A Solitary Battle High Speed Stage第3話


ウルミを最後とした鉄製の武器のトレーニングが全て終了したら、北派のカラリパヤットのトレーニングで

いよいよ最後のトレーニングに入る。それは素手での格闘戦だ。色々な武術があるにせよ、

殆どの武術においてはポーズのトレーニングを最初に行う事は共通していても、素手での格闘戦の

トレーニングは大体の場合ポーズのトレーニングの次に行われる事が一般的である。

しかしながら北派のカラリパヤットの場合においては、まずはポーズのトレーニングで武器のトレーニングに

使う事の出来る身体作りをし、きちんと武器を使える様になってからでなければ素手での格闘術の

トレーニングが出来ない。


その格闘術のトレーニングではパンチやキックの基本的なトレーニングの他に、ジャンプして相手のキックを避ける、

素手で相手のパンチを弾く、掛かって来た相手を関節技で拘束する、ナイフを持って掛かって来た相手への対処等がある。

その他にも「逆手で」ロープを登るトレーニング、頭上に吊り下げられているボールをジャンプキックで蹴る、タオルを

使って相手のナイフを持つ手を取り拘束する等の物があり、素手での戦い方に関しては武器術よりも練習量が多くなりがちだ。

こうして型の練習、木製の武器、鉄製の武器、そして素手の格闘術と4つのステップでのトレーニングを終えて、晴れて北派の

カラリパヤットのトレーニングをマスターする事になる。

しかしその後に最後のステップとしてもう1つ学ばなければいけない事があるのだ。


それはカラリパヤットをマスターした人間達は身体の事を知り尽くす様になっている為、他のカラリパヤットを

学ぶ人間達にマッサージをする事がある。その為に「マルマ」と呼ばれる人体のツボにマッサージを施術するトレーニングをする。

このマッサージは実を言えば、カラリパヤットのトレーニングを始める前に必ず行われるのだ。

身体にオイルを塗ってその後にマッサージをして貰う事で、その後のストレッチと合わせて相乗効果で身体をほぐす事が可能になる。

カラリパヤットの道場にはこのマッサージを行う為の治療院が必ず設置されており、ここでトレーニングの前にオイルマッサージを

して貰わなければトレーニングに入る事が出来ない。もっとも、ニールの場合はオイルマッサージをして貰う事はあっても

簡単な物だったのでそこのマッサージの部分に関しては省略される事も結構あった。


この様にしてカラリパヤットのマスターになる為のトレーニングを積んで行くのが、伝統的な型のトレーニングを重視している

北派のカラリパヤットになる。基本的に北派のカラリパヤットでは半地下に作られている地面が土の道場でトレーニングが行われており、

朝にトレーニングをした後に学校や会社に行く事がインドでは当たり前の光景になっている。

ニールの場合は習い始めたばかりの頃は学校その物が遠い場所にあったのでスクールバスが来る時間も朝早く、なかなか朝に

本格的なトレーニングをする事が出来なかったのでその分帰ってきてからトレーニングをそのインド人の師匠にして貰っていた。

今では役者としての職業柄、朝からの撮影の場合には簡単なストレッチのみで済ませて帰って来てからトレーニングをする事が多い。

ガソリンスタンドが非番の日で、役者としての仕事も入ってない日には朝から夜まで基本的なポーズの練習や武器を振り回したりする

本格的なトレーニングで1日を過ごす事が彼にとって良くある事だ。

反対にガソリンスタンドの仕事のみの日……と言っても本業が売れない役者の為にこれが一番多いのだが、こう言った日にはお客に

怪しまれない様に仕事の合間に大振りのポーズにならない様に注意しつつ伸びのポーズをしたり、手の動きだけで軽くフォームの

確認をしたりと仕事に支障が出ない様にしている。


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