A Solitary Battle High Speed Stage第30話


その後は色々と施設内を回ってみたが、特にめぼしい場所が無かった。

それにこの施設内は無人の様で、人の気配が無かったのも納得出来た。

しかしニールにはまだ見回っていない所もあった。それが……。

(残るは地下か……)

でも施設内の隅から隅まで探し回っても、結局地下へと繋がる入り口だとか

階段らしき物を見つける事は出来なかった。となれば何処から進入すれば良いのだろうか?

(だったらしょうが無い、あのエレベーターのシャフトから降りる事にするか)

あの武器庫で見つけた荷物運搬用のエレベーターシャフトであれば、地下へと続いているのが

実際に自分の目で確認出来ているので入り口が見当たらない以上はそこから行くしか無いだろう、と

ニールは歩き出す。だけどそんなニールに、この後信じられない展開が待ち構えていた。


「っ!?」

突然、研究施設内の照明が一気にパパパッと点いて行く。これはもしかすると。

(見つかった!?)

どうもそうらしい。自分1人だと思っていたのだが何処かに研究者が居たのか、あるいはまた別の人間が

ここに入って来たのか。願わくば、見つかったのでは無く夜勤の研究者とかであれば隠れてやり過ごす事も

出来そうなのだが現実は非情な物であった。

「隅から隅までくまなく調べるんだ!!」

「御前達はそっちを、俺達はこっちを探す!!」

「ここに居る事だけは確かだ。見つけたら絶対に逃がすなよ!! 魔力の無い人間だから

何処に居るかは分かりにくい。慎重に探せ!」


魔力の無い人間と言えば間違い無く自分の事。複数の怒声が響き渡り、研究施設内にバタバタと

慌ただしい足音が幾つも響き渡る。

(まずいな!!)

これは一刻も早くあの武器貯蔵庫を目指すべきだと思ったニールは、曲がり角を曲がる前に素早く

通路の先の安全を確認して自分が覚えているその場所へと足を進めて行く。

しかし多勢に無勢なのは覆らなかった様だ。

「居たぞー!!」

「ちっ!」

舌打ちをして踵を返し、まずは階段を下りる。そして階段を下りる途中でストップして階段の上へと

身体の向きを変え、襲いかかって来た騎士団員を階段を駆け下りて来るその勢いごと下へと投げ飛ばす。

更に続けて向かって来た騎士団員には普通にしゃがんで攻撃をやり過ごし、そのまま勢い付いて真っ逆さまに

落ちて行って自爆したのを見届けてからニールは先へ進む。


そうして先へと進んだニールは確実に武器貯蔵庫へと近づいて行くのだが、その途中で思いもよらない人物と

再会する事になった。

「……おっ? ユフリー!」

何と、目の前の曲がり角から現れたのは酒場の女店員ユフリーだった。と言っても彼女が現れた方向と

武器貯蔵庫は反対方向になるのだが。

「俺を助けに来てくれたのか?」

自分を手助けしてくれて、異世界の情報を話した唯一の人物である彼女にニールはそう声をかける。


しかしそんな彼女からの返事はニールが自分の耳を疑いたくなる様な言葉だった。

「居たわ!! ここに異世界人が居るわよ!!」

そう叫び声を上げながら、彼女は着込んだ灰色のジャケットの懐から取り出したハンドベルをカランカランと鳴らす。

鳴らしやすくてしかも遠くまで音が響きやすいその道具で、新たに騎士団員達が何人かこちらへと駆けて来る

足音が聞こえて来た。

「な、何をやってるんだユフリー!?」

当然ニールはそのユフリーの行動が理解出来なかったが、どうやらとんでもなくまずい状況になってしまったのと

このユフリーが今は自分の味方……では無い。それ所か、自分の敵である事は間違い無いらしい。

そう考えたニールは、ジャケットの背中に背負った槍を自分に向かって突き出そうとして来たユフリーを思いっ切り

突き飛ばし、武器貯蔵庫へと向かって全力疾走を開始した。


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