第7部第12話
汐入では、久しぶりに外人のドライバーと遭遇した。こいつもサーティンデビルズのメンバーだそうだが、
車がすごいことになっていた。
白のGDBインプレッサだが、何と痛車。ボンネットに少女の絵が描かれている。
正樹自身はあまりゲームをするほうではないので、元ネタが何なのかはわからないのだが。
この車と一緒に走るのか、と思うと、少し不快感が沸いてくる。
「ハイ、こんばんは。僕はハール・ドレンジーといいます。よろしく」
「山中正樹だ」
最初は4WDのインプレッサが、加速で先に抜け出したスープラを後ろから抜き去る。しかしその後の加速はあまり変わらないようだ。
(ふむ)
あんな車に乗って恥ずかしくないのか、と思う正樹だったが、勝負は勝負だ。
決着はあっけなかった。緩いコーナーで少しずつ追い詰めていき、あっさりとインプレッサをパス。
そのまま最高速でも引き離し、汐入を駆け抜ければもうインプレッサなど、どのミラーにも映っていなかったのであった。
最後はみなとみらい、横浜環状線だ。ここではまた変なマシンに遭遇。
外見がまるで戦車のようにゴテゴテして、明らかに重量物ですよと言っているような、ランエボ8に遭遇。
しかも色が迷彩色ときている。
それに乗っていたドライバーは「ハードウェポン」。
「こんばんは。栗山 祐二(くりやま ゆうじ)だ。お手柔らかに」
「山中正樹だ。よろしく。…この車、走れるのか?」
「む…失礼だな。走れるさ! 何で俺がこんなペイントをしているかって言うとだな……」
栗山は元傭兵で、各国を転々と渡り歩いていたというのだとか。
それが元で、ナイフやモデルガンを集めるのを趣味としている。それが高じて、エボ8もこんな感じにしてしまったのだとか。
「まー、外見はこんなのだけど、俺は速いぜ?」
「そうか。楽しみにしている」
加速はハールのときと同じく、スタートで抜き返されてしまった。重量物の割には速いようである。
加えて、コーナーの突っ込みが恐ろしい。
ブレーキングはギリギリまで突っ込み、壁ギリギリを掠めてコーナリング。
しかしよく見ると、減速しきれていないような感じがする。
(…まさか)
まさかとは思うが、あれだけパワーが出ているエボ8でそんなことが…と思い、もう少しだけ様子を見ることにした正樹。
だが、その予想はやっぱり外れてはいなかったようだ。
コーナーの突っ込みが明らかに、早めにブレーキングして来ている。あのブレーキはほとんど改造されていないようだ。
(…よし)
とりあえず今はこのまま抜かずに我慢。プレッシャーをかけてみる。
(プレッシャーをかけてるようだが、俺を抜けるもんなら抜いてみろ!)
それでも、傭兵だっただけあってか、あまり動揺している様子は見られないようだ。
高速コーナーではスープラが差を詰めているのだ。
(早めに仕掛けておかないと、自爆に巻き込まれそうだな)
正樹は早めに栗山を抜いてしまうことにした。
栗山のエボ8はフルブレーキングして突入するが、明らかにブレーキが足りていない。しかもハンドルを切った時に若干ふらついて外に流れた。
(ちぃっ! ブレーキがノーマルじゃきついのか!?)
若干アンダーを出して流れた栗山のエボ8に対し、しっかりグリップ走行で正樹はインから追い抜く。
…勝敗は決した。