第0部第6話


近くのPAへと入ると、後ろのRX−7もそのままついてきた。

隣同士で駐車し、連がR32から降りるとRX−7の女も降りてきた。

「こんばんは」

「ど、どうもこんばんは…」

長い赤髪に、切れ長の緑の瞳が印象的だ。美人…なのかは人による。


すると、女が先に口を開いた。そしてその言葉は連をびっくりさせる。

「椎名 連さん…ですよね?」

「え? ああ、そうですけど…何故俺の名前を?」

「藤尾さんを倒したって話はあっという間に広がりましたから。私はここには少ししか顔を出せないんですけど、

それだけの知名度があるって事ですよ。あ、私は三浦 由佳(みうら ゆか)です。よろしく」

「よろしく…。12時過ぎのシンデレラ……で良いんですかね?」

「はい。家の生活は窮屈で。それでストレスがたまるから、12時過ぎに少しだけしか顔を出せないんです。

それじゃ、私はこれで帰りますね。今日は楽しかったです」


そう言い残し、RX−7に乗り込もうとした由佳だったが、何かに気がついて動きを止める。

「あ、そうだ。大事な事言うのを忘れてた」

「はい?」

「次の四天王のことについてです。私よりももう少し遅い時間に来てるって話です。

私も実際に会ったことは無いんですが、かなり速いそうですよ。銀色の車に乗っているそうです」


銀色の車…首都高には街灯があるため、反射すればそれはさぞかし綺麗だろう。

神秘的な光景になるかもしれないな、と思いつつ、連はR32を加速させる。

手を加えられたR32はパワーも上がり、ブレーキもよく利く。

その半面、スピードが上がるためにハイスピードからのブレーキングが難しくなるため、手探りでブレーキングポイントを探り出していく。

(重要なのは、自分で考えることだ。人に頼ってばかりじゃダメだ!)

連の中で、何かが目覚めようとしていた。



「沢村さん…俺、やっと気づきましたよ…」

翌日、連は沢村に深々と頭を下げて謝罪。沢村も納得してくれたようだ。

「まぁ…いい。若い内の過ちなんて、そんなものだ」

何とか沢村との関係は続けられそうなので、連は一安心。


次の目標は由佳の言っていた次の四天王。ライバルリストにはまだ埋まっていないライバルが沢山。

なので倒していけばそのうち出会えるであろう。

しかし、後半に行くに連れてやはり速くなってくるのか、ライバル達もRX−7、スープラやNSX、

GT−R、ランエボやインプレッサなどが続々と出現してきた。

今のR32でどこまで行けるか…と言うことで考えれば楽しいが、連も人間。

紙のように薄っぺらいが、プライドがあるのでなるべくなら負けたくはない。


ライバルリストの埋まり具合は現在65人。前から比べると確実に遅くなっている。

それというのも、ギリギリの所で振りきられたり、ライバルがオーバースピードで分岐を違う方向に

行ったりしてしまうことがしばしばあるために、なかなか埋まらないのだ。

そこで、短期決着を目論むために沢村にカスタムを連は願い出た。

「そうか…やはり辛いか」

「ええ。このままだとドラテクより、車が負けているといった感じでして…」


そこで沢村が提案したのは、ギリギリまで加速重視にセッティングをすることと軽量化。

環状線で300キロを出す必要など無い。

280キロも出ればかなり速い部類に入るため、5速全開で270キロ出るようにギア比を調整。

後はフロント周りを軽量化するために、ノーマル形状のFRPボンネットを装着。プラスチックなので今までより数倍軽い。

GT−Rの弱点は、フロントヘビーなために起こりやすいプッシュアンダーステア。

だったら、出来る限りフロントを軽量化することだ。

それに加えて、軽量化をすればボディがもろくなってしまうため、ロールバーやタワーバーで補強。

シルビアの時と同じように、出来る限り車重を落とすのだ。


3日かけてカスタムを完了させ、早速内回りへと飛び出していく連。

かなりコーナー脱出時の加速が良くなり、ミスをした時もすぐに加速体制に入れるようになった。

トップスピードは伸びないものの、フロントと内装を軽量化したおかげでキビキビとしたコーナリングが可能になる。

さすがにハチロクやシビックみたいな、切れの良いコーナリングは無理だが。

バトルでも立ち上がり加速と速くなったコーナリング性能を活かし、勝てなかったライバルにも勝てるようになる。

リストも1週間で80人まで埋まって行った。



そんな折、インプレッサばかりのチームリーダーを倒した後のことだった。

いきなり後ろから、パッシングの光が浴びせられる。自身のR32とかぶるエンジン音。

(RB26DETTの音…GT−Rか)

だが、その横に並んできた車を見た時、連は凍りついた。

(銀色の…R32GT−R?)

銀色のR33なら見かけたことはあるが、R32は初めて。しかもかなりゴツイエアロがついている。

(まさかこいつ!)


「次の四天王のことについてです。私よりももう少し遅い時間に来てるって話です。

私も実際に会ったことは無いんですが、かなり速いそうですよ。銀色の車に乗っているそうです」


由佳の情報にぴったりと一致するこのR32。間違い無い。このR32は四天王だ。

同じR32同士とあれば、ますます負けるわけには行かない。

連はハザードを消し、アクセルを踏み込んだ。加速力はやや銀色R32が上だ。

最初は先行を許す連だが、果たしてコーナーは…。


(コーナーは互角か!)

アザーカーがいない場所では目いっぱい道幅を使ってコーナリングする銀色R32。

対して連はアウトいっぱいからイン側に向かって切り込み、立ち上がり重視のコーナリングで喰らいつく。

(この先の銀座で、奴がどう動くかだな!)

汐留S字カーブでも互角の2台。直線では奴が有利だ。


トンネルS字コーナーを抜け、由佳のRX−7を立ち上がりで抜いたS字コーナーでまたもや仕掛ける。

進入でイン側に寄っている銀色R32に対し、連はアウト側から進入。

しかし、銀色R32は最初の左を抜けたときにアウトに膨らみすぎてしまい、フルブレーキ。

なぜなら次の右コーナーのイン側には、アザーカーのDC2インテRがいたからだ。

(よしチャンス!)

ここで思わぬラッキーが舞い込んできたために、連は左側からR32をパス。

しかしその後の直線で銀色R32は、連のR32のテールを思いっきり突付いて来た。

(うわ!?)


かなり荒っぽい運転をするようだが、前に出てしまえばもうこっちのもの。

次は銀座名物橋げたコーナー。

ここで前を走っていたランクルとハイエースの走り屋を追い抜いて、連は何とか突破。

しかし銀色R32にはプッシュの罰が当たったのか、前方の橋げたコーナーでその2台の走り屋に道を塞がれ詰まってしまう。

ここで一気に突き放し、SPゲージを全て搾り取って勝利した連であった。

(あー怖かった。運も実力の内、か)


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