A Solitary Battle High Speed Stage第28話
素早く物陰から物陰へ移動し、小窓のある建物の側面を目指す。側面には見張りが居ない。
ちょっと高かったが、ニールは助走を少しつけて壁に足をかけ、その勢いも手伝って窓枠に飛びつき
身軽にその窓を潜り抜けた。カラリパヤットではジャンプのトレーニングもするので、こうした
身軽な動きはしなやかな身体の動きから生まれるのだ。
そのままニールは建物の中に入る事に成功し、窓を閉めて鍵をかけた。中は暗くて明かりが無いと
足元もおぼつかない。
(何か明かりがあれば……あ、そうだ、これがあった)
ごそごそとクリーニングしたてのズボンのポケットからニールが取り出した物は、上手く隠しておいた
スマートフォン。このディスプレイの光をライト代わりにして進んで行く事にした。テクノロジーの進歩と
言う物は恐ろしい。そんなテクノロジーの産物である、一緒にこの世界に来てしまったスマートフォンに
今こそ役に立って貰う時が来たのでニールはそれを最大限に活用して進む事にする。
スマートフォンの明かりを頼りにして先を窺いながら進んで行く。
研究施設の内部は恐ろしい程静かで、人気が無い。見張り所か人の気配も無い。
(おかしい……やけに静かだ。これは何かの罠か?)
慎重に慎重に足を進めるニールだったが、それと同時に調べなければいけないのはこの研究施設で
一体何が行われているのかと言う事であった。今、自分はただのステルスアクションを行っている訳では無い。
ステルス行動をしながらのこの施設の調査だ。
(俺が地球に帰る為のヒントが、ここにあると言う訳なのか……?)
そんなヒントがあるのであれば、せっかくここまで潜入する事に成功したのだからあってもらわなければ
困るとばかりにニールは気合いを入れて進んで行く。
そうして進んで行くニールの前に、1つの気になるドアが現れた。どうやら鍵はかかっていない様だ。
(ここは……?)
恐る恐ると言った感じでそのドアを開け、スマートフォンの明かりを頼りに壁伝いに進もうとした……次の瞬間!!
「っ!?」
何といきなり電気がついた。誰かがこの部屋に居たのか!? と素早く身構えるニールだったが真相は
どうやらそうでは無かったらしい。
(これは……スイッチか)
丸いボタンがドアの横についており、それが電気のスイッチになっていたらしく壁にかかっている古風な
ガラスのランプに明かりがつくシステムらしいのだ。とにかく明かりの仕組みが分かったが、この明かりが
部屋の外に漏れていると誰かに気が付かれないとも限らないので部屋のドアを閉める。
そして部屋の中を探ってみる事にした。部屋の中はどうやら何かの図面が書いてあるテーブル等があり、
某ファンタジー映画等で見た事のある様な模様がその図面に描かれていた。
(何だこれは?俺にはさっぱりだが……映画とかの知識を借りれば多分これは……魔法陣?)
しかし文字は全く読めない。少なくとも英語で無い事は確かだし、インドの文字で無い事も何と無く分かる。
異世界の文字であろうか? とにかくニールにはその図面が何を意味しているのかがさっぱりだ。
(他の部屋に行ってみるか)
これ以上ここに居ても何も収穫が無さそうなので、電気を消して部屋を出る。とにかく電気が点くと
言う事が分かっただけでも大きな収穫だったので、スマートフォンの電源を切っておく事でバッテリー切れの
心配は無くなったらしい。
(本当にここに俺が地球に戻る為のヒントがあるのか……?)
頭の中でそんな事を考え始めると一気にネガティブな感情で不安になってしまうので、とにかく他の部屋も
探索する事にしたのだが、その探索でニールの身にとんでもない事件が起きてしまう!!
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