Calamity to the empire第4話
ヴァンイスト・ヘールレイン。32歳。このヘルヴァナールの中では
まだまだ新しい国であるエスヴェテレス帝国の宰相を務めている彼は
日々エスヴェテレス帝国を発展させる為に奔走している。
先代の宰相の死亡によって宰相に任命されたのは25歳の時。
そんな若い男に宰相が務まるのかという不安の声も確かに大きかったのだが、
彼はその宰相になるだけの器を持ち合わせていた。
聡明であり、勉強も運動も出来た彼は皇帝のサポートをすると言う事で
凄いプレッシャーを感じていたのであるが、貴族の出身でもある事から
いがみ合い等も近くで見て来た経験もあって幾らかプレッシャーと言う物には慣れていた。
それでも実際に皇帝を目の前にしてみると、そんなプレッシャー等を
はるかに上回る程のプレッシャーで押し潰されそうな日々が続いた。
皇帝は自分よりも4つ年上ではあるものの、性格からすれば皇帝はやや不安な面があった。
それは好戦的な面がある事で、ひとつ皇帝のサポートを間違えてしまえば取り返しの
つかない事になると言う事は目に見えていた。
それだけ宰相と言うのはサポート1つ、決断1つでこの国の命運を左右する重大な役割を
担うポジションだった。
それでも今から7年前にこうして宰相の立場についた彼は4歳年上のその皇帝の威厳と
プレッシャーに見事に打ち勝つ事に成功し、今では宰相として皇帝陛下をしっかりとサポートしている。
しかしその反面皇帝に影響されてしまった部分も大きく、それで失敗する事もある。
その顕著な例が2ヶ月前にこっちから仕掛けて行ったヴィルトディンとの戦争だった。確かに
ヴァンイストは皇帝ディレーディの好戦的な性格には頭を痛めているのは事実だ。だが帝国と
言う立場である以上、この国だって他の国を吸収して領土を大きくして行きたいと言う気持ちは
ディレーディと変わりは無かったし力をつけて来たと確信して勝算があると踏んだからこそ戦争を
仕掛けたのだった。でも結果はエスヴェテレス帝国の敗戦に終わってしまったので、見通しが甘かったと
その時ヴァンイストは後悔していたと言う。
彼自身の性格としては目つきが若干怖いものの、ひとたび話しかけてみれば物腰柔らかなイメージだ。
聡明な部分は今でも変わらず、好戦的な性格のディレーディを止めるブレーキ役として活動する事が
殆どであり、冷静に先の事を見通すのが得意だった。
その上、2ヶ月前のそのヴィルトディンとの戦争で更に先の事を見通す事が必要と感じた彼は、
日々の業務が終了した後にこの世界の他の国の情報をまた1から集めなおして
今の他国の経済状況や軍事状況等のチェックをやり直している。
そうする事で何時かまたこの国が他国に侵略する時が来たら、自分のその調べ直している情報が
役に立つ時が来るかもしれないと思っている。
でも毎日1から各国の事を調査するのは厳しいし、1日2日でそんな各国の情勢が変わる訳でも
無いしそもそも時間的に無理なので、とりあえず今は2週間に1度を目処にしているのだ。
そんな宰相としての業務を日々担っている彼だが、そうした政治面だけでは無く武術や知略と
言う面に関しても勉強している。そもそもこの前のヴィルトディンとの戦争だって、ヴァンイストが
軍師の役目をして侵攻計画を立てていた。
この様にして戦争の際には軍師の立場を取る事もある他、実際にその戦争で彼も前線に出て
ヴィルトディンの宰相と刃を交えていた。
その時に使っていたのは相手にとってインパクトがある片手で扱える程の長さの槍2本、それから
魔法と言う組み合わせだった。
槍以外にも一通りの武器は使えるし、たまに騎士団員と一緒に鍛錬する事もあるがオーソドックスな
ロングソードや弓等は何だか自分には合わないと言う考えが昔から彼にあるのだった。
その過程で、両手でそれぞれ1本ずつ武器を扱う様にしてみたら結構自分の手にフィットした。
なので何時の間にか、ロングソードでは無く短めの槍を2本扱うそのスタイルが彼だった。
今でも鍛錬場に顔を出す事はあるにはあるのだが、やはり時間の都合上でたまにしか顔を
出せない上に不規則な時間の練習になってしまうので1時間だけ、2時間だけと言う様に
時間を決めて出来ないと言うのも悩みの種となっているのが現状だ。