A Solitary Battle High Speed Stage第31話


ユフリーとその仲間の騎士団員達から逃げ、ようやく武器貯蔵庫へと辿り着いた

ニールは素早く貯蔵庫のドアを閉め……た筈だったのだが、何故かそのドアは閉まる所か

思いっ切り内側に開いた。まるで何かに押された様な感触だった。

「ふぅん、確かに魔術が効かないと言うのは本当の様ね」

感心した様な口調で、槍を構えながらユフリーが仲間の騎士団員達と共に

武器貯蔵庫へと入って来た。だけど槍を向けられているニールの頭の中は混乱している。

「どう言う事だ!」


冷静な口調でユフリーにそう問い掛けたニールに、ユフリーは部下を手で制しながら口を開く。

「私は確かにギルドの受付には関わって無いけど、ギルドその物には十分過ぎる程の関わりがあるわ。

元々は私も冒険者。ギルドに関わりのある酒場の店員になるには、元々ギルドに登録済みの

冒険者かギルドから派遣された職員しかなる事が出来ないのよ」

そこでピンと来たニールは、まさかと思いつつユフリーに尋ねた。

「もしかして、御前も騎士団長と関わりが……」

しかし、ユフリーは首を横に振る。

「いいえ、私が関わりがあるのはギルドトップの男ね。私はあの人の婚約者。そして私も騎士団長から

一緒にエジットとこの依頼を受けたの。……貴方を捕らえる依頼をね!!」


そう言い終わると同時に、ユフリーは首を振って部下に指示を出す。

「くそっ!!」

もうこの女は完全に敵だ。こんな所で立ち止まって居る訳には行かない。

しかし、ユフリーと戦うにはまず彼女の部下から倒さなければ彼女の元に辿り着けそうに無かった。

あの時、路地裏で自分が敗北した原因は上手く敵の真ん中に誘い込まれた形になってしまったからだ。

人間はあいにく目が前にしか無いので前しか見る事が出来ない。気配とかで幾らか敵の攻撃の気配や、

耳で武器を振るう音をキャッチできたとしても、やはり目がもたらすその情報は他のどんな情報よりも膨大で

あり、結果として目に疲労が溜まりやすいのもその情報量の多さを処理しようとするのが原因だからだ。


なので今のこの武器貯蔵庫でのバトルに関して言うと、至る所に積み上げられている武器の詰め込まれている

木箱が上手く壁になってくれているので、ニールは挟み込まれない様にしながらユフリーの手下と戦う事を

念頭に置いているのだった。

近くの木箱の陰に飛び込み、前から向かって来た騎士団員の槍が振られると同時にニールはしゃがんで槍を回避。

そこから馬のポーズの歩幅で思いっきり騎士団員のみぞおちにパンチ。そのパンチで怯んだ騎士団員の胸倉を

掴んで背負い投げ。その背負い投げで吹っ飛んだ騎士団員は、ニールを後ろから挟み撃ちにしようとしていた

別の騎士団員に直撃。

その様子にニールは目もくれず、今度は木箱の陰から飛び出してユフリーに向かって走る。


だが横から別の部下の騎士団員が向かって来たので、その騎士団員のロングソードが振られる前にニールは

左の肘を的確に騎士団員の喉に突っ込んで撃退。そこに足払いをかけて転倒させようとユフリーが槍を下段から

回して来たのでタイミング良くジャンプ。ユフリーは槍を振り切って隙だらけなのでその腹目掛けて前蹴りを食らわせる。

「ぐえっ!」

ユフリーが倒れたのを視界の端で見届けながら、これ以上の増援が来ない様に素早く入り口のドアを閉めて

ドアのそばのかんぬきで施錠。だがここでニールにとある疑問が浮かぶ。

(そう言えば、さっきは俺がここのドアを閉めようとしたのに逆に押し戻された様な……?)

何故そうなったのかさっぱり分からなかったのだが、今はまだ武器貯蔵庫の中に騎士団員達が居るのでドアを

閉め切った事を確認して、再びニールは自分に向かって来た騎士団員達に対抗して行った。


A Solitary Battle High Speed Stage第32話へ

HPGサイドへ戻る