A Solitary Battle High Speed Stage第33話
その瞬間、やはり自分の考えは間違っていなかった様でさっきこの部屋に
初めて入った時に出現した、あの謎の光と音とそして痛みの現象が起こる。
「きゃあっ!?」
ニールはすでに経験済みなのでその怪奇現象に対応する事は出来ても、今回が
初めてでしかもいきなり体験するユフリーにとっては驚かない訳が無かった。
音は結構でかいし光も結構眩しい。向こうは痛みを感じていない様だが、光と音に
驚いて大き過ぎる位の隙が出来た。
その隙を勿論ニールが見逃す筈は無く、自分も今の怪奇現象で手の痛みは残っているものの
それは全然我慢出来る痛みだったので素早くユフリーに駆け寄り、体勢を立て直しきれていない
ユフリーに抱きついて素早く持ち上げる。槍は広範囲を攻撃出来るのだが、脇の下から手を入れて
背中に手を回して密着してしまえば肝心の広い攻撃範囲も使えない。
プラス、驚いたユフリーは何とか槍を放さないで済んだが両手持ちだったのが片手持ちになって
しまった為、槍を持つ利き腕の右腕の下からがっちり抱きしめてロックしてしまえばニールの頭が
邪魔で腕も満足に動かせない。
そうしてニールはユフリーをきつく抱きしめたまま猛ダッシュし、向かう先はあの吹き抜けになっている
エレベーターシャフト。そこのぽっかり空いている、地下へと続く穴にダッシュの勢いも利用してユフリーを
突き飛ばして投げ込む。
「えっ、ちょ、やっ、きゃ……あああああああああああああああーーーーーーーーーっ!?」
思いっ切り投げ込んだ為に、途中で回転したユフリーは重い頭を下にして真っ逆さまにダイブして行ったのかと
思いきや、勢いがつきすぎていて奥の壁にぶつかって足を下にして落ちて行った。
ニールもニールで一緒に落ちてしまいそうになったがそこは細身ながらも鍛え上げられた足の筋肉で
ギリギリ踏ん張る事に成功した。
そしてユフリーの悲鳴を聞きながらニールは踵を返し、ポツリと一言呟く。
「忠告した筈だ、愚か者が……!」
ユフリーの凶刃から逃れ、逆に彼女を倒す事に成功したニールはドアの外を耳と気配で確認する。
(まだどうやら敵が沢山居る様だ。ここの出入り口はもう使えないな。かと言って出入り口はここ1つだけ……)
となれば利用出来そうな所はあそこしか無いか、とニールは今しがたユフリーを殺害する為に使った
エレベーターシャフトの方に目を向けた。
地下へと向かってエレベーターシャフトをロープクライミングの要領で下がって行くニール。
カラリパヤットでもロープクライミングをするのだが、普通のロープクライミングと違った逆手でのロープクライミングの
トレーニングをする為に順手の今の状況、しかも下って行く方となれば別にきつくも何とも無い。
(このエレベーターは何処まで続いているんだ?)
一気に降りて手の皮が剥けたりしない様に、少しずつ時間をかけてゆっくりとニールはエレベータのワイヤーに掴まって降りて行く。
そして下にはやはりと言うか、うつ伏せで倒れて血溜まりの中でピクリとも動かなくなっているユフリーの姿が見えた。
そんなユフリーを一瞥(いちべつ)し、ニールはようやく最下層まで降りる事に成功。体感的には大体地下5階分位まで
降りて来た様な気がする。
(……死んでいる)
ユフリーが死んだ振りをしているだけかもしれないと思い、ニールは彼女の首筋に手を当ててしっかり死んでいるかどうかを確認。
それを確認して、ニールはエレベーターシャフトから出て前を向いた。
(何だか秘密基地みたいだな……)
目の前には、今までの中世ヨーロッパの世界観とはうって変わった機械システムの設備や何かの装置、何かの生物の
ホルマリン漬けの様な物まで得体の知れない不気味な物が多数設置されている科学研究所の様な場所があった。
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