A Solitary Battle High Speed Stage第36話


「いいや、それは違うな。それはまた別の兵器の開発をしていたのだよ」

「他にもまだあるのか……」

何だかここに来て、自分の生まれ育ったアメリカの現状をニールは思い出す。

莫大な予算をつぎ込んで軍人達を育て上げ、戦争が起こればアメリカ軍が

真っ先に戦場へと飛び込んで行く事が非常に多い。それで無くたってアメリカ軍は

自国アメリカのみならず、日本やオーストラリア、マレーシアやインドネシア等の

アジア地域、それからイタリアやドイツ等と言ったヨーロッパの地域、とにかく世界中の

色々な国にまで在留しているのに加え、現地で基地を造って土地を使っている為に

在留先の国民達からは何かとバッシングを受ける事もあったりする。

それでもアメリカ軍は世界一の軍隊として誇りに思っている人間もアメリカ軍にまた多いのも

事実だった。このソルイール帝国も好戦的な性格の皇帝が治めているだけあって、

そうした考えを持っている人間が多いのだろうかと考えながらセレイザとエジットを見つめる。


そんなニールにセレイザは口を開いた。

「その機械は新兵器のエネルギー装置。と言っても操作出来るスイッチはここには無い。

この研究施設では生物兵器の他にも更に戦争の為の色々な魔術や、

その兵器……魔導砲等の研究や開発もしているのだ」

「魔導砲って何だ?」

「魔力のエネルギーを集約して、攻め込んで来る相手に対して撃ち放つ大砲だ。

1発で山をも砕く威力が試算されているから撃たれた方はたまったものではあるまい」

ニールの質問にそう答えたセレイザは誇らしげな顔をする。

「でもそれを聞いていると、他国に向かって撃つ訳じゃ無くて防御用と言う訳か。

成る程な、あくまでも自国の防衛の為にそうした軍の設備を整えていると言う訳だな」

「そう言う事だ、物分りが良くて助かるぞ」


納得した様に頷くニールをセレイザが褒めるが、褒められているニールに今まで黙っていたエジットが一言。

「……あれ?そう言えばさっきの話からすると御前はユフリーに会ったんだろ? ユフリーは何処に行った?」

そんなエジットの疑問にニールは下手な嘘をついても仕方が無かったし、ここで嘘をついて切り抜ける事が

出来たとしてもいずれは絶対にばれる事なのであっさりと素直に事実を述べる事にする。

「死んだよ。あいつはエレベーターシャフトに落ちたんだ。俺の目の前でな」

「なっ……にぃ!?」

驚愕の表情を浮かべるのも無理は無いエジットを見て、ニールはわざとらしく今までの役者の仕事で使う為に

勉強して来た表情の演技の成果を今ここで出す。

「俺があんた等の部下と戦っている時に、あの女は俺に向かってナイフを投げて来た。そして俺は殺されそうに

なったからエレベーターシャフトに投げ込んでやった。俺が殺したんだ」

「てっ、めえええええええええええええええ!」


エジットの怒りと悲しみを混ぜた絶叫が部屋の中に響き渡る。そんな彼を何とかセレイザが押さえ込み

落ち着かせようとするが、そんなエジットにニールは続ける。

「騎士団の連中をけしかけて来るだけじゃ無く、俺に向かってナイフを投げつけて来た上に槍まで向けて来た

あの女。しかも抵抗すれば殺すと言う様なニュアンスのセリフまで言って来た。だから俺は自分の身に降りかかる

火の粉を払っただけだ。大体、そう言うのは騎士団とかギルドに身を置いているそっちの方が

良く分かっている事じゃないのか? そっちにとっては味方でも、俺にとっては敵なんだ。自分を殺そうとして来た

敵を返り討ちにしただけなんだよ!!」

男だから、女だからと言う前に戦場でそうした事にこだわっていては生き抜く事等出来ないだろう、と

そこにニールが付け加えるとエジットは更に激昂した。

「ちっきしょおおおお!! ぜってー許さねぇぞ!! 俺の女を殺しやがってええええ!!」


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