Calamity to the empire第13話


華やかな生活とは裏腹に、黒い部分も多々あるのが貴族と言う身分である。

ただ単に領地を持っているとか、金を持っているとか、王族に繋がりがあるとかと

言うだけでは貴族としては成り立たない。

その背後では権力争いでしのぎを削っていたり、貴族同士での抗争があったり、

子供が親の命令によって望んでもいない相手と結婚させられたりする、いわゆる

政略結婚等様々な人間ドラマが平民と同じ様に存在している。

場合によっては平民とは何倍も違うドロドロした物があったりするのも特徴だ。


彼もまた貴族の出身でありながら、そんなドロドロとした権力抗争に巻き込まれた挙句

何回も命を狙われた経験を持つ29歳のロラバート・オスウェイン。

エスヴェテレス帝国を拠点に活動している傭兵の1人であるが、その生い立ちから

人付き合いが苦手で口数の少ない寡黙な性格だ。

元々南の隣国ファルスの方から移住して来たのが彼の先祖であり、この帝国の

立ち上げに関わったと伝えられている。しかし先祖が移民と言う事もあってかこの国で

生まれ育って来た人間達にとっては元々他国の人間がでかい顔をするのは気に食わない、

と言うぶっ飛んだ思考の貴族も居た事はまた事実だった。


ロラバートは正真正銘この国で生まれ育った人間だし、生まれ育った場所はこの帝都バルドだ。

だけどそうして差別する人間は何時の時代にも存在するし、貴族であっても変わりは無い。

それ以外にも色々と領地の問題とかが絡み合った結果としてロラバートも暗殺されそうに

なった事が何回もあったのだ。

暗殺されそうになっているのなら、その前に暗殺するべきだと言う「やられる前にやる」と言う

思考をそうした生い立ちの中で形成した彼は、自分の命を狙う相手を徹底的に殺す様になり、

結果として家が没落してそのまま傭兵家業に流れ着いた。


そうした経緯で傭兵ギルドに登録した彼は色々なミッションをこなす様になったが、その中でも暗殺や

潜入と言った裏方、あるいは目立たない様な日陰の任務を得意とする様になり、エスヴェテレス

帝国からもその活躍ぶりを耳にした他の貴族達や皇族に関わりがある者達から優秀な密偵として

何度も極秘に依頼を受けている。

しかもロラバートはそれだけでは無く、エスヴェテレス帝国に留まらない活躍ぶりもまた評価が高い。

最もな例としては、隣国であるアーエリヴァの密偵として自国に潜入した時だ。

傭兵家業なので金さえ貰えれば依頼主を選ばないのが当たり前のこの世界では、昨日味方だった

人間が明日には敵となって襲い掛かって来るのも当たり前の世界だ。


エスヴェテレス帝国の中でその依頼を受ける2週間位前に依頼を受けた貴族を暗殺すると言う

ミッションでは、潜入を得意とする彼らしく無い堂々としたスタイルだった。

何故ならその貴族の家に彼は向かい、普通の客人として潜入。そうして貴族の当主に酒を

呑ませて酔わせた所でナイフを使い首を一突きして息の根を止め、素早くその場から立ち去った。

こうしてミッションが成功した彼はアーエリヴァでは無くしばらく南東のヴィーンラディに潜伏して

ほとぼりが冷めるまで待っていたと言うエピソードがある。

この様に根無し草である彼だが、今ではまた普通にエスヴェテレス帝国のバルドに住み着いている。


しかし彼も人間である以上失敗する事はあり、2年前に暗殺には成功したものの敵に

見つかってしまい、その逃走中に当時すでに違うミッションを通して知り合いになっていた同じ傭兵の

ブラヴァールに助けて貰った事から彼にだけは心を開いている。

その縁もあって今ではウェザートやシュヴィスとも知り合いになり、4人で一緒に任務を請け負ったり

する事もあるし、1人で任務を請け負う事もあればブラヴァールとコンビを組んで依頼を受ける事もある。

この様に働く場所やスタイルに捕らわれない生き方が傭兵と言う者だ。

しかしそんな彼もそんな生き方が長く続くのか? と最近自問自答しており、何処かに腰を落ち着けて

生きて行きたいとも考えている。


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