Calamity to the empire第20話(最終話)


「だったらその時に御前達があいつ等を止めに来て欲しかった。そうすれば私達はこんなに苦労はしなかったぞ」

だがそのザドールの愚痴にブラヴァールは首を横に振る。

「それは……すまないが私達が奥まで辿り着いた時にはもう貴方達が気絶させられた後だったから無理だった。

ざっと見積もっても50人は居たからな。正直止めようと思ったが、私達まで見つかってしまったら全てが水の泡

だったから堪えるしか無かった。本当にすまなかったな」

とにもかくにもこれで容疑も晴れたので、傭兵達が教えてくれたその真犯人達のアジトへと傭兵カルテットと

信頼出来る部下達と共にザドールとユクスは向かう事にした。


「はっは、ちょろいもんだなぁ!」

「ほんとだぜ。今頃将軍と副将軍は泣きべそかいてるんじゃねぇの?」

「ちげーねーや、はっは!!」

帝都から少し離れた所にある廃村で武器の密輸取り引きを行っていたあの団体の

リーダーである茶髪の男と副リーダーの紫髪の男が、作戦が見事に成功して

結構な勢いで盛り上がっていた。

だがそんな廃村に向かって来る団体の姿を、外で見張りをしていた洞窟に居たあの

緑髪の男が目に留める。


「あ、あれはまさか……!?」

「中の奴等を呼んで来るっ!!」

同じく見張りをしていたあの金髪の男が廃村の中へと走って行くが、その団体は

一気に廃村の中へと攻め込んで来た。

「絶対に1人も逃がすな!! 今度こそ捕まえるんだ!!」

「証拠も押さえるんだぞ! 僕等を罠にはめた証拠を全て1つ残らずだ!!」

団体の先頭で走って来たエスヴェテレス帝国騎士団長ザドールと副騎士団長のユクスが

傭兵カルテットを含む部下達に的確に指示を出しながら自分達も廃村の中へと突っ込んで行く。


「よくも僕達をはめやがって!! 絶対に許さねぇからなああああああああ!!」

「私達を見くびるとどうなるか、思い知るが良い!」

罠にはめられて冤罪をかけられた恨みもあり、廃村の中で浮かれていた連中は1つしか無い

出入り口を封鎖されてしまい、逃げる間も無く廃村の中で全員逮捕一掃された。

それにあの時の赤髪の男と黒髪の男は、この団体の正式な仲間では無く実は傭兵だと言う事が

同じ傭兵としてその2人の存在を目にした事があったロラバートとシュヴィスの口から後に語られた。

とは言えどもあの時ザドールとユクスを罠にはめる行動をしていた事に変わりは無かったので彼等も

当然逮捕され、こうして事件は終わった……かに見えた。


だがまだこの事件には、思いもよらない裏があった。それはこのヘルヴァナールに伝わるドラゴンの

伝説の事についてだ。何でも武器の密輸をする際に、赤髪の傭兵のヴァレルと黒髪の剣士から

その伝説にまつわる事がこの廃村に隠されている、と言う事を聞いていたこの密輸組織であり

窃盗団である組織「血濡れの狂戦士(バーサークグラップル)」は、密輸した武器を一旦あの

洞窟に隠すとあらかじめ決めた後で別の保管場所を探していた。その時にこの廃村の事を

傭兵2人から聞いた窃盗団はこの場所に武器の入った木箱を洞窟から移し、それと同時に

この廃村の事を調べようとしていた矢先だったらしい。


結局調べる前に騎士団によって全員逮捕されてしまい密輸した武器も全て押収されて

しまったのだが、廃村の調査は騎士団に引き継がれる事になった。

しかしその廃村の調査によって得られた物は結局何も無かった。しいて言えば奇妙な

暗号らしき物が描かれた鉄製の扉が見つかった位だが、結局暗号は解けていない上に

力技で壊そうとしても魔法で吹っ飛ばそうとしても特殊な結界か何かに守られている様で、

ドラゴンの伝説に関しては迷信でありデマであるのでは無いかと言う話が今の所帝国内では

最も有力な説であると言う。


こうして1つの事件が解決し、ザドールとユクスは通常業務に戻る日々になった。

そしてあの情報提供をした傭兵カルテットは、これを切っ掛けに傭兵の身分を捨てた。

何故なら彼等4人は前回のヴィルトディンとの戦争、そして今回の事件解決に協力したと

言う事で正式にエスヴェテレス帝国の騎士団員として迎えられる事になった。

今では彼等4人も騎士団の一員として日々国内を駆け回る忙しい日々を送っている他、

今回の様な冤罪事件が起こらない様にする為にも情報提供等があった場合には、きちんと

徹底的にその情報の発信源を調べると言う管理体制がこの事件を切っ掛けに決められたのである。



Calamity to the empire 


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