A Solitary Battle High Speed Stage第29話


次に気になった部屋は、さっきの手前開きの一般的なドアとは違った

両開きの鉄製のドアだった。

(ここも何だか怪しいな)

再びドアの中に入り、スマートフォンのライトと手探りでスイッチを探そうとする

ニールの手が何かに触れた……その時だった!

「うぐぉ!?」

いきなり手の先から青白い光と大きな音が発生。そしてバチバチと痺れる様な

痛みのある感触が身体中を駆け巡る。

「な、何だ……?」

思わずそう呟き、光が出た場所をスマートフォンのライトで照らしてみるが……そこに

見えたのはファンタジーな作品ではおなじみ、そしてカラリパヤットの鉄製の武器としても

おなじみの槍だった。

(これ、か……?)


一旦息を潜め、気配を極限まで殺してその場にしゃがむ。

(誰かに気づかれて無いだろうな……?)

さっきの光と音は相当な物だったので、もしこの建物の内部に誰か居たら気がつかれている

可能性が大だ。さっきの見張り達にも聞こえているかもしれない。

だけどそんな心配とは裏腹に1分待ってみても、2分待ってみても誰かがここにやって来る

気配は無かった。この研究施設の中には人間の気配がしないのだ。

(まぁ、誰も来ないなら良いか……)

自分がここに居ると言う事がばれていなければそれで良い。さっき窓を閉めておいたのが

良かったせいもあるかもしれないが、事を順調に運ぶ事が出来るのであれば途中の過程は

余り気にしていてはいけないのだ。


ほっと胸を撫で下ろしたニールはこの部屋のドアを閉めて、ようやく電気のスイッチを探し出す事に成功した。

電気のスイッチは開けた片側のドアの裏側に隠れてしまって見えなかっただけだった様だ。

(ここは武器庫?でも、何でこんな場所が……)

その部屋の中には武器が乱雑に詰め込まれた木箱が所狭しと積み上げられており、保管されていた。

しかしその木箱の中身に、再びスマートフォンの電源を切ったニールは違和感を覚える。

(って、この武器達はどれもこれも壊れている奴等ばっかりだ。となればここは壊れた武器の

保管場所と言う訳だな)

だったら乱雑に武器がこうして木箱に詰め込まれているのも納得出来た。

だけどさっきの怪奇現象の正体をどうしても知りたいので、ニールは入り口の所に戻って自分が

さっき手を触れたと思わしき槍をもう1度手に取って確かめようとする。


だが。

「うぐぉ!?」

何と、槍をただ握っただけだと言うのに何故か音と光と痛みがニールを襲う。一体何故?

それに他にもロングソードや弓、斧等を持とうとしても駄目だったし、鎧は触っても大丈夫なのだが

身につけようとすると同じ様に弾かれてしまう。これは一体どう言う原理なのだろうか、ニールにはさっぱりだ。

(これ以上やっていたらもう疲れて来るし身が持たん。鼓膜にも悪い。とにかく、俺は武器や防具の類は

この世界では使えないみたいだな)


せっかくカラリパヤットの武器のトレーニングをしたと言うのに、これじゃあ武器のテクニックを生かす事が

出来ないじゃないかとニールは内心で僅かな怒りを覚える。だけどそんな事を言ったって使えない物は

使えないんだから仕方無い訳だし、身につけられない防具なんてただの荷物になるだけだ。

だったら素手の格闘術を活かしてこの先戦うしか無いと言う結論にニールは達した。

そして他にも何か無いかと見回ってみると、何やらエレベーターらしき物を部屋の隅に発見。

と言っても人間用のエレベーターでは無く、武器を地下か何処かへ下ろす為の運搬用のエレベーターの様で

かなり深い場所まで動かす様だ。

(ここに落ちたらひとたまりも無さそうだ。むき出しなのが怖いが近寄らなければ良い。ここはこれ以上の収穫は無さそうだな)


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