Calamity to the empire第16話


その傭兵達から連絡があったのは、翌日の昼前になってからであった。

4人が直接城を訪ねて来たのだ。

「わざわざ来て貰ってすまなかったな」

「別に。それよりもあんた等が知りたかった情報、持って来たぞ」

寡黙な性格のロラバートが1枚の小さなメモを渡して来た。

「そこに取り引き現場から無くなった木箱があるって話だ。行ってみると良い」

「ああ、分かった」

メモと引き換えに情報収集代金を渡したザドールとユクスは、今度は2人きりで

部下を1人も連れずにそのメモに書かれている場所へと向かう。


そうして辿り着いた場所は、帝都の中では無くその帝都から少し離れている森の中にある

天然の倉庫として使用されている洞窟の中であった。

「こんな場所が……」

「あ、ザドール!」

ユクスが指を差した奥には、確かにあの時と同じ持ち出された大量の木箱が置いてあった!

「ようやく見つけた……間違い無い、あの時のだな。でも……何でここに?」

「さぁな。とりあえずどうにかしてこれを回収しなきゃならない。この辺の駐在兵に頼んで

帝都から馬車とそれから人員の応援を……」


そこまでユクスが言った時だった。

「……しっ!」

「ああ、誰か来るな……」

ザドールとユクスは洞窟の入り口の方から聞こえて来る複数の足音に対して、咄嗟に傍の

岩陰に身を隠しながら気配を極限まで消して様子を窺う。

そうして現れたのは、何と……!

「お、おい……あれって……」

「何て事だ……」


見知った人物では無い。しかしその人物達が率いているのは紛れも無く帝国騎士団員の

格好をしている……もっと言えばこの前の任務の時に一緒に取り引き現場へ向かう

メンバーとして選抜した自分達の部下が何人かと、あの広場に集まっていた男達の一味だった。

見た感じではその男達の部下達だけで、あの金髪の男と紫髪の男は居ない様だが。

「帝国騎士団の中に裏切り者が居たと言う事か?」

「見る限りではそう言う事になるかもな……」

だが、その2人のヒソヒソ声によって何時の間にか気配が消えてしまい、どうやらここに

2人が居る事に気が付かれてしまった様だ。


「……なっ、ザドール将軍に、ユクス副将軍!?」

「こ、こんな所で一体2人は何を……いや、もうこうなったらこいつ等を殺せええええ!!」

もうやけくそ状態になった2人の男の内、赤い髪の毛の男が炎を纏ったロングソードを振りかざして

部下達ともう1人のリーダー格である黒髪の男に指示を出す。

「ちっ!」

ザドールは舌打ちをして自分も素早くハルバードを構え、ユクスもこの広さが余り無い狭い洞窟では

弓はまともに放てないので短剣で勝負を仕掛けて行く。


ユクスは黒髪の剣士を相手に、ザドールは赤髪の剣士を相手にする。

黒髪の剣士はとにかくスピードある剣技で、ユクスになかなか反撃のチャンスを与えようとしない。

(リーチの差もある、これはでかい!)

どうにかして反撃に持ち込みたい所だが、ユクスはどうにかチャンスを見つけたいと

黒髪の剣士以外にも襲い掛かって来る敵を相手にギリギリで踏ん張っていた。

そしてそれはザドールも同じらしい。

(この男……魔法剣士か?)

豪快かつ刀身に炎を纏ったままの男の攻撃になかなか刃を交える事が出来ない。

下手につばぜり合いにでもなったら刀身が焼けてしまう。


(恐らく特殊な材質で作られているのだろうな、この男の剣は。そうでなければこれだけ火を

纏っていて刀身が焼けただれない筈は無いからな!)

それでも自分達がここで負ける訳には行かない。それだけの思いでどうにか対処する術は

無いのかと考えながら戦うザドールとユクスだったが、そんな戦う彼等の元に今度はまた

新たな来訪者が洞窟の入り口から歩いて来るのであった。

そしてその来訪者は、今戦っているザドールとユクスにとって驚くべき人物達であった!!


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