Calamity to the empire第19話


「み、皆さん絶対に手は出さない様に! この方達を刺激しないで下さい!!」

まさかの光景に唖然として呆気に取られながらも武器をそれぞれ向けて来る

城内の騎士団員達の姿に対して、何とか刺激しない様に指示を出すヴァンイスト。

「どけ、道を開けろ!!」

「良いか御前達、少しでも妙な真似をしたら私達は宰相を殺すぞ」

ザドールとユクスは周りの騎士団員達に警告を出しながら、じりじりとゆっくり城内から

出て中庭の方へと歩いて行く。


しかし、その2人を何としても城の敷地内から出すまいとして騎士団も上司と分かって

いながら刃を向けて中庭で包囲をして行く。

「おい、どけっつってるだろ!」

「ちっ、私達をそう簡単に見逃してはくれないか」

ザドールもユクスもイライラが積もっているが、何とかしてここから脱出しなければこの先の

道が開けない訳であるから2人も必死なのである。

こうなったら強行突破か……と思われた、次の瞬間だった!!


「お、おいちょっと待て!!」

「早まるな! 御前達の無実、晴らしに来たぞ!!」

「……え?」

突然中庭の何処かからそんな声が聞こえて来たのでそちらの方へと目を向けたザドールと

ユクスに、4つの影があたふたしながら歩み出て来るのが分かった。

「無実を晴らす……? どう言う事でしょう?」

それはヴァンイストでさえも予期していない事であった。

「と、とりあえずその突きつけている武器を下ろせ、2人とも!」

「俺達がこれを見せれば全て解決するんだよ!!」


ザドールとユクスとヴァンイストの目の前に現れたのは、あの時酒場で情報提供をしてくれた

傭兵カルテットのウェザート、シュヴィス、ロラバート、ブラヴァールであった。

「なっ、何故御前達が……!?」

驚くザドールにロラバートとブラヴァールが説得にかかる。

「それも全部話すから、まずは武器を下ろせ」

「そしてディレーディ陛下の所に行こう。謁見の許可は取ってあるから!!」

傭兵達には情報提供が元になって今回のこの様な状況になっているのだが、もう1度だけその

言葉を信じて武器を下ろしてヴァンイストをザドールとユクスは解放し、城の中へと向かって歩き出した。


「大掛かりな事を考えるものだな、ヴァンイスト」

「何をおっしゃいます、ディレーディ陛下」

謁見の間にディレーディの苦笑いとヴァンイストのニヤついた笑みが浮かんだ。

ヴァンイスト曰く、自分を人質にして逃げると言う作戦は事前にディレーディも知っていた事だったらしい。

「だったら最初から僕達にもそう言っていただければ、あんな緊迫した状況にならなかったですよ」

「それ以前に、私達を釈放すると言う通達を騎士団に出しておけば良かったのでは?」


その最もな2人の意見に、皇帝陛下はまたしても苦笑い。

「それも考えたのだが、御前達があの洞窟で巻き込まれた事は帝都に知れ渡っている事だ。

迂闊に釈放してしまえば悪い噂が立ちかねん。だから強硬手段を提案したのだ」

「そっちの方が悪い噂に拍車がかかりそうですね……」

「確かにな。しかし、もっと良く考えて見れば夜に御前達を出させても良かったな。色々と御前達には

無理をさせてすまなかった。だがまぁ、これで問題解決と言う訳だな」

そう言ったディレーディが傭兵カルテットに目を向けると、その中のリーダー格であるブラヴァールが

ディレーディに1枚の紙を差し出した。


そしてウェザート、シュヴィス、ロラバート、ブラヴァールの順に傭兵カルテットが証言する。

「あの時、森の中から大量の人間達が木箱を抱えて出て来るのを僕達は見ていました」

「俺とウェザートがその後追いかけて、木箱が運び込まれた場所を突き止めた地図がその紙に詳細に

書いてありますので目をお通し下さい」

「俺とブラヴァールは洞窟の中の出来事を見ていました。騎士団員を殺したのはその2人ではありません。

この目ではっきりと見ています。その木箱が持ち出された後に、少しだけあの洞窟に運び込まれた木箱が

残っていた事もきちんと見ました」

「あの騎士団員達を殺した罪、それから武器の横流しの罪を将軍と副将軍に擦り付ける為にその木箱を

運んでいた人間達がやった事です、間違いありません」

ザドールとユクス本人達だけからならまだしも、傭兵達からこうした修験が得られた事でザドールとユクスの

容疑がこの瞬間正式に晴れる事になった。


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