Calamity to the empire第12話
ウェザートとコンビを組んで行動する事の多い傭兵であり、魔導師でもあるオレンジ頭の男が
シュヴィス・グノウェイナー。今年で三十路の壁を越えて31歳になった彼は、大人しい
性格のウェザートよりも更に消極的で無口で塞ぎ込みがちであるとの周りの評価が多い。
だが、彼がそんな性格になってしまったのは彼の身に降りかかったとある大きな事件が
切っ掛けになってしまった事も魔導師仲間や傭兵仲間と言った多くの人間から広く
知られている事実であった。
同じく魔導師仲間であり傭兵仲間でもあるウェザートとは幼馴染であり、一緒に帝都で
魔導に触れながら育ったと言う過去がある。一緒になって魔導の勉強に励み、魔導書を
読み漁ってはお互いに習得した魔法を見せ合う等してお互いに切磋琢磨しながら
レベルアップに励んで来た。
ウェザートより3歳年上になる彼だが、基本的には魔導学院は20歳まで入学出来る
システムになっている。なので当時17歳だった彼はウェザートよりも3年先輩として卒業まで
残り1年を切っている状態でウェザートが入学して来たのであった。
ウェザートと違う所と言えば彼は友人が多かった。人付き合いがウェザートとは違って得意
だった事もあって、常に多くの人間が彼の元へと集まる様になっていた。
その一方で魔導の勉強を怠る事は決して無かった彼は帝国魔導学院で好成績を残し、
そのまま学院に講師として登用されたまでは良かった。
が、その事件はある授業の日に起こってしまう。それは魔導の実証実験と言う事で実験を
していた時だったのだが、まれにあると言われている自分の魔力の暴走で異常なまでの
エネルギーで広範囲に魔法が発動してしまい、生徒達に多くの怪我人を出してしまう事態に
なってしまった事件があった。
6年前の25歳の時にその事件を起こしてしまった彼は責任を取って学院を去る事になり、
その結果として世界各地を傭兵として転々としながら再び2年前にエスヴェテレス帝国に
戻って来た。彼が戻って来た理由はただ単に世界各国を見回って1周して来て
丁度戻って来たのがエスヴェテレス帝国だったと言うだけの話であるが、当時を知る人間からは
余り歓迎されていないのもまた事実。何しろ魔導の中でも取り分け攻撃魔導の威力が高い為に
魔導の実習中に怪我人が多く出る事に。これが切っ掛けでかつては活発な性格だったのだが、
この忌々しい事件の後からは消極的な性格になってしまった。
ちなみに近接戦闘も同じ短剣を持っているウェザートよりは、ある程度出来る様に特訓しているらしい。
そのバックグラウンドとしては、ウェザートが軽視していたファルス帝国において
1年間そこの武術道場に通い詰めていた経験があるからだ。そもそもウェザートが
世界を見て回っていたのが2年間だったのに対し、シュヴィスの場合は4年間と倍の
時間でこのヘルヴァナールの世界を旅していたのである。
当然旅人としての経験が長ければ傭兵としての経験も長いし、その道中で培った魔導の
新しい発見と言う名目の勉強に関してもシュヴィスの方が長い事になる。
ファルス帝国の武術道場に通い詰めていたのも、一旦魔導から自分が離れる事によって
何か新しい発見に繋がる物があるのでは無いか、と言う考えがシュヴィスの中にあったからだ。
実際の話傭兵として活動するなら魔法だけが使えるのは良くない。実際の所は魔法が余り効かない
魔物も中には居る訳なので、幾ら攻撃魔法の威力が高いと言われているシュヴィスでも
そうした魔物に出会ってしまった時の対処法として短剣での戦い方を徹底的に1年間その身に
叩き込んで来た。今でも魔導の勉強に行き詰った時には、身体を動かす意味も込めてファルス帝国
仕込みの短剣戦闘術の練習をしている。ちなみにウェザートとはコンビを組む時に、シュヴィスの方が
攻撃魔法の威力が高い上に短剣でも戦えるので、シュヴィスが前衛に居る事が多い場面が戦闘の時に
何度か目撃されている。