第7部第4話
新城と牧を倒してもらった金で、更にエンジン関係を改造する正樹。
各上のマシンにも、結構直線でついていけるようになった。その上ニトロを積み込み、これで前を取ることも楽になりそうだ。
早速それをチームのナンバー3とのバトルで試す。
相手は新型レガシィB4だが、スタートでニトロを噴射すれば、何と前を取ることに成功。
ただし限りがあるので、コーナーの立ち上がりでは使わず、直線に入ったところで使うという作戦で、ナンバー3の座をゲットしたのであった。
チームバトルも正樹は勝てるようになって来た。いい調子である。
ただ、まだこれではリーダーのアルテッツァには勝てなさそうである。後いじるところといえば、外装系のほかに…。
(軽量化…)
フルエアロを組むよりも、まずは軽量化をすること。軽量化は加速、減速、コーナリング、全てにおいて、地味ではあるが絶大な効果をもたらしてくれる改造だ。
京介に頼みっぱなしでは無く、自分でインターネットのサイトを回り、セリカの内装をどう取り外したら良いかという事を
きちんと調べ実践する。リアシートやオーディオ関係を全て取り外し、バケットシートも買ってきた。
と言っても中古品ではあるが、無いよりはましだろう。
これにより約20キロの軽量化に成功した。
その後、ナンバー2とのバトルにいよいよ挑む。相手はナンバー3と同じく、スバルのレガシィB4。
4WDターボで、あのラリーで活躍しているインプレッサと同じ。強敵だ。
だが、スタートは正樹が好きなタイミングで切れる上、ニトロを使って先行することに成功した。
そして早くも軽量化の効果が現れる。コーナーではかなり奥まで突っ込めるし、コーナリングのスピードも上がっている。
直線では差を詰められるが、その分をコーナリングとブレーキングで引き離していく。
その走りで何とか、ナンバー2の座をゲットすることに成功した正樹であった。
翌日。ついにチームリーダーから挑戦を受ける正樹。
チームリーダーとして、このまま黙って見てる訳には行かなくなったのであろう。車は黄色のアルテッツァ。かなり速そうだ。
コースは環状線内回り、芝公園区間だ。
最初のスタートダッシュではFFにもかかわらず、ニトロを使って正樹が先行。
通常、FF車であるセリカは全駆動方式の中でいちばん加速力が悪い。それでも先行できたのは良かった。
しかしリーダーも負けてはいない。アルテッツァのパワーを活かし、セリカを追い詰めていく。
直線ではしっかり詰めるが、連続シケインでは引き離される。
(流石、リーダーだけのことはある)
セリカのバックミラーをちらりと見て、またすぐ前に視線を戻す正樹。
勝負は難関左コーナーで、少し正樹がリーダーを引き離し、最後の汐留S字へ。ここで正樹はいい突っ込みを見せる。
リーダーのアルテッツァもついてこようとしたが、FRのために突っ込みで挙動が不安定になる。
それで加速が鈍ったまま、コーナーで仕掛けることが出来ずに正樹が逃げ切り、正樹はついにチームリーダーになったのであった。
チームリーダーになると、他のチームへと今度は攻め込んでいかなくてはならない。
しかし攻め込むためには、「支配率」と呼ばれるものがある。
「支配率」とは攻め込むエリアのPAの中に、これから攻め込むチームのメンバーがどれくらいいるか、ということだ。
それを下げるためには、そのチームのメンバーと戦って勝つこと。
そしてその支配率競争は、競争相手のチームもしてくるので注意が必要である。
支配率が半分以下であれば、攻め込むことが出来る。
「そうか、リーダーになったのか」
「はい、おかげさまで」
京介にこのことを結果報告に行く正樹。しかし、その京介の口から意外な言葉が出てきた。
「でも…このセリカだと、この先の新環状エリアを勝ち抜くのはきついな」
「え?」
「車を買い換えてみないか?」
何と、買い替えの提案をしてきた京介。しかし、今の自分にそんな金は……。
「金なら、そのセリカを売って作れば良い。それに、知り合いの中古車だからな。
結構安く手に入るんだ。メンテナンスは俺が引き受ける。パーツも流用できるものはこのセリカから全て移植する。
別にセリカにこだわっているわけでも無いだろ?」
それは確かにそうだ、と正樹は思う。
実際速い車であればなんでも良い。セリカを選んだのだって、買うときの資金でいちばん性能がいいと思って選んだだけなのだ。
「それで、その車は何なんですか?」
「車か? RX−8だ」
「え…?」
RX−8といえば、マツダの変形4ドアスポーツカー。確か最上級スポーツグレードの「タイプS」は、250馬力をカタログで発生している。
それでも実際は、170馬力くらいしか出ていないそうだが。
「…解りました」
「よっし、なら決まり。とりあえずさ、今まで正樹がバトルで稼いだ金、すべてくれるか?」
「はい」
という訳でセリカからワンステップグレードアップし、RX−8に乗り換えることになった正樹。
納車までの間は雑誌などを買ってきて、レーサーのインプレッションを見たりして、どんな走り方がRX−8に求められるのかを研究する。
FFからFRに乗り換えることもあって、かなり運転にも違いが出てくるだろう。
サーキットでの走り方をそのまま、この首都高サーキットでやってしまうような正樹だからこそ、事前の研究は必要だ。
そして3日後。ついにRX-8が納車された。連絡を受けた正樹は早速、京介の整備工場に取りに行くことに。
「よう、来たな」
「RX−8は?」
「ああ、あれだ」
京介が指差した先には、確かに赤く輝くRX-8が1台。元から少しだけ手が加えていたらしく、マフラーが交換され、
しかもマツダスピード製のエアロパーツがついている。
「こういう車って結構荒れているんだけど、そこら辺はしっかり整備しておいた。バケットシートやステアリング、ニトロはセリカから移植しておいたし、軽量化もした」
「ありがとうございます。あ、代金は…」
「バトルに勝つことで金が手に入るんだったら、それで残りを支払ってくれよ」
そういうところは抜け目が無いな、と思う正樹であった。
チームリーダーとなり、強力な車、RX−8も手に入れた。
セリカとはやはり加速が違う。加えてエアロパーツがついているため、高速コーナーでも
車が不安定にならないのは安心感があっていいことだ。
リーダーとなった正樹は、まずは環状線の残りのチームに攻め込んでいく。3チームあるが、いきなり全勝・・というわけには行かなかった。
やはり上手くいかないものである。
そこで、今度は場所を変えて、新環状線に乗り込むことにするのであった。