Calamity to the empire第6話


そうしてディレーディから命令を受けた2日後、エスヴェテレス帝国騎士団員達は

ザドールとユクス主導の下でその山脈へと向かっていた。

意外とこの山脈は傾斜がきつく、騎士団員達はそのせいで動きやすく行動する為に

軽装備にして来るのが常識になっている。

しかも騎士団だけならまだしも、冒険者の間でも重装備はここでは向かないだろうと

言われているのが一般的である位の傾斜のきつさがポイントだ。

だが、それを逆に考えてみれば帰り道の下り坂はスピードが乗りやすい為に比較的

楽に下りて来やすい山脈でもある。


とは言えども、山脈だけあって岩場もあったりして足場が悪い為に下り坂では

その傾斜のきつさが必ずしも有利に働くとは限らないのである。

(流石にこんな所までヘルヴァナール鉄道を通す訳には行かないしなぁ)

副騎士団長のユクスはこう言った場所を迂回して山脈の頂上まで行く事の出来る

線路が欲しいと考えていたが、山脈のど真ん中を列車が通れる訳も無いので夢物語だ。

そんな事をユクスが考えていると、不意に先頭を進んでいるザドールが口を開く。

「……おい、全員止まれ」

「んっ?」


左手を後ろにかざして、後ろのユクスを始めとして連れて来た計20人程の集団に停止の合図を送る。

「どうかしたのか?」

「しっ! ……話し声が聞こえる」

「え?」

険しい顔つきでそう言ったザドールに続いて全員耳を澄ましてみると、確かに小さくではあるが先の方から

話し声が聞こえて来ている。

「皆、武器を何時でも抜けるようにしておけ。用心しろ」

そう言うザドールもすぐにでも自分のハルバードを抜ける様にして先へと慎重に進んで行く。


この先は森の広場になっており、そのまま進んで行くと人影が何十人か見えた。

「……おい、ザドール」

「分かっている。行くぞ」

騎士団員達が森の広場へと乗り込んで行くと、人影達もそれに気がついた様だ。

「何だ、御前等は?」

その人影達はいずれも冒険者の様なラフな格好であり、その中の1人の男……金髪の若そうな男が

騎士団の元へと歩み寄って来る。

しかしその後ろからもう1人の男が飛び出て来て、金髪の男を止めた。

「お、御前達は帝国騎士団!? おい、逃げるぞっ!!」


その止めに入った男……黒髪でザドールとユクスよりも確実に大きな体躯をしている人間が

金髪の男を伴って山頂の方へと逃げようとする。

「逃がすか!!」

ユクスが素早く弓を構えるが、その前に大勢の人間が立ち塞がる。

何となくザドールとユクスの2人も気がついたのだが、どうやらあの真っ先に逃げようとしている2人が

今回の取り引きのリーダー格らしい。

だったらなおさら逃がす訳には行かないとばかりに、帝国騎士団員達もディレーディの予想通りの

大捕り物を山の中で開始した。


周りには武器を沢山詰めた木箱が結構置いてあるので、どうやらここが武器の取り引き現場と見て

もう間違いは無いだろう。

そして自分達が帝国騎士団だと知って逃げて行ったあの2人の男を捕まえなければこの武器の

闇取り引き事件は解決にはならない。

(絶対に逃がさない!!)

その強い思いを胸に適当に斬りかかって来る奴等をいなしながら、ザドールとユクスは

主犯格の2人をそれぞれ手分けして追いかけ始めるのであった。


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