第8部第13話


恵と孝司とのバトルから数日後。

瑞穂は残りの倒していないライバルを倒しつつ、新環状へと向かった。

(はぁ……ここら辺はあらかた倒したかな)

RX−7にもすっかり馴染み、これで迅帝とも戦えそうだ。


だが、ここでは物凄い鷹目GDBインプレッサに遭遇。

瑞穂は某ロボットアニメは結構見ていただけに、インプレッサを目を丸くしてまじまじと見つめる。

その某ロボットアニメを思い出させるような、真っ赤なボディにロケットのようなディスプレイ、

そして極めつけはサイドミラーに角、更にボディのサイドにはミサイルが装備。

物凄いオーバーフェンダーのおまけと来ている。


ああもうこいつは手に負えない、と思いながらも、ハザードを消していざRXー7で

インプレッサと共に走り出してみると、インプレッサのその速さにびっくり。

3倍速く……はならなかったが、それでもインプレッサの圧倒的なその加速力に、

更に瑞穂は驚きだ。ニトロを噴射しても追いつけない。


新環状右回り、レインボーブリッジの上からスタートしたバトルだったが、

瑞穂はその先の高速右コーナーでインプレッサをパス。

あれだけごちゃごちゃついていればそれは重いだろう。

その先の高速S字コーナー、さらに環状線内回りへ入り、ハイスピードで

汐留S字を駆け抜ければインプレッサはバックミラーから消し飛んでいたのであった。



恵や孝司と会話したPAへ入り、精神的に疲れたので休憩を取る。

だがあろう事か、さっきのインプレッサがここにやってきた。

(うえ……)

こんなのがあのスピードで走っているのか……と頭が痛くなった瑞穂だったが、

そのドライバーを見て更にびっくり。その搭乗主のコスプレをしている。

更にこっちに向かって歩いてきた。

(頼む…こっち来るな!)

瑞穂の表情は変わらないが、内心では今すぐにここから逃げ出したい。

真っ先に逃げ出したい気持ちで一杯だ。


だがそんな思いとは裏腹に、コスプレ野郎に話しかけられた! 最悪だ!

「どうしたあんた? 表情が暗いぞ?」

それはあんたのせいだよ、と言いたくなったが、言っても仕方ないので瑞穂は冷静に流す。

「いえ、大丈夫です。初めまして、早瀬です」

「瑞穂……ね。俺は白井 永治(しらい えいじ)だ、よろしくな。

ところで聞いて欲しいんだが、ディスティニーについて……」


その後、PAでは3時間にも及ぶ某ロボットアニメの講義が永治から瑞穂に行われた。

精神も体力も使い果たした瑞穂は、疲労困憊のまま家に帰るのであった。



そして数日後。某ロボットアニメの夢にうなされていた瑞穂の元に1本の電話がかかって来た。

電話の相手は令次だった。

「どうも……令次さん」

「どうした? 何か疲れ気味だな」

「ええ……ちょっと嫌な夢を見ていたもので」

「そうか。すまなかったな。かけなおすか?」

「いえ大丈夫です。もしかしてブランクが埋まったんですか?」

「そう言う事だ。今夜午前2時、渋谷PAで待っている。それじゃな」


それだけ言い残し、令次はさっさと電話を切ってしまった。

「うあ……行くか……」

某ロボットアニメにうなされるのはもうこりごりだ、と呟きつつ、

瑞穂はRX−7のキーを持ってガレージへと向かった。


早い時間からメカニック達と共にセットアップを繰り返し、昼間の富士スピードウェイを

走りこむ瑞穂。最後に迅帝に勝つためだ。

これがラストバトルとなるであろう。

昼間から夜までみっちりと富士スピードウェイで走りこみ、瑞穂は首都高サーキットへ向かった。



瑞穂が渋谷PAにたどり着くと、そこには派手な鷹目の青いGDBインプレッサが待っていた。

(またインプレッサか……)

数日前のことを思い出し、嫌な思い出がよみがえってくる。

しかしそれを必死に首を振って打ち消し、そのインプレッサの元へ向かった瑞穂。

そのインプレッサの前に、令次が現れた。


「ついにこの時が来たな―――。初めてお前に会った時から予感していたよ。

俺か、お前か……この場所で最速の称号を得られるのは1人だけだ

その目でしっかりと見届けてくれ。お前に出会ったことで取り戻した俺の走りを―――」

「僕も令次さんと一緒に走って来て、楽しかったですよ。……今回はインプレッサなんですね」

「そうだ。R34は高くて手が出せなかった。だが……俺は負けない」


勝負はタイムアタックバトル。

渋谷線からC1外回りへ行き、そのまま新環状線右回りへと入って少し進んでゴールとなる。

(最後のバトル……行くぞ!)

最初はニトロを使って先行しようとしたが、令次のインプレッサは加速力が達也のスープラ並にすごい。

達也の時と同じ展開になりそうだ。

パワーアップしてはいるが、それでも少しずつ離されて行くRX−7。

じっと我慢して、達也の時と同じく後半で勝負をかけるべきだろう。

途中でニトロを使い、スピードを極限まで上げて加速する。

(プロレーサーとして、この先へ進むためには令次さんに勝たなきゃ……!)

渋谷線を抜けるまではじっと我慢の走り。


渋谷線を抜け、C1外回りへ。ここからが勝負所だ。じわりじわりと、

確実に差を詰めて行く瑞穂のRX−7。

コーナーではホイルスピンを抑え、しっかりアクセルコントロール。

立ち上がりでもむやみにアクセルを踏まず、冷静に落ち着いて加速。


千代田トンネル出口の右コーナーを上ると……インプレッサが居た!

(見えた…!)

ここから瑞穂の怒涛の追撃が始まった。コーナーと言うコーナーをハイスピードで駆け抜け、

令次に追いすがる。高速コーナーとアップダウンが同時に襲い掛かって来るのを、

何とかRX−7を安定させてコーナリング。

少しずつインプレッサが大きくなって来る。

その高揚感から来る焦りを必死に押さえ込み、確実に1つずつコーナーをクリアする。

(大丈夫……追いつける!)


コースは残り少ない。もう追い抜かなければ。

このあたりで抜かなければいけないと思い、仕掛けるのは新環状線への分岐に入った所だった。

そこは連続で2つ、右コーナーが襲ってくる。しかも2つ目はきつい。

分岐の入り口は下りなので、そこで少しジャンプするRX−7。

そして着地と同時にブレーキングし、シフトダウン。

目の前まで迫ってきたインプレッサのテールに張り付き、2個目のブレーキングを

突っ込み重視で行う。


アウトまで膨らんで立ち上がる令次に対し、瑞穂はインベタ気味にタイトに立ち上がる。

そこで残りのニトロを噴射。

(いっけえ!)

立ち上がりでインプレッサをかわし、そのまま新環状線のコーナーを駆け抜け

ゴールまで突っ走った瑞穂であった。



「さすがだ。経験を積む程に速くなる……。お前はもう俺の手が届かない

領域まで行ってしまったようだな」

「や……やった!」

辰巳PAで歓喜の声を上げる瑞穂。首都高最速となり、目的は達成された……かに見えた。


だが令次から驚きの一言が。

「いずれ首都高の伝説と対決する日が来るだろう。その時までしっかり腕を磨いておけ」

「え? そ、それって……!?」

だが令次は瑞穂の言葉を最後まで聞かず、インプレッサに乗り込んでPAを後にしたのであった。


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