Calamity to the empire第14話


彼の姿を見てみると、何時でもその暑苦しそうな鎧を脱ごうとはしないので

ちょっと変わった人だと思われがちだがこれにはきちんとした彼なりの理由がある。

そんな変わり者だと思われているのがエスヴェテレスの傭兵として有名な存在である

ブラヴァール・ジャンスサート。たまに鎧を脱いだその身体は華奢な方であるのだが、

彼の使う武器はその体躯に似合わない大剣だ。

何故その様な武器を使う事が出来るのかと言えば、鎧を普段から着込んで

歩き回っている事で自然と並外れた体力とパワーがついた結果と言う事らしい。


傭兵としてのキャリアは15歳からで、今年で30歳のもう15年目である。

彼の生い立ちは凄いエリートコースであった。帝国内でも有名な貴族の家庭に生まれ育ち、

一流の講師陣に礼儀作法から世の中の勉強、それから武術に至るまで特訓させられて来た。

そんな家庭で生まれ育った彼は今でも丁寧な口調は変わっていない。

このエスヴェテレスの帝都バルドにある王城ルディアにも何回も子供の頃から出入りしている為に

王城にも広く顔が利いている。

将来は貴族としてこの国を引っ張って行くのか、騎士団に入るのか……そんな風に思われていた。


しかし、そんな生活をしていた彼は世の中の事を勉強で知る事はあっても、実際の所この

帝都から出た事が無かった。その為にもっともっと自分の足で世界中を回り、自分の目で

世界中を見てみたいと言う野望があったのだった。

それが15歳の時であり、彼はその野望を達成する為に家出を決行したのであったが、

当然彼を追いかけて来る者達は多数居た。しかし何とか追跡を振り切って商隊の護衛等を

しながら西へと逃げ、一周して来てヴィーンラディの下町に最終的には落ち着いた。

そこで傭兵ギルドに正式に登録し、そのまま2年そこで暮らした後にアーエリヴァへ行き3年生活。


そこから今度はエスヴェテレスを通らずに船を使うルートでファルス帝国に2年滞在して、次は隣国

シュアへと移って4年滞在。その後にバーレンへと移住したが、余りバーレンでは傭兵の仕事で

稼げなかったので1年半で見切りをつけイディリークにさっさと移住した。

イディリークでは2年間過ごして最後にラーフィティアに移り住んだのであったが、ここが独裁政治やら

騎士団の腐敗等で傭兵の仕事が成り立たず貯金を切り崩すだけで終わった相当に酷い所であり、

ここも半年で見切りをつけてエスヴェテレスへと舞い戻って来たのが半年前だった。

そもそも舞い戻って来た理由としては今現在の自分の家がどうなっているのかを知りたかったのだが、

その自分の家に行ってみた彼は衝撃の事実を知る事となる。


家が無かった。

没落云々の前にそもそも物理的に自分の家が無く、あるのはそこそこな敷地の畑だった。

何でもこの15年の間に再開発が帝都で行われて区画整理が行われ、貴族街が移転したらしい。

しかしその新しく移転した貴族街にも自分の家は無かった。何故かと言うと自分と言う跡取りを

突然失った生家は他の貴族の格好の獲物になったからであり、そのまま貴族同士の争いに

巻き込まれて一気に叩き潰されてしまい家族は全員殺されてしまった。

それを聞いたブラヴァールはその当時凄いへこんでしまったが、それから半月後には何事も無く

以前の彼に戻っていた。


何故そんな短期間で彼が元の性格に戻れたのかと言うと、この15年の間にヘルヴァナールの

全ての国に住んだ経験があり、傭兵として今でも無事に生計を立てて暮らして行けている。

だったらもう親の援助無しでも十分に独り立ちしたのだから心配する事は無い、と確信して

一種の開き直りと言う事であった。今でもそれは変わらず不敵な笑みで飄々とした性格であり、

掴み所が分からないのが欠点と言えば欠点であろう。

以前に命を救ったロラバートとは仲が良く、それ以前からの傭兵同士での知り合いで

あるウェザートとシュヴィスも一緒に行動する事が多く、4人でエスヴェテレス帝国に

住み着いている。しかし今の彼は貴族では無く、傭兵と言う立場である所が違いなのだが。


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