Calamity to the empire第3話


手合わせを終えた2人はそろそろ引き上げようとしたが、その時

鍛錬場に1人の騎士団員が入って来た。

その騎士団員によると、何でも皇帝陛下が自分達の事を

呼んでいるとの事で2人を呼びに来たと言う。

「行くぞ、ユクス」

「ああ、しかし陛下が僕達に何の用だ……?」

実の所、この2人は余り呼び出される事が無い。と言うのも皇帝は

皇帝で凄く忙しい為に余り将軍に構っていられないと言うのが現状だ。


そんな皇帝であるディレーディが2人を呼び出した理由はこうだった。

「お呼びでしょうか、ディレーディ陛下」

胸に手を当てて頭を垂れるザドールとユクスに、意外な事を皇帝が言い出した。

「ああ、良く来たな。最初に1つ約束して貰いたい事があるのだが」

「何ですか?」

ディレーディの執務室にユクスの疑問の声が響いた。

「この事は迅速に行動して貰いたい。余り時間が無いのでな」

「は、はぁ……」


ザドールとユクスはお互いに顔を見合わせて心の中で何のこっちゃ? と疑問が一致した。

そんな2人を見て1つ咳払いをしたディレーディは、新たな任務を騎士団に命じるのであった。

「実は先日、この国に来ている傭兵達から気になる情報が入って来てな。何でも……北の

山脈の中で明後日武器の取り引きが行われる予定だそうだ」

「武器の取り引き?」

ユクスのオウム返しにディレーディは神妙な顔つきで頷く。

「ああそうだ。しかしこの武器の取り引きは正式な物では無く、どうやら隣国アーエリヴァから

大量に密輸されて色々と盗賊や余り宜しく無い連中に売り渡されるらしい。我もこの国で

そんな武器が大量に出回って治安が乱れる事は防ぎたい。そこで御前達にその取り引きを

何としても止めて貰おうと言う事だ」


「……つかぬ事をお伺いしますが」

そんな任務に対して、気になる事が1つザドールにはあった。

「その武器取り引きの情報をもたらした傭兵と言うのは、どう言う人物なのですか? きちんとした

信用出来る情報筋であると?」

もしこれが罠であった場合、大変な事になってしまうのは目に見えている。

だがそれにはディレーディでは無く、彼の机の傍に控えている宰相のヴァンイストが答えた。

「勿論ですよ、ザドール将軍。そもそもこの情報を提供したのはこの前の戦争で活躍して下さった

あの時の傭兵の方々なのですからね」

「……それであれば安心です。無礼な質問でした、どうかお許しを」

「構わないさ」


この前のヴィルトディンとの戦争で、自分達エスヴェテレス帝国軍に協力してくれた4人の傭兵が

どうやら今回もまた協力してくれた様であった。

確かに戦争には負けはしたものの、そもそも元から帝国騎士団に所属している

訳では無い傭兵達には雇用主を選べると言う利点がある。

だからこそ、戦争が終わってそのまま国内に留まる者も居れば国外に出て行く者も居る。

そしてこうして、国の為に有益な情報を流す代わりに報酬を受け取ると言う稼ぎ方も

出来る、いわゆる情報屋としての側面が今回のやり方であったらしい。

「良し、それなら早速行動開始だ。山脈に向かうメンバーを選抜して、すぐに出立の準備を整えろ。

大捕り物になるかもしれないからな。武器のチェック、体調管理、いずれも気を抜くなよ」

「「はっ!」」

綺麗な敬礼でディレーディに返事をしたザドールとユクスは、早速人員を選抜するべく

行動を開始するのであった。


「アーエリヴァは確かに大国だが、何故武器をこっちに密輸するんだ?」

「……考えられる事としては、最近戦争に負けたからその機に乗じて商売でも

始める為に密輸するのか、あるいはもっと何か別の意図があるのか。少なくとも私達が

知っている訳が無い。知っているのはその密輸をすると言う連中だけだろう」

「そうだな。だったら僕等でその密輸する奴等を捕まえて目的を吐かせれば良いって訳だ」

「そうだ。さぁ、色々と選抜の人選を手伝って貰うぞ」

「りょーかい、将軍」

だが、この時彼等は知らなかった。この事件を発端にして、まさか自分達が

とんでもない事件に巻き込まれてしまう事になり、しかも命の危険をおかす事に

なってしまう上に色々な意味で追い詰められてしまう事になるとは……。


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