A Solitary Battle High Speed Stage第4話


一方、北派とはまた別のトレーニング形態がある南派のカラリパヤットについてだ。

この南派のカラリパヤットでも基本的にトレーニングする内容その物としては

北派のカラリパヤットと大きな違いは無い。

しかし、大きく違うのは北派がまずポーズの練習から入るポーズを重視した流派である事に

対して、南派のカラリパヤットでは実戦重視、戦いに使う事の出来るトレーニングが多い。

すなわち、この南派のカラリパヤットにおいてはポーズのフォームに関してはそこまで重視されておらず、

いかにして相手を倒すかと言う事が良く考えられている実戦形式のカラリパヤットになっている。


練習する順番に関しては最初のポーズの練習こそ変わらないものの、その次に素手での格闘戦がやって来る。

その素手での格闘術をマスターしてから今度は木製、それから鉄製の武器術と言う様に素手での戦いから

武器のトレーニングへと変化するのが特徴だ。

従って、こっちの南派のカラリパヤットの方が例えばそれこそ空手やカンフー、ムエタイ等と言った型の練習を

通じての素手での格闘術と共通する練習スタイルの為に、他の格闘技を習得した人間が多いのが特徴的だ。

もっとも道場によってこれも微妙に違いがある為に一概には言う事が出来ないのだが。


それから、北派のカラリパヤットと南派のカラリパヤットでは練習する場所も大分違う。

北派のカラリパヤットでは半地下に造られている道場の中、つまり屋内での練習が一般的な空手や柔道と

同じで大部分を占めるのに対して、南派のカラリパヤットでは戦闘する事をイメージして屋外でのトレーニングが多い。

北派では道場の地面が土になっているのだが、南派では草の上でやったりするのでここも違う所と言えよう。

ただ、どっちが優れているとか強いとかそう言う訳では無くて、どちらのカラリパヤットでも極めたマスターは身体の事を

知り尽くしている人間に成長している為に強いと言った方が正しい。練習方法に違いがあるだけで、基本的な

ポーズ等に差ほど大きな違いは無い。やっている事自体に余り変わりは無いので、どちらのカラリパヤットを選ぶかと

言うのは自分自身が選ぶ物だ。自分の身体のバランス感覚を養ったり、しなやかな身体作りを重視したいのであれば

北派のカラリパヤットに行けば良いし、実戦的な格闘術や武器術を優先して学びたいのであれば南派の

カラリパヤットをお勧めする。中間のカラリパヤットはこの2つの流派を混ぜたスタイルであるが、北派のカラリパヤットでは

ヒンドゥー教徒が多いのに対し、南派のカラリパヤットではイスラム教徒やキリスト教徒が多い。

なので中間のカラリパヤットではどっちも学びたいと言う人間が多く存在している。


シヴァの神を崇める北派ワダッカン・カラリパヤット、聖仙アガスティアが始祖とされている南派テッカン・カラリパヤットと

信仰する対象も違う為、どちらも学びたい人にとって中間のカラリパヤットはうってつけだ。

ニールはどちらも学んだタイプであるが、彼自身は無宗教なのでキリスト教もヒンドゥー教もイスラム教も信仰はしていない。

ただ単に師匠のインド人がワダッカンスタイルもテッカンスタイルも習得済みだったので、知っているカラリパヤット全てのテクニックと

オイルマッサージのテクニックを教えて貰ったと言うだけの話だ。

基本的なポーズの練習ではワダッカンスタイルのカラリパヤットを使う事がニールは多い為に、テッカンスタイルのカラリパヤットは

殆ど使う場面が無い。とは言えども護身術としての使い道は十分にあるので、そちらのトレーニングも欠かしていない。

この夜の砂浜で彼は裸足になり、砂を踏みしめて地面の感触を確かめながら基本的な8つのポーズのトレーニングで

身体をほぐす事にしたのであった。


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