールはその発言に目を丸くさせる。

「湾岸線で勝負したの?」

「いや、台場の方に行くかと思ったら、その人は湾岸線方面に行ったの! 俺の180SXは確かに、限界までパワー出してるけど

300キロまでしか出ねーよ。まったく…理不尽というか」

「まぁそれはしょうがないんじゃない? 別にゾーンボスとも言えども、必ずしもそのゾーン「だけ」でバトルしろ、なんて決められているわけじゃないんだし」

何とかディールが陽介をなだめ、これで新環状線も制覇だ!


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