第7部第11話
環状線では、その日はそれ以上サーティンデビルズは見つけられなかったため、
今度は横羽線方面へスープラを走らせる。
まず芝浦で出会ったのは「死神ドライバー」。車種は黒のS15シルビアだ。
そしてそのドライバーは、顔に大きな傷があった。それも2つもだ。
「やぁ、どうも…藤尾 精哉(ふじお せいや)だ」
「山中正樹だ」
「由佳と博人から話は聞いたよ。あいつらは首都高の四天王って呼ばれていた。そしてこの俺もな。本気で行くぜ」
四天王という言葉に一瞬表情を変えた正樹だったが、シルビア相手ならそんなに苦労はしなさそうだ。
スタートで正樹は先行。
グッとアクセルを踏み込み、250キロを突破。
しかし藤尾も離れない。シルビアの空力が良いことを武器に、食らいついてくる。
(さすがに食らいついてくるな。あまり長引かせるときつそうだ)
バックミラーでちらりとシルビアを見て、横羽線を下り方面に駆け抜けて行く。やはりパワーの差はでかい。
いくらシルビアがパワーを出していようが、限度がある。
そのシルビアも食らい付いて来るが、じりじりと引き離されてしまう。そして羽田PAに向かうころには、すでに藤尾のシルビアはミラーの彼方へ消えていた。
羽田のPAでは、またもやS15シルビア、しかもまた女のドライバーに遭遇した。
この白いシルビアは「ユウウツな天使」と呼ばれているらしい。
「初めまして。飯田 恵(いいだ めぐみ)と申します。FR車ですか…いいですね」
「山中正樹だ。よろしく」
恵はFR車が好きなようだ。
この恵のシルビアは、藤尾のシルビアと同じく加速重視。
藤尾のシルビアよりパワーは出ているようであったが、最高速では正樹のスープラが上である。
最初こそ加速で前に出られたものの、正樹もぴったりとついていく。
そしてシルビアのスピードが伸びなくなってきた頃、正樹の反撃が始まった。
シルビアにアウトから強引に並んで、そのまま左コーナーに突入。ここでシルビアは減速したため、アウトからでも強引に前に出られた。
減速したシルビアを尻目に、正樹は一気に恵のシルビアを振り切る。
正樹の振り切り勝ちだ。