A Solitary Battle High Speed Stage第37話


そんなエジットを羽交い絞めにしながら、セレイザはとんでもない事を言い出した。

「悔しいがこの男の言う事は正論だ。殺されそうになっている状況で反撃しないのは

無理だ。だが、私達の仲間を殺したと言うのはこちらにとっては到底受け入れがたいのも

また事実。そこで御前にチャンスを与えよう」

「チャンス?」

いきなり何を言い出すんだ。一体それはどんなチャンスなんだと内心でドキドキしながら

ニールがそう思っていると、セレイザがそのチャンスを口に出す。

「御前がユフリーの代わりに私達の仲間になる。それが条件だ」

「は?」


唖然とするニール等お構い無しにセレイザは続ける。

「正直な話、ユフリーはセレイザに鍛えられていた事も過去にあったからなかなか

腕の立つ人間だと思っていた。しかし御前はそのユフリーを倒す事に成功したし、私の部下達も

騎士団ではそれなりに腕利きの連中ばかりを御前の捜索隊に任命してここに進軍して来たのだ。

だが、御前はその部下達の何名かを退けたと言う事だろう。それに異世界人だからと言って

即座に解剖する様な事はしない。解剖するなら、それは御前が私達にこれ以上刃向かう意思を

持ち続ける時がその時だ」


そんなとんでもない事を言い出したセレイザに、ニールは「ふぐぅ」と吹き出した。

「あんた、相当おめでたい頭してるんだなー。騎士団長だし、取り乱すその男を抑え付けている

その行動と今の口調からしても冷静沈着で頭の切れる人間だと思っていたけど、頭はそんなに

切れるタイプでは無さそうだな。だって、短い間だったけど今まで騎士団に追い回されて殺されそうに

なっていた人間が……しかも、その抑え付けられているその男からは絶対にこれ以上無い位の恨みを

買っている人間が、どうして御前達の仲間になれると思うんだ? 状況を考えれば少しは分かると

思うんだがな。……まぁ良い、そっちのチャンスに答えるのであれば俺の答えは勿論……いいえ、だ」


断りの返事をしたニールはなおも続ける。

「それに、そっちのギルドトップの人から恨まれていると言う事はいずれ俺が何処かで殺されるかも

しれないし、殺されないにしても腕の1本や足の1本切り落とされる位じゃ済まない位の恨みを

もうすでに俺は買ってしまっている訳だから、俺にとってもそんなに恨まれて憎まれてトラブルになる

リスクの高い奴等の仲間になると言う選択肢は有り得ない。俺はまだまだ死にたくなんか無いんだ。

だからきっぱりとその話は断る。これが俺の答えだ!!」

台本にすると凄い長文になりそうなセリフをニールが言うと、羽交い絞めにしていたエジットを解放して

1つ頷いたセレイザは腰に吊ってある愛用のロングソードを引き抜いた。


「ならば死有るのみだ。ここの研究施設の存在、それから極秘開発中の兵器の事を詳しく

知られてしまった以上、御前が私達の仲間にならないと言うのであればこちらとしても情報の漏洩を

させる訳には行かないのでね。あいにくだが機密保持の為だ。悪く思うな」

その横ではエジットが長斧を構えて、殺気が満載の視線をニールに送りながら今にも飛び掛かって

来そうな雰囲気をかもし出していた。

「俺のメンツを潰すだけじゃ無く、俺の婚約者のユフリーまで殺しやがって。セレイザ団長が許しても

さっき言った通り俺は御前を絶対に許さない。俺達を敵に回した事を後悔して死んで行くが良い。

俺のこの斧にズタズタに細切れにされて死んで行ける事に感謝して貰いたいもんだぜ!!」


そんな2人のセリフに、ニールはカラリパヤットの素手格闘術パーフユッダの構えを取りながら答える。

「そんな感謝の押し売りは止めにして貰いたい物だ。俺はそんな事を望んじゃいない。

それに俺だって伊達に20年間カラリパヤットをやって来た訳じゃ無いからな。

御前達を倒し、俺は地球へ帰らせて貰うぞ!!」


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