Calamity to the empire第5話


ヘルヴァナール世界の中では新興国として知られているものの、

近年はその軍備増強によって目覚しい進歩を遂げ、急速に

領土拡大をして来たのがこのエスヴェテレス帝国。

そのエスヴェテレス帝国はまだまだ小さな国ではあるが、これからの

発展が期待されている帝国としても知られている。

そんなエスヴェテレス帝国のトップに立つ国主として君臨するのが、

36歳のディレーディ・ジリスフォンだ。


そんな彼が皇帝の座についたのは今から8年前の28歳の時。

まだ宰相がヴァンイストになっていなかった時までさかのぼる。

当時、先代の皇帝が病で倒れてしまった彼には4人の兄弟がいた。

しかし次男の立場であるディレーディには皇帝の継承権が存在してはいたものの、

その上の長男が継ぐと決まっていたのでそこは彼自身も認めていた。

だが、そんな彼の兄は性格が最悪だった。何故なら国の金で豪遊を繰り返すだけで無く、

女と見れば見境無しに城下町で声をかけたりしたりと言う事もあったし、

気に入った女を半ば脅しに近い状況で城へと連れ込んだりと言う問題行動が頻発していた。


となれば当然そんな奴に皇帝の座を渡す訳には行かないと言う連中も当然出て来る訳だし、

わがままで横暴な振舞いと態度には他の兄弟もうんざりしていた。

そこで次男のディレーディに皇帝の座についてもらおうと言う計画が持ち上がった訳であったのだが、

それを察知した兄によって命を狙われる結果になってしまう。

だが、そんな事は当然予測していたディレーディと他の兄弟達は徹底的に兄とその兄側に

ついている貴族達や権力者達に必死に抵抗を試みて、結果的に兄をディレーディは自らの手で

殺害して皇帝の座についた。


しかしディレーディ達も失った物は大きかった。末っ子の弟がまずディレーディを兄の一派の

攻撃からかばった事で殺されてしまっただけで無く、その上の弟が兄の手先によって毒殺されてしまった。

そんな経緯もあり確かに自分が皇帝の座につく事にはなったが、当時は物凄く複雑な心境になっていた。

それでも自分が皇帝の座についた事は紛れも無く事実であり、現実として間違いが無かったので

死んだ兄弟達の分も含めて自分がこのエスヴェテレス帝国を引っ張っていかなければならないと決意。

前の宰相も当時の兄側についていたので兄と一緒に宰相も殺害する事となってしまい、この内乱から

1年後にヴァンイストを迎えての新体制でエスヴェテレス帝国の新たな時代が幕を開けた。


エスヴェテレス帝国の跡継ぎとして、兄弟それぞれに帝王学から始まって時刻の地理や歴史等の色々な

学問を学ばせるだけでは無く、自国以外の国の地理や歴史等も学ぶ事によって他の国々がどう言った

政治をしているか、どう言った経済の流れが各国の間で行われているか等と言う事も学んだ。

また帝王学を学ぶ事によって、国のトップに立つ者としてどう言う人の動かし方をすれば国が良くなるかと

言う事を頭に徹底的に叩き込まれて行った。

だがディレーディはどちらかと言えば身体を動かす事が好きな人間であった為か、そうした学問の出来は

余り良く無く、武術や戦術論等と言うジャンルばかりに目が行っていた。

宰相のヴァンイスト曰く、彼の求める学習傾向はバーレン皇国の現国主であるシェリスと全く変わらない所か、

更に好戦的な面があるのでそのシェリスの上を行くかも知れないとの嘆きがある位だった。


それでもディレーディ自身も武術や戦術だけ学んでいては国が治められないとの自覚はあった様で、

何とか国外に見せられるレベルまで必死に経済学等の学問も習得して行った。

そうして今では一国の主としてエスヴェテレス帝国を引っ張る皇帝ディレーディが国を治めている。

だがやはり根本的に好戦的な面があるのは変わらず、2ヶ月前にこちらから仕掛けた

ヴィルトディンとの戦争で苦汁を舐める結果になってしまったのは、そんな彼自身にとっては絶対に

忘れる事の出来ない苦い過去となってしまった。

武術のレベルに関しては相当強く、ザドールとユクスを同時に相手にしても互角……いやそれ以上の

戦いを見せる所か、時には彼等を打ち負かすまで行ってしまう程のロングソードと弓使いとして有名なのだ。


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