Calamity to the empire第15話
「成る程、つまり俺達はその武器の行方を追えば良い訳だな?」
料理を食べながらザドールとユクスが話した内容に、傭兵達のリーダー格である
紫髪で痩せ身のブラヴァールが問いかけた。
「そうだ。私達はその為にこうして頼みに来た。あの時武器入りの木箱が無くなったとして、
騎士団には持ち帰られて居なかった。となれば可能性は2つ。
1つはあの時の取り引きしていた人物達がこっそり持ち去った。そしてもう1つは……」
そこで一旦ザドールは言葉を切って、再度続ける。
「私達と一緒にあの時あそこに居た騎士団員が横流しに関わっているかのどちらかだ」
そのザドールのセリフに、傭兵達4人だけで無くユクスまで息を呑む。
「確かにあそこに居たのはあんた達騎士団員とその取り引きしている奴等だけだったって
言うから、その可能性は高いか……」
シュヴィスがあごに手を当ててそう言うが、ウェザートが慌てた様子で口を開く。
「だ、だったとしてもだ。騎士団が横流しに関わっているってなったら騎士団の宿舎とか
そう言った所に武器があったりするんじゃ無いのか?」
「そうだよ。俺達だって前回の戦争に借り出された時に1度鍛錬城を使わせて貰う約束で
城の中に入らせて貰ったが、大量の武器を隠すならそれこそ武器庫とかにおいておけば
良いんじゃないのか? 俺ならそうする」
だが、ザドールはゆっくりと首を横に振った。
「私はその線も考えて、ユクスと一緒にここに来る前に武器庫に寄ったんだ。だけどそれは無かった。
何故なら騎士団の武器庫では在庫確認が定期的に行われているし、それ程までに大量の武器が
入った木箱を持って行くなら城の入り口でチェックが入るからばれるだろう。それに……」
「……それに?」
シュヴィスの急かす様な疑問の口調に続いたザドールの言葉は、至極真っ当な物だった。
「あの時、私達と一緒に帰って来た騎士団員は全員居たし、その時に木箱等誰も持っていなかった。
だから私達が居る前で木箱の持ち運びはされていないと言う訳だ」
しかしそれについて真っ先に反応したのは傭兵達では無く、隣でそれを聞いていたユクスだった。
「いやちょっと待て待て待て。まだ別の可能性もあるだろう」
「え?」
「冷静沈着って言われているザドールにしてはまだまだだな。あの森の中で、僕達が
主犯格らしき2人をそれぞれ追いかけている時にあの広場、もしくはそれ以外の何処かで
横流しがされた、と言う可能性もある」
でもザドールはそれには納得出来ない。
「だったら目撃者が居る筈だ。あの広場の中から忽然と姿を消した木箱達がそうして横流し
されていたなら、誰か1人位はそれを目撃している筈だろう。と言うか私と一緒に御前も、あの時
連れて行った部下をそれぞれ事情聴取しただろう、1人ずつ。だけど結果は全員やってないと
言っていた。あの時の全員が横流しに関わっているとでも言いたいのか?」
とにかく考え出したらキリが無さそうなので、そこ等で2人の会話をブラヴァールがストップさせる。
「まぁまぁ、そう2人とも熱くならないで。今ここでそうやって考えてもキリが無い。重要なのは
その大量の無くなった木箱の行方だろう? だったら俺達も探すのに協力するから」
「そうだな……すまない、見苦しい物を見せた」
「別に良いよ。俺等4人でそれぞれ心当たりを当たってみる。幾つかあるから。下手に将軍や
副将軍が動けばかえってやり辛いだろうしな。だから俺達みたいな傭兵が動いた方が良いだろう」
そのブラヴァールの〆のセリフで、料理を平らげた2人は正式に依頼をこの場でしてから酒場を出た。
「一旦城に戻ろうぜ」
「そうするか」
と言う訳で一旦捜索活動は中断し、2人は城へと戻って日々の業務を片付けつつ傭兵達からの
連絡を待つ事にする。だがこの後、2人にとんでもない事態が襲い掛かって来る事になってしまう。
それは2人の未来を大きく左右しかねない、重大な事件の幕開けにしか過ぎなかった。